3DCG ワークフロー
アニメや実写作品に加え、ビデオゲームや遊技機向けの CG アニメーションも手掛けているグラフィニカの 3DCG チーム。現在、約30名のデジタル・アーティストと、5名の管理スタッフ(マネージャー、制作管理)で組織されているそうだ。「デジタル・アーティストについては、Maya チーム、3ds Max チーム、そしてモデリングチームの3チームに分かれて活動しています。厳格な分業制は敷いておらず、○○アニメ班、△△ゲーム班といった感じで各スタッフのスケジュールを見ながらアサインしています」と語るのは、CG プロデューサーの牧 達也氏。Maya 、3ds Max という2種類の制作体制を構築しているのは、CG・VFX 制作に特化したスタジオとして、様々な発注元からバラエティに富んだオーダーを受けるため。また、VFX 制作に比べ、3DCG 制作の場合は外部パートナーの協力を得ることが多いのに加え、制作データも複雑化しがちなため、プロジェクトごとに実作業を行うアーティストとは別途、管理スタッフを立てているいるとのこと。
photo by Mitsuru Hirota
3DCG 班 の作業用デスクの一例。VFX 班と同じく、スタッフの好みに合わせて機材やレイアウトは自由にカスタマイズしているとのこと。なお、外部スタッフ用の席はパーティションで区切って個別に設けてある
3DCG 班のワークフローは、アニメ作品向けのCG制作が多いこともあり、一般的なアニメーション制作の手順に則って進めているという。上に述べた通り、Maya、3ds Max、モデリングという3つに分かれているのが特徴と言えるが、モデリングチームが作成したモデルを使用して、各チームのアニメーターが簡単なリグを設定しながら、アニマティクスなどのアニメーションを作成した後、モデリングチームがアニメータの設定したリグを基本としながら、さらに細かいリグを作成していく、といった具合に極力データ待ちで作業が止まることがないよう、同時並行で制作が行えるように心がけているという(下図)。
3DCG 班の一般的なワークフローをまとめたもの。できるだけ同時並行で効率的に制作が行うように心がけているとのこと。ゲーム案件等ではモーションデータのみでレンダリングは不要という場合もある
発注元の制作環境に幅広く対応しているため、Maya と 3ds Max の両チームともアニメーションスタッフは、レイアウトからアニメーション、ライティング、カメラワーク、レンダリングまでを担当し、アニメーターというよりは、ジェネラリスト的に活動している。そのため、一方のチームで何らかの遅延が発生した場合も、一部の作業を別チームが担当することで短納期の案件でも効率的に作業が行えているとのこと。グラフィニカの強みは、アニメ特有のノウハウを蓄積していることだと語る牧氏。「 板野一郎監督 にもアドバイザーとして社内に席を置いて頂いているんですよ。時間を見つけては、CG アニメーターへの指導や、若手スタッフを対象にしたセミナーなども開いて頂いているのですが、とても良い刺激となっています。アニメの場合、依然としてセルを活かした CG 制作が主流ですが、我々としては、やはりフル CG のアニメーション作品にも積極的に参加していけるよう、体制を整えていきたいですね」。
先述した VFX 班と同じフロアにある、グラフィニカのオフライン編集室(上)と、キュー・テックのオンライン編集室(下)。オフライン編集室は3室(Avid DS Nitris、Avid Media Composer、Apple Final Cut Pro 各1)、オンライン編集室は2室(共に Quantel eQ )備えている