杉並移転を機に、キュー・テックとのシームレスなデータ連携を実現
東京メトロ丸ノ内線・南阿佐ヶ谷駅とJR中央線・荻窪駅の中間ぐらいに位置する8階建てのオフィスビルに入居するグラフィニカ。「元々、キューテックのオフライン編集室( 杉並スタジオ )が近くにあったので、アニメーションに関する全ての機能を一箇所に集約して今までにないアニメーション総合スタジオを作ろう! ということで移転しました。現在はビルの2階に VFX 班とオフライン編集室、5階に CG 班が入居しています」(藤黒氏)。
photo by Mitsuru Hirota
グラフィニカ総合エントランス(ビル2F)。同社は、VFX と 3DCG で2つのフロアに別れているのだが、VFX 班のフロアはキュー・テックのオンライン編集室と共有しているため、ラウンジスペースが広く取られている
同ビル2階には、キュー・テックのオンライン編集室( Quantel eQ )が2部屋あるのだが、同じビル内にオンライン編集室があることで、最終的な納品までワンストップで仕上げることが可能になったという。「もちろん、赤坂にある キュー・テック本社スタジオ ともファイバーチャンネル( 10Gbpsの )で繋がっているので、テレシネや MA、Inferno/Flame 編集室とのデータ受け渡しもスムーズに行えるようになりました。杉並に移転したことで、ようやく1つのグループとして本格的に活動できるようになったと思います」と語るのは、グラフィニカのネットワーク環境と機材管理を担当している江田道啓システムエンジニア。杉並のグラフィニカ社内もギガビット・イーサーネット( 1Gbps )で全て繋がっているので、VFX 班と CG 班でフロアが違っていてもシームレスにデータのやりとりが行えるそうだ。
VFX ワークフロー
ここからは、グラフィニカの中核を成す、VFX 班と CG 班のワークフローについて紹介していく。グラフィニカには、現在(2011年5月25日)総勢86名のスタッフを擁し、VFX スタッフは 37 名在籍している。そのうちの6名は先述した 2D/3D変換業務にも対応できるとのこと。「キュー・テック自体にもデコロコというアニメ専門のデジタル撮影を行うグループ会社がありまして、彼らと合流したことで現在の規模になりました。つまり、旧ゴンゾ、旧デコロコ、2D/3D変換の3チームに大別できるのですが、その他にも制作進行を皮切りに、撮影、オフライン編集、演出からプロデューサーまで幅広い業務経験を持っているユニークなスタッフも在籍しているので、特定のワークフローに統一するのではなく、プロジェクトに応じて臨機応変に対応しています」(藤黒氏)。
photo by Mitsuru Hirota
VFX 班のスタジオ内観。デスクの周りを植栽で囲んだり、椅子の代わりにバランスボールに座って作業をするスタッフがいたりと、自由な社風が伝わってくる
shot by Mitsuru Hirota
VFX班の作業スペースを入口から端まで歩きながら撮影した主観ムービー。動画には収められていないが廊下の反対側には、S3D のプレビューが可能な打ち合わせスペースも用意されている
「グラフィニカ VFX 制作の特徴を挙げるとしたら、やはりポストプロダクションのキュー・テックとシームレスに連携できることですかね。CG と VFX の連携だけでなく、VFX と編集、さらにオフライン編集とオンライン編集間でのデータ受け渡しまで、柔軟に対応できるのが強みです。現在アニメの背景スタッフは社内にいませんが、それ以外の業務はひと通りグラフィニカ内で対応できるので、アニメーション制作工程全体の一部を請け負うのではなく、お客様のアイデアを形にするという意味での総合スタジオとして活動しています」と、大鳥居 紀行 VFX 副統括は語る。下図は、グラフィニカの一般的な VFX ワークフローをまとめたもの( CG 制作を含む)。青文字の箇所とオンライン編集(ピンク)以外は、全ての作業を社内で対応できる体制が敷かれていることが判るだろう。
グラフィニカの一般的な VFX ワークフロー図。今春から作画スタッフも社内に加わったため、背景制作を除けばほぼ全ての制作業務を社内で賄える。キュー・テックのポストプロダクション業務ともシームレスに連携できるのもグループならではの強みだ