>   >  「BlenderでCGをはじめよう!ゼロから学ぶ3DCG教室」の講師に、Blender上達の秘訣を聞いてみた
「BlenderでCGをはじめよう!ゼロから学ぶ3DCG教室」の講師に、Blender上達の秘訣を聞いてみた

「BlenderでCGをはじめよう!ゼロから学ぶ3DCG教室」の講師に、Blender上達の秘訣を聞いてみた

CGWORLD ONLINE TUTORIALSにて、2019年10月2日(水)からリリース開始となった「BlenderでCGをはじめよう!ゼロから学ぶ3DCG教室」「イントロダクション」「第一回」は無料配信)。本チュートリアルでは、3DCGの予備知識のない初心者を対象に、Blenderによる3DCGのつくり方を解説していく。そこで講師を務める實方佑介氏に、Blender上達の秘訣を聞いてみた。

TEXT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

3DCGを使うと、10倍くらい効率がアップする

CGWORLD(以下、C):そもそも、實方さんはどういう経緯でチュートリアルをつくるにいたったのでしょうか?

實方佑介氏(以下、實方):身も蓋もない言い方をしてしまうと、西原さん(CGWORLD ONLINE TUTORIALS 担当。2児のパパ)に依頼されたからですね。

C:そりゃそうですよね(笑)。チュートリアルでは、その西原が「生徒役」を担っており、「パパでもできるBlender」というのがコンセプトになっていると聞きました。平たく言うと、3DCG初心者で、しかもソコソコの年齢のオジサン(パパ)でも挫折させないチュートリアルということですよね?

實方:そんな感じです。僕は以前、漫画の背景や小道具をBlenderでつくる仕事をしていました。漫画業界は3DCGに苦手意識をもつ人が多かったので、アセットのモデリングから、レンダリングマネージャの開発まで担える自分のような人間が重宝されていました。部屋や村などの背景や、銃のような硬い小道具は、3DCGの方が細かく調整できるし、使い回しもできるから、10倍くらい効率がアップするんです。多少の学習コストを払ったとしても、十分に学ぶメリットがあると思います。

▲實方氏がBlenderで制作したメカ。漫画での使用を前提に、ノンフォトリアルなレンダリングを行なっている


C今年の8月にインタビューした漫画家の浅野いにおさんも、同じようなことを語っていましたね。

實方:漫画にしろイラストにしろ、2DCGを使った制作はすごく一般化したと思います。そこに3DCGも導入すると、さらにイイコトがあるのだと、多くの人に実感してもらうタイミングが来ているとも感じています。しかもBlenderは無料で、誰にでも開かれているので、3DCGの初心者が手にする道具として最適です。そういう思いもあって、チュートリアルの制作をお引き受けしました。

Blenderなら、コマンドラインからの制御やサーバ上での起動も可能

C:實方さんが現在所属しているブルームスキームでも、Blenderを使っているそうですね。

▲【左】中里裕史氏(ブルームスキーム 代表取締役)/【右】實方佑介氏(ブルームスキーム CTO)


中里裕史氏(以下、中里):当社では服を1着1秒で試着できるKimakuriというSNSサービスを開発中で、ここでの3DCGの描画にBlenderを使っています。

C:「1着1秒で試着」とは、エッジの効いたコンセプトですね。

中里:男女を問わず、世の中の多くの消費者は「自分に似合うファッションがわからない」という悩みを抱えています。そこで、消費者自身の身体と、商品である服の両方を情報化することで、スマホを介して簡単に試着ができるサービスを提供したいと考えたのです。本来の服は物理的な存在なので、試着には時間がかかります。特にウェディングドレスのような特別な商品になると、気付けにかなりの時間を使うし、試着したいと思っても貸し出されている場合もあります。結局、お店に行ってはみたものの、2時間で3着しか試着できなかったというケースもざらにあるのです。でも、お店に行く前に、情報化されたウェディングドレスを自分のアバターに試着させることができれば、よりスムーズで、的確な選択が可能となります。

C:面白い。時間のかかるリアル試着をする前に、1着1秒のバーチャル試着で着まくって、自分に似合うファッションを絞り込むというわけですね。そのシステムを實方さんが開発しており、しかもBlenderを活用していると?

實方:そうです。Blenderはオープンソースのソフトウェアなので、用途を限定することなく、OSに近いレベルで使うことも可能です。コマンドラインからPythonで制御できるし、システムに組み込んでサーバ上で起動させることもできます。そういう柔軟さが、当社のサービスにとてもマッチしています。本サービスは、最初に中里がプロトタイプを開発し、僕は途中から開発に参加しました。当初はモデリングだけという話だったのですが、段階的に担当範囲が増え、今ではフロント、サーバサイド、インフラ、さらにはスキャニング設備の開発まで担当しています。

▲開発中のKimakuriの画面。本サービスは2019年9月末現在も開発中で、年内のリリースを目指している


C:まさにフルスタックエンジニアですね。さらに、モデリングもできてしまう。

實方:いつの間にか、そうなっていました。高校時代にプログラミングでゲームをつくりはじめたことがきっかけで、3DCGに目覚めたんです。プログラムで絵を制御できることが面白いと思いました。でも、プログラミングは無限に時間をとられてしまうので、「ヤバイ」と思い、漫画を描きはじめたんです。よくわからないですよね(笑)。

C:はい。よくわからないルート選択ですね。でも面白い(笑)。

實方:ただ、アナログ原稿はすごく目が疲れるので、だったらデジタルを活用しようと思い、作画をデジタル化しました。さらに3DCGも導入した方が効率的だと思い、Metasequoiaを経て、Blenderを使うようになりました。僕の根幹には常に「何かをつくりたい」という欲求があるので、そのための手段は選ばないし、何にでも手を出します。だから、今やっているような仕事が性に合っているのだと思います。

視界が開けるような体験を、チュートリアルを通して提供したい

C:實方さんのBlender使用暦はどのくらいですか?

實方:8年くらいです。でも、途中で1回挫折しています。最初に覚えたMetasequoiaはモデリングに特化したソフトウェアで、機能もインターフェイスもシンプルでした。その反面、Blenderはいろんなことができるから、インターフェイスが複雑で、混乱してしまったんです。でも、あるときPythonで制御できることを発見し、コマンドラインから操作するうちに理解が進んでいきました。インターフェイスではいろんな場所に散っている設定でも、コマンドラインで見ると1ヶ所にまとまっているんです。おかげで機能の関係性がよくわかり、全体像を把握できるようになりました。

C:挫折からの立ち直りの経緯が、非常に個性的ですね。確かに、どんな分野であろうと、全体像を把握し、情報を体系化できるようになると、一気に理解が深まるし、応用力もつきますよね。自分がどこまで理解できているかも掴めるようになるので、暗中模索の焦燥感が消え、視界が開けてくるようにも思います。

實方:そうなんです。そういう視界が開けるような体験を、チュートリアルを通して提供していきたいと考えています。

C:チュートリアルをきっかけに、3DCGに対する苦手意識を払拭できる人が増えるといいですね。具体的には、どのような構成を予定していますか?

實方:企画の初期段階から、百科事典のように機能を順番に解説する構成は止めようと思っていました。先ほどもお話したように、Blenderには膨大な数の機能があります。それを順番に解説されたら、パパでなくても挫折します。チュートリアルの序盤であっても、モデリングからレンダリングまでの絵づくりを一通り体験でき、達成感を味わえるような構成を予定しています。

「BlenderでCGをはじめよう!ゼロから学ぶ3DCG教室」「イントロダクション」のひとこま。モデリング、マテリアルやテクスチャの設定、ライティング、カメラの設定、レンダリングまでの、絵づくりのながれを解説している。こちらは無料配信。ぜひご覧いただきたい


C:モデリングからレンダリングまでのサイクルを繰り返しながら、段階的に使う機能を増やすことで、理解を深めていける構成ということでしょうか?

實方:そうです。例えば第1回では、Blenderのスカルプト機能を使ってモデリングして、ライトとカメラを設定して、レンダリングをする絵づくりを体験していただきます。最も一般的な手法はポリゴンを使ったモデリングですが、ポリゴンの面を組み合わせて形をつくるという手法は、かなり抽象的で、初心者には理解しづらいと思うのです。初心者のうちは3D空間や座標系に対する理解もままなりませんし、ポリゴンには表と裏があると言われてもピンときません。ましてや「使っていいのは三角ポリゴンと四角ポリゴンだけで、多角ポリゴンはNGです」なんて言われたら、パパでなくても......(笑)。

C:3DCGをつくる上で、そういった基礎知識は必須ではあるものの、確かに初心者にはハードルが高いですね(笑)。

實方:はい。だから、より直感的な造形ができるスカルプトからはじめてもらい、その次の段階で、座標系やポリゴンの法線などの基礎知識を解説し、ポリゴンモデリングにも挑戦していただきます。

次ページ:
初心者はぜひ実践してほしい、Blender上達の秘訣

Profileプロフィール

實方佑介/Yusuke Sanekata

實方佑介/Yusuke Sanekata

株式会社ブルームスキーム CTO(Chief Technology Officer)。漫画の3Dディレクションに従事した後、現職。プロダクト開発のほぼ全てのパートを担当。フロント:Javascript、React。サーバサイド:Python、Django REST framework。モデリング:Blender、ZBrush、Marvelous Designer、Substance Designer。ツール開発:Python、JavaScript、C#。分野を問わず必要に応じて何でもやります。

スペシャルインタビュー