画にプラス要素を。

画には法則があります。
それは長い年月をかけて、様々な先人たちにより研鑽されてきたものです。CGという分野においても非常に有効な法則で、きっとあなたの知恵と技術になってくれることでしょう。 永く、そして楽しくこの仕事をし続けるために。
そして願わくば貴方の人生に+画を。

今回もWeb連載の強みを活かし、動画チュートリアル『CGWORLD Online Tutorials』と連携してお届けします。



TEXT_早野海兵 / Kaihei Hayano(@Kai_ryu_Kai
EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE



【+画 ONLINE】
vol.010:ライト / 「光の載せ方」に徹する
(CGWORLD Online Tutorials)の詳細・動画はこちら





王道のエフェクト表現を身に付ける

イベントの形態もこの1年あまりで大きく変化し、定着してきましたね。こういった「時代の変化の渦中」にいる感じは、不謹慎ではありますがいくつもの才能、アイデアがひしめき合っており、とてつもなく大きく波が動いているような......過去のやり方はことごとく失策し、新しい施策が芽生え、時代を感じます。

私のデスクトップに表示されるスケジュールの一番上に書いてある言葉、
「考えること、毎日」
考えるだけなら誰にでもできます。ぜひやってみましょう。

なかなか実現しない、実現しても非難ばかり集まるイベントをモチーフに、いつの日か何の心配もなく行える日が来ることを祈って。



<ライトの効果>

「仕上げの法則」の中でも、画を魅力的に、よりパワーアップしてくれる効果の1つがこの「ライトの効果」です。CGというか、合成モノでは王道のエフェクト表現の1つですね。一昔前のSF映画などは、どこにでもこの効果を載せることで「近未来感」を出したりしていました。
主には......

グレア
フレア
ハレーション

などなど。細かく分けるともっとたくさんありますが、このあたりをおおまかに押さえておくと良いです。では、実際の効果を見ながら考えていきましょう。


グレア(Glare)

グレア(glare)とは、不快感や物の見えづらさを生じさせるような「まぶしさ」のことをいう。眩輝(げんき)、眩惑(げんわく)とも。ある光の状態がグレアとなりうるか否かは、周辺の総合的な環境と個々人の生理的状態で決まる。光源とその周辺との明るさのバランスや、直接光・間接光の別、視線の方向と光源のなす角度などにも依存する。また、同じ光環境、同じ位置であっても、観察者の特性によってグレアとして受け取られるか否かは異なる。特に高齢者はグレアを感じ易く、また不快感から回復するのに要する時間も長い傾向にある。

......と、文章ではわかったようなわからないような感じですが、

例えば、雨の日のクルマの中から見る夜景などを思い浮かべると近いかもしれません。グレア効果のないものは、どこか寂しくもの足りない感じがします。カメラに収めたときの、何とも言えないにじんだような見えにくい光の表現。湿気の空気感を強く感じます。

この「にじみ」ともいえる光の表現はライトの効果には必要不可欠なものですが、CGとしては実際のシーン上で計算はできません。何かしらのエフェクトかビデオポスト的な効果を加える必要があります。


レンズフレア(Lens Flare)

レンズフレア(lens flare)は、カメラによって写真・映像を撮影する際に、極めて明るい光源がレンズに向けて当てられている時や、画角内に極めて明るい光源が存在する場合に生じる、暗部への光の漏れである。レンズ内面での再反射によっておこるフレアは、反射面の曲率や形状によりさまざまな形態のものが生じうる。

さて、こちらはかなりお馴染みの光の効果ですね。どの画像ソフトにも必ずと言っても過言ではない確率で搭載されている光の表現ですが、面白いことにあまりバリエーションは多くありません。それゆえに様々な工夫が必要なのです。

やはり「屋外の太陽表現」として使用されることが最も多いでしょう。この「フレア」だけ、画の印象をゴッソリともっていかれますね。場合によっては、レンズフレアだけのカットで印象を表現することもあるほど、映像の世界では日常的に使用されるエフェクト効果です。


ハレーション(Halation)

ハレーション (英: Halation) は、写真を撮影する際に、強い光が当たった部分が白くぼやける現象である。光暈(こううん)ともいう[1]。またハレーションはフィルム特有の現象でデジタルカメラでは発生しない。

フレアの一環としてですが、要素が少し異なるのでバリエーションとして別記載にしました。「雰囲気」という光の効果にとても強い印象を与えてくれる効果ですね。

「光の漏れ」と呼ばれ、主に古いカメラや性能の悪いカメラで発生するもので、性能が良い最新のカメラほど出ない効果です。しかし、これがあるかないかで印象のちがいは大きいので、「光の漏れ」を載せるシーンはよく考えなければなりません。

例えば、このように暗めの雰囲気の画にも......、

ハレーション効果を追加することで、印象深い画に変えることができます。その他、一般的にフレアやボリュームエフェクト系にもとても効果的かと思われます。使う要素が多すぎるくらいです。


スミア(Smear)

スミア (smear) は、CCDイメージセンサを用いたカメラで周囲より極端に明るい被写体を撮影した際に、直線状の白カブリが発生する[1]現象。この現象は特徴的で、垂直、あるいは水平方向に被写体の発光部とほぼ同じ幅の直線状に発生する。その幅の中では画像の端から端まで白っぽい帯となる。CCDの構造に起因するCCDセンサ特有の現象であるため、CMOSイメージセンサを使用したカメラや銀塩写真などでは発生しない。

少し応用すれば、暗がりからの雰囲気のある演出にも使用できますね。ちょっとしたオマケ程度ですが、SF作品などで良く見る効果の1つです。この効果が入っているだけで、強烈なSF効果が出てしまいます。また、視線を誘導する効果が大変強烈なので、画全体の印象をボカす役割も担っています。

さて、安易に載せてしまうことが多い「光の効果」ですが、私は安易に載せてしまって良いと思っています。これほど簡単に画の印象を変える効果はないのですから、安易にたくさん使用してみましょう。



Layout

中心をずらす

今回は画創の法則のレイアウトから、「画角の法則:中心ずらし」をさりげなく使用しています。

円を描くモチーフを構成していますが、あえて真ん中に置かず上にずらしています。これにより、下のスペースに意味をもたせることができます。この「ずらす」というレイアウトのテクニックは、慣れるまではなかなか難しく、ついついモチーフを真ん中にドーンと置いてしまいがちです。

3D上で何度も移動するのは大変なので、こういったレイアウトは2Dで実験してみるのも良いですね。

さらに「円形のオブジェクトを斜め下向きに配置すること」と「天地を使用して地面のスペースを意識させること」で視線を誘導しています。今回は画面の構成密度を最大まで上げたかったので、かなり長玉のカメラを使用しています。そのあたりはチュートリアルの「データ解説」で詳しくお話ししています。



Composite

「画を創る楽しさ」を忘れずに

今回は、終始「光の載せ方」に徹していますが、「ライトの効果で印象がとても変わる」ということを理解していただけると嬉しいです。レンダリング後の画像とエフェクト効果後の画像は、さながら「ライブ前」と「ライブ中」のような差がありますね。

まずはベースの画像をカラコレします。暗いシーンでライトが強く当たったことを意識して、コントラストを高めの設定に。「見えないところは見えなくて良い」という思い切りも必要です。「ベースにはムダ」とは思わず、作り込みを欠かさないことが重要になります。


ライトのテイクアウト

3ds Maxからライトをテイクアウトします。「テイクアウト」という表現は適切ではないかもしれませんが、このご時世ですのでこの単語を使ってみました(笑)。

After Effectsでの作業では、はっきり言って3Dでのライトのコントロールは至難の業です。 この画面を見ているだけでも頭がどうにかなってしまいそうです(笑)。

せっかく便利な3Dソフトがあるのだから、こういう作業はしっかりと3Dソフトで配置をして、それを「テイクアウトしてもってくる」のが良いでしょう。

そして今回用意したのは、こちらの2種類のライト効果の画像です。

・「フレア、グレア用」素材
・「スポットライト用」素材

▲フレア、グレア用素材(左)/スポットライト用素材(右)

これらを3Dソフトで作業するかAfter Effectsで作業するかは、ケースバイケースで判断するしかありません。今回はフレア用はAfter Effectsで、スポット用は3ds Maxで用意しました。


フレアの並べ方

一律で綺麗に並べられる点が、CGの利点であり欠点でもあります。リアル感や現実的な重みなど印象を操作する場合は「ずらす」、「崩す」といったテクニックを使う必要があります。

ここでは光の強さをランダムに変えてみましょう。例えば、ライブ会場では電圧や電球の新旧によって、ひとつひとつの明るさを統一するのは難しいですよね。スポット的なライトだと、見える角度によって同じものもちがうライトに見えたりします。

そういった「微妙なちがい」がCGでは均一になってしまうため、アナログ的にずらしてあげる必要があります。

スポット素材にしても、CGで作成したものは「綺麗すぎる」んですよね。これに現場の「空気感」など遮蔽的な効果を加え、よりリアルなスポット素材を作成して載せてあげる必要があります。

手間は少々かかりますが、作品のクオリティはグッと上がります。費用対効果も高く、価値のあるひと手間ではないでしょうか。実際に3Dでのレンダリングは素材としてどのように料理・加工するか。そういった考え方に基づいてきます。

いかがですか? 「光の効果」が仕上げにどれほどの影響を与えるのか、理解していただけたでしょうか? 前回の「フォグ」もそうですが、光に限らず画に画期的なクオリティを与えるものは数多く存在します。これら技法は長年培われてきたもので、現在のCGソフトの力をもってすれば簡単に追加することができます。こういった「+1歩の効果」の積み重ねがオリジナリティに貢献してくるのでしょう。

現在はソフトの進歩と共に、どのCG作品を見ても同じ人が作ったように見えてしまいます。雇う側からすればとても嬉しいことかもしれませんが、本来の「画を創る楽しさ」をいつまでも忘れずにいてくださいね。



【チュートリアル収録内容】

<画創の法則>
・仕上の法則
・光
・画角の法則
・中心ずらし

<実際の制作過程メイキング>
モデリングからコンポジットまで
使用ソフト:3ds Max、After Effects

長年、セミナーや授業でお話ししてきた生の感覚をぜひご体感いただけたら嬉しいです。

【+画 ONLINE】
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Information

  • 3ds Max『画龍点睛オンライン』講座
    文章だけでは語りつくせない詳細をオンライン形式でお届けします。実践で役に立つ「基本と応用」をCGWORLDの連載『画龍点睛』で制作した作品を通じて解説します。ゼネラリストとしての作品づくりに対する考え方で、さらなるステップアップを。
    tutorials.cgworld.jp



  • 3ds Max『3DCGクリエイター講座』講座(デジタルハリウッド)
    CGに初めて触れる方や新人教育用の教材「CGオペレーション基礎講座」として、基礎固めに効果を発揮しています。3ds Maxの機能をひとつずつ詳細に解説。豊富な作例から楽しく機能を学んでいただけます。
    online.dhw.co.jp/course/3dcg



Profile

  • 早野海兵/Kaihei Hayano

    画龍 / Garyu
    ソニー・ミュージックエンタテインメント、ソニー・コンピュータエンタテインメントを経て創作活動の世界へ。現在、CGWORLD.jpにて「+画」連載中。アートディレクターを務めながら講師や執筆等、幅広くCG業界に貢献している。
    #3dsMAX,#adobe aftereffects,#zbrush,#substancepainter

    <代表作>
    ゲーム『鬼武者』シリーズ
    『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ
    『EXILE LIVE TOUR 2018-2019 "STAR OF WISH"』
    著書『テクスチャイリュージョン』シリーズ
    連載「+画」、「画龍点睛」

    早野海兵公式サイト:kaihei.net
    画龍公式サイト:garyu.mystrikingly.com
    Twitter:@Kai_ryu_Kai