>   >  「BlenderでCGをはじめよう!ゼロから学ぶ3DCG教室」の講師に、Blender上達の秘訣を聞いてみた
「BlenderでCGをはじめよう!ゼロから学ぶ3DCG教室」の講師に、Blender上達の秘訣を聞いてみた

「BlenderでCGをはじめよう!ゼロから学ぶ3DCG教室」の講師に、Blender上達の秘訣を聞いてみた

手段は解説しますが、何を表現するかはユーザーに任せたい

C:實方さんは、Blender以外にも、ZBrush、Marvelous Designer、Substance Designerなど、複数の3DCGソフトを使っていますね。ほかの3DCGソフトと比較した場合、Blenderにはどんな特徴があると思いますか?

實方:スカルプトをするならZBrush、キャラクターの服をつくるならMarvelous Designerが最適ですが、これらは特化型ソフトなので、絵づくりの全工程をまかなうことはできません。一方でBlenderのような統合型ソフトは全工程に対応できますから、初心者には心強いし、データ管理の敷居も低いです。

  • 加えて、コマンドラインから制御できる点が僕にはすごく魅力的です。例えば、コマンドラインに表示されたモデルとベクターディスプレイスメントマップの配列の演算結果を頭の中でイメージできるようになると、すごく楽しいし、効率的です。


C:............それは、パパにはちょーっと遠い領域ですね。

實方:そうですね(笑)。ご安心ください。今回のチュートリアルではインターフェイスを使った操作しかやりません。Blenderはインターフェイスを触るだけでも十分楽しめますが、インターフェイスの奥には、美味しい水を蓄えた深い井戸がある、みたいな感じに捉えていただければと思っています。

C:インターフェイスだけではもの足りないユーザーは、コマンドラインもご堪能くださいというわけですね。3DCGで何を表現したいかは、ユーザーによって千差万別だとも思いますが、チュートリアルでは何をつくっていきますか?

實方:なるべく限定しないようにするつもりです。例えばスカルプト機能という手段は解説しますが、その手段でもって「おサル」をつくるのか、「クマさん」をつくるのか等々は、ユーザーにお任せしたいと思っています。モチーフを扱うケースもありますが、様々なモチーフを網羅的に扱い、実践を通して柔軟な対応力を養うことを目指します。機能自体は、モデリング、マテリアルやテクスチャ、リギング、モディファイア、クロスシミュレーション、ライティング、カメラ、レンダリングくらいまでは解説する予定です。アニメーションは、基本的な機能は解説しますが、本格的な制作には踏み込みません。僕はアニメーターではないので、詳細はその道の専門家から学んでいただければと思います。

初心者はぜひ実践してほしい、Blender上達の秘訣

C:では最後に、「Blender上達の秘訣」と題して、初心者に有効な勉強方法を教えていただけますか?

實方:Blenderは、メニューの上でマウスカーソルを静止させると、そのメニューに関するTIPSが表示されます。そのTIPSを読んで、メニューの機能を理解することがすごく重要です。多くの場合、読めばわかるようになっています。これが1つめのポイントですね。

▲Blenderのメニューの上でマウスカーソルを静止させると、そのメニューに関するTIPSが表示される


C:「多くの場合」ということは、そうじゃない場合もあるんですね。

實方:残念ながら、そういうことです。たまに「どうやったってわからないでしょ?!」と言いたくなる機能もあります。代表的なのは、テクスチャをベイクするときの、テクスチャの指定方法です。編集モードにした上で、モデルの頂点を全て選択し、画像エディタでベイク先の画像を表示するという手順を踏む必要がありますが、どこにもそんなTIPSは書かれていません(※)。ほかにも、パネルの上にマウスカーソルを乗せた状態でF5キーを押すと、パネルの位置を右から左に移動させられるとかね。そういう隠れた機能を偶然発見して、心底脱力するということが定期的にあります。

※ インタビュー時の最新版(Blender2.79)での操作。

C:世界中の様々な人によって開発されてきた、オープンソースのソフトウェアならではのお話ですね(苦笑)。

實方:そうなんですよね。その反面、同じような思いをしてきたユーザーがたくさんいることは、Blenderを学ぶときのメリットにもなります。Blenderユーザーには「教えたがり」の人が多いので、♯blender のタグをつけてTwitterで質問すると、たいてい誰かが教えてくれます。これが2つめのポイントですね。

C:頼もしい。プロフィールに「Blender初心者。勉強中」と書いておくと、さらに有効かもしれませんね。

實方:いいと思います。さらに3つめのポイントは、Pythonを勉強して、コマンドラインを俯瞰して、Blenderの全体像を把握することでしょうか......。

C:いや、それはハードル上げすぎです(笑)。

實方:Pythonは冗談だとしても(笑)、操作の意味を理解して、全体像の把握に努めるという姿勢は大切だと思います。例えば「おサル」をつくるときは、最初にこのボタンを押して、次にこのポリゴンを移動させる、というように操作の手順だけを記憶してしまうと、「おサル」しかつくれなくなってしまいます。「おサル」を量産することが目的ならいいんですけどね。それでも、僕だったらワンボタンで「おサル」をつくれるコードをPythonで書きたくなりますね(笑)。

C:Pythonはともかく、操作の意味を理解しておけば、ほかのモデルをつくる応用力が培われるでしょうね。チュートリアルでも、その姿勢は重視しているのでしょうか?

實方:とても重視しています。本チュートリアルの目的は、操作の手順を記憶することではなく、操作の意味を理解してもらうことだと言っても過言ではありません。Blenderとは何なのか、3DCGとは何なのか、そういったトータルな概念を理解できるチュートリアルをお届けすることが、僕の抱負です。

C:今後のチュートリアル「BlenderでCGをはじめよう!ゼロから学ぶ3DCG教室」の展開と、それに対するユーザーの反響を楽しみにしています。お話いただき、ありがとうございました。

Profileプロフィール

實方佑介/Yusuke Sanekata

實方佑介/Yusuke Sanekata

株式会社ブルームスキーム CTO(Chief Technology Officer)。漫画の3Dディレクションに従事した後、現職。プロダクト開発のほぼ全てのパートを担当。フロント:Javascript、React。サーバサイド:Python、Django REST framework。モデリング:Blender、ZBrush、Marvelous Designer、Substance Designer。ツール開発:Python、JavaScript、C#。分野を問わず必要に応じて何でもやります。

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