>   >  業界的にもメディア的にも境界が崩れてきた1年だった~CGWORLD的、2018年のふり返り
業界的にもメディア的にも境界が崩れてきた1年だった~CGWORLD的、2018年のふり返り

業界的にもメディア的にも境界が崩れてきた1年だった~CGWORLD的、2018年のふり返り

<2>TVアニメに光る作品が多かったプリレンダーコンテンツ

小野:これまで、はからずもリアルタイムCGの話題が続きましたが、プリレンダームービーはどうでしたか?

沼倉:まず劇場作品で言えば、『いぬやしき』と『DESTINY 鎌倉ものがたり』などが印象的でしたね。特に『鎌倉~』では妖怪キャラクターのフォトリアルな表現が良くできていました。これまでも世界観やメカではCGが実写映像で使われていましたが、キャラクターの表現でも成立することが示されました。

「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告2

小野:ただ、2018年の映画興行収入ランキングを見ていくと、そこまでCG推しの作品はありませんでしたね。国内では『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』『名探偵コナン ゼロの執行人』『ジュラシック・ワールド/炎の王国』『ボヘミアン・ラプソディ』『映画ドラえもん のび太の宝島』がベスト5です。フルCG映画では『リメンバー・ミー』が7位、『インクレディブル・ファミリー』が8位となっています。他に『銀魂2 掟は破るためにこそある』が13位となりました。

沼倉:確かに、2014年の『STAND BY ME ドラえもん』や、2016年の『君の名は。』『シン・ゴジラ』といったメガヒットはありませんでした。

藤井:一方で2015年に発表され、話題を集めた「Saya」がSXSW 2018の博報堂ブースに出展したりと、様々な展開を進めています。今後はキャラクターAIと結びついて、フォトリアルなインテリジェンスアバターというかたちで発展していくことも考えられます。

Saya project

沼倉:面白い動きですよね。CGWORLDは今後もエンターテインメントを中心に最新トピックを取り上げていきますが、次号ではインダストリー系のVR・AR特集も予定しています。建築や自動車業界では数年前からCGのビジュアライゼーションが行われていますし、エンタメと非エンタメのクロスオーバーはますます進みそうです。

小野:ゲーム業界でもゲーム会社がVTuberのモデリングとリギングを受注したり、運転シミュレーターの背景アセットだけを受注したりといった例がみられますね。一方で、TVアニメについてはどうでしたか?

沼倉:CGWORLDでは従来の手描きアニメ表現をベースとした3DCGを「アニメCG」と呼んでいますが、この数年で一気に一般的になってきましたね。先ほども上がった『モンスト』アニメは好例で、2015年に配信が始まった際は手描きアニメでしたが、2017年にモンスターがCGになり、次いでキャラクターがCGになって、今は全てアニメCGになりました。反響も非常に良く、中でも『ルシファー 反逆の堕天使』編は過去最高の人気だそうです。しかもキャラクターデザインはセル調ですが、陰影がリアルで、エフェクトも物理的なんですよ。

ルシファー -反逆の堕天使- 総集編【アニメ モンスターストライク】

小野:手描きアニメと3DCGという、本来はちがうものを組み合わせてしまう、そのやり方が日本っぽいですね。

小村:現在放映されている『HUGっと!プリキュア』でも、アニメCGならではの演出が際立っていますね。しかも、アニメCGでもデジタル作画がかなり使われているそうです。今やアニメCGは当たり前の表現になっていますし、逆に3DCGでも2DのCGが多用されています。両者の境界がますますぼやけています。

小野:アニメ業界に限れば、働き方改革の影響は大きいのではないでしょうか。「働き方改革はデジタル改革」だとする声も良く聞かれます。そのため、ツールが紙と鉛筆からデジタルに移行する過程で、様々なクリエイティブが生まれている印象です。一方で日本人もすっかりPixarやディズニーのCG作品に慣らされてきました。2014年に『STAND BY ME ドラえもん』がヒットしたときは、"何でもありなんだ"と思わされたものです。

沼倉:うちの子どもたちも『ミニオンズ』が大好きですよ。今の子どもたちは、最初からCGアニメーションに慣れ親しんでいるから、面白ければ何でも素直に受け容れますよね。

小野:他に冒頭でも名前が出た『チコちゃんに叱られる!』が注目を集めました。CGWORLD.jpでも記事公開以来、人気記事ランキングで不動の1位を続けていますね。

沼倉:もっとも、『チコちゃん』は着ぐるみで収録して、後から頭部をマスクしてCGに差し替えるという、かなり力業で実現しているんですよね。コンポジターがちくちくとマスクをしていき、素材を差し替えてプリレンダームービーにするという......。とはいえ、圧倒的なインパクトがある。アイデアの勝利です。

小野:他に『人類誕生』もありましたし、今年はTVコンテンツが元気だったように感じました。

藤井:『人類誕生』でいえば、制作を担当したLuminous ProductionsがYouTubeの視聴回数についてリリースを出していたのが印象的でした。ニコニコ動画、YouTuber、VTuber、ゲームの実況動画といった、インターネット発のコンテンツの勢いを裏付けている感じです。

沼倉:制作現場的には受託制作が中心なので、クライアントからの希望にいかに対応していくか、柔軟性がますます問われそうですね。

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<3>満を持して登場した注目ツール群は業界を変えるか?

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