<5>リミテッドアニメーションの長所を3DCGに融合させる工夫
CGW:監督として、本作におけるチャレンジは何でしたか?
中井:この作品ではリミテッドのアニメーションをしているのですが、自分としてはあまりしたことがなかった表現手法でしたので、そこがチャレンジでした。コストを抑えるために自動で1コマ抜くというようなことは、MARZAとしてはやっていましたが、今回は逆にコストをかけてコマ抜きをすることで格好良くみせるという手法なんです。そうすることで、フルコマにはない映像の面白さが出たと思います。
CGW:3Dでありつつ、日本のアニメらしい感じが出る映像に。
中井:そう。それもラインを出して単純に作画を再現したようなCGアニメではなく作画とCGの良さを両立させた画面。自分自身で見たいような画づくりができたと思うし、昔からアニメが好きな人にも好んで見ていただけるスタイルに仕上げられた自信があります。
ハヤシ:ルックでも動きでも、作画アニメを模倣しているわけではないし、3DCGの良さも出ている。いわゆるピクサーのアニメーションの方法とも異なるかたちで。
中井:日本のアニメをどう3Dに落とし込むかを考えたときに、この新しいスタイルができたという感じですね。
加藤:ピクサーのような作品に同じような表現で対抗するのではなく、日本のアニメーションがもっているリミテッド表現などの要素を組み合わせて、新しい表現にすることで、海外の人たちにも新鮮さをもって届けられるのではという考えです。
中井:演出でもセルアニメ(2Dアニメ)っぽい表現を使ってるんです。パンチのときの過剰な演出とか、集中線を多用するところとか、これは日本人としてやらなくちゃいけない演出でしょうと(笑)。
加藤:リミテッドアニメーションの良さって、適切な情報量のコントロールにもあると思うんです。今回のキャラクターのルックもフラットめで、そこまで情報量が多くない。アニメーションでもコマを抜くことでメリハリがついて、観てほしい画に集中させることができる。今回の手法として3DCGでありながらリミテッドアニメーションだったのは、とても適切だったと思います。
CGW:日本のアニメらしいエフェクトがこの映像に溶け込んでいるのがまた良かったです。
中井:会社の人に見せたときもエフェクトについての話が第一声に出るんですよ(笑)。それくらい魅力があるものだと思います。2DエフェクトアーティストのRapparuさんは以前から注目していた方で、いつかお願いしたいなと思っていました。
ハヤシ:Rapparuさんはレイアウトで示したイメージを大幅に超えてくるのがスゴいですよね。CGアニメと作画エフェクトの融合はとても見ごたえあるものになりました。
中井:これもひとつチャレンジだったんですよ。HoudiniもあるしUnityもあるし、手描きもあるしで上手く馴染ませることができるかなと心配でしたが、最終的に上手くいきました。
CGW:そしてエンディングには新しいキャラクターたちも登場していました。今後の展望について教えてください。
加藤:あれは予告、というより、本編で描ききれなかったXPICEの世界の構想があふれ出てしまったという認識をしていただければと(笑)。もちろん今回の作品を大勢の方が観ていただければ、次の展開へも検討できます。僕らとしては、エンディングに出てくるキャラクターたちを主人公にしたまた別の物語をつくったりして、今後も何かしらの展開をして『XPICE』の世界を広げていきたい考えです。今回この3社+SCANDALさんと一緒にやらせてもらってすごく良いコラボレーションができたと思っています。作品テーマである「理解して共に戦う」を、まさにプロジェクト全体で体現できたと思っていて、それを今後も継続していきたい考えですので、みなさんに応援していただければと思います。ちなみに、劇中でワサビが緊急招集されるときのスマホケースなどのグッズも制作しました。こちらも気に入っていただけると嬉しいです。