機材選びに困ったら必読。
パソコン工房のVFX実写合成向けPC 2機種を涌井氏がチェック!
ここまで涌井氏には、BlenderによるVFXを使った動画編集の手順を、懇切丁寧に説明してもらった。これでBlenderの基本的な使い方はひと通り把握できたと思うが、その一方で実際の作業にはどんなPC環境が最適なのか。今回は「パソコン工房」で知られるユニットコムの「VFX実写合成向けPC」を提案してもらい、涌井氏にその実力と使い勝手を検証してもらった。
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パソコン工房
ユニットコムが運営するPCショップ。クリエイター向けには「iiyama SENSE∞(イイヤマ センスインフィニティ)」を展開している。2016年12月よりCG・映像制作者向けブランドとして「CG・MOVIE GARAGE」を立ち上げた。今後、CG制作、動画編集をはじめる初心者から、4K液晶対応PC編集のプロユーザーまで、さまざまなラインナップのコラボモデルが登場予定だ。
https://www.pc-koubou.jp/pc/creator.php
作業効率に直結するビューポートの応答速度と
Cyclesのレンダリングスピードをチェック!
パソコン工房スタッフ:今回解説してもらったチュートリアルでは短時間の映像でしたが、実際のミュージックビデオをBlenderで制作する際には、どれくらい時間がかかるものなのでしょうか?
涌井氏:初めてBlenderで制作した『Everything Lost』
は手探りな部分も多くてかなり時間がかかってしまいましたが、最近はいろいろと効率化できるようになってきたので、工夫次第では実写合成MVのフル尺を1~2ヶ月くらいでこなせるようになったんじゃないかと思います。
例えば、撮影時にキーイングのしやすさを考慮して撮ったり、カットごとに分割されたファイルをまとめてバッチレンダリングしたりするなど、技術の向上にともなって作業もこなれてきてた感覚ですね。
パソコン工房スタッフ:今回はBlenderでの実写合成VFXを想定した推奨PCとして、涌井さんが日ごろ使っているWindowsデスクトップPCのスペックをベースに最新パーツへと置き換えた「スタンダードモデル」と、そのスタンダードモデルをさらにグレードアップさせた「アドバンスモデル」の2種類を用意しました。
●エントリーモデルとスタンダードモデルのスペックはこちらから
実際に使ってみた感想はどうだったでしょうか?
涌井氏:現在使っている自分のデスクトップPC(※)は、映像制作用として昨年購入した約21万円のゲーミングPCで、メモリを32GBに強化するなど、それなりのハイスペックなマシンだと思います。しかし、今回の2モデルはどちらも自分のPCよりかなり優秀で、レビューすることを思わず忘れてしまうくらい魅了されてしまいました。
(※)涌井氏が現在使用しているWindowsデスクトップPCのスペック(2020年5月に購入。CPU:インテル Core i7-9700 プロセッサー【8コア / 8スレッド / 3.0GHz /ターボブースト利用時4.7GHz / キャッシュ12MB】/メモリー:32GB/GPU:GeForce RTX 2060 SUPER/2TB HDD)
例えば、フルCGのミュージックビデオをCyclesでレンダリングする場合、自分のPCではそのままのクオリティだと1秒のカットに数時間かかるケースもありました。そのため、現実的にはレンダリングのサンプル数を下げるなど、クオリティを落として対応せざるを得ない状況でした。
しかし、今回のユニットコムの2モデルであればクオリティを落とさなくていいばかりか、1段階あるいは2段階上のレベルで対応できると感じました。機材のスペックが整っていれば、クオリティを諦める必要もなく、さらには新たな可能性も広がるんだなと痛感しました。
パソコン工房スタッフ:スタンダードモデルとアドバンスモデルの差はどれぐらいあると感じましたか?
涌井氏:スタンダードモデルは、自分のPCより2倍近く速い感じで、アドバンスモデルはそのスタンダードモデルよりもさらに2倍近く速いという印象でした。例えば、今回は「Everything Lost」を映像素材として用意し、Cyclesでのレンダリングにかかる時間を検証してみました。
●検証データ3DCGと実写の合成で制作したミュージックビデオ「Everything Lost」を用意
その結果、まずはCPUのみ(タイルサイズは32×32)でレンダリングすると、自分のPCが「25分30秒」、スタンダードモデルが「19分」、アドバンスモデルが「13分40秒」となりました。2倍とは言わないまでも、これでもかなり大きな差と言えます。
さらに、GPUのみとGPU+CPUのレンダリングをCUDAとOptixの両方でチェック(タイルサイズはすべて128×128)したところ、こちらはどれも、ほぼ倍々の性能差でアドバンスモデル>スタンダードモデル>自分のPCという結果になりました。これは、かなりのメリットになるはずです。
パソコン工房スタッフ:この結果で、他に何か気になった点はありましたか。
涌井氏:1つ気になったのは、CUDAとOptixを比較した場合に、ユニットコムの2モデルはまったく差が出なかったことでしょうか。通常、CyclesではCUDAよりもOptixの方が速くなると言われているので、この結果は少々驚きました。
パソコン工房スタッフ:一概には言えませんが、たぶん検証した処理自体が軽過ぎて差が出なかったのかもしれません。最近のGPUは処理性能が非常に向上しており、2000番台と3000番台の性能差は単純に2倍あるため、3060や3080だと「処理が簡単すぎた」のかなと思います。そういった意味では、例えばサイズを4Kにするなど、もっとレンダリングのクオリティを上げれば差が出たかもしれませんね。
涌井氏:次に、Blenderでの使い勝手を確認したところ、とても快適に感じたのは「ビューポートの応答速度」でした。今回のチュートリアルでも紹介したように、自分のワークフローでは、After Effectsは仕上げ程度の活用に留まっていて、主にBlenderのビューポート上で完成形を確認しながら作業するスタイルです。
そのため、ビューポートの応答速度がそのまま作業効率に直結するわけです。
自分のPCの場合、ビューポートのノイズが落ち着いて完成形が表示されるまでには、ボリュームがあるものだと10秒など、結構な時間がかかります。そのため、ボリュームを切って早く表示させるような工夫をしていました。
一方、スタンダードモデルの場合はボリュームがあると一瞬ノイズが強く出ますが、それでも3秒程度待てばほぼ完成形が表示されます。これぐらい早ければ、十分に快適と言えます。さらに、アドバンスモデルであれば、画角を変えても1秒程度で完成形を表示してくれました。ここまで明らかに差があると、もう文句のつけようがありません。
■パソコン工房 VFX実写合成向けPC スタンダードモデル
■パソコン工房 VFX実写合成向けPC アドバンスモデル
パソコン工房スタッフ:初心者にはどちらのモデルがお勧めでしょうか。
涌井氏:コストパフォーマンスも含め、スタンダードモデルをオススメしたいです。自分のPCよりも安い20万円を切る価格で約2倍の性能を得られるのであれば、まったく問題ないと思います。ただ、自分で購入するなら圧倒的にアドバンスモデルですね。ここまでの速さを1度体験してしまったら、もう元には戻れませんから(笑)。
パソコン工房
VFX実写合成向けPC ラインナップ
今回は、涌井氏のWindowsデスクトップPCを参考に、CPUやGPUを同等クラスの最新パーツに置き換えた「スタンダードモデル」と、そのスタンダードモデルの性能や使い勝手を大幅に強化させた「アドバンスモデル」の2種類を用意した。
スタンダードモデルは、8コア/16スレッドのCPU「インテル Core i7-11700 プロセッサー」と最新の3000番台GPU「GeForce GTX 3060」を採用。コストパフォーマンスに優れたミドルハイクラスのパーツを選ぶことで、20万円を切る価格ながら、高い性能とバランスの良さを兼ね備えている点が大きな魅力だ。CG制作においては「Optixやリアルタイムレイトレーシングなどの機能を利用できる」(パソコン工房スタッフ)というのもメリットと言える。
アドバンスモデルは、コア数こそ変わらないがクロック周波数が1GHz以上も高いCPU「インテル Core i7-11700K プロセッサー」に加えて、GPUも最上位クラスの「GeForce GTX 3080」を搭載。GPUレンダリングで圧巻の実力を見せつけてくれるのはもちろん、CPU+GPUのレンダリングでもかなりの差が出たことから、涌井氏は「映像制作に向いている」と好評価だった。
また、アドバンスモデルはワンランク上のPCケースやCPUファンを採用しており、スタンダードモデルよりも「冷却性能が高い」(パソコン工房スタッフ)というのも注目したいポイントの1つ。何時間も連続でレンダリングし続けると発熱でパフォーマンスが低下することもあるため、そのようなケースではより有利といえる。さらに、涌井氏は「自分のPCだとレンダリング中はファンの音がうるさいが、こちらは本当に静かだった」と、静音性の高さにも驚いていた。
スタンダードモデル
SENSE-R059-117-RBX-CMG [CG MOVIE GARAGE]
- 価格
- ¥193,980円~(税込)
- OS
- Windows 10 Home 64ビット
- CPU
- インテル Core i7-11700 プロセッサー(8コア / 16スレッド / 2.5GHz /ターボブースト利用時4.9GHz / キャッシュ16MB / TDP 65W)
- チップセット
- インテル Z590
- メインメモリ
- DDR4-3200 32GB(16GB×2)
- ストレージ
- 500GB NVMe対応 M.2 SSD(PCIe 3.0×4)
- 光学ドライブ
- 非搭載
- GPU
- NVIDIA GeForce RTX 3060 12GB GDDR6
- ケース
- ミドルタワーATXケース IN-WIN EA040
- 電源
- 700W 80PLUS BRONZE認証 ATX電源
アドバンスモデル
SENSE-F059-117K-VAX-CMG [CG MOVIE GARAGE]
- 価格
- ¥316,778(税込)
- OS
- Windows 10 Home 64ビット
- CPU
- インテル Core i7-11700K プロセッサー(8コア / 16スレッド / 3.6GHz /ターボブースト利用時5.0GHz / キャッシュ16MB / TDP 125W)
- チップセット
- インテル Z590
- メインメモリ
- DDR4-3200 32GB(16GB×2)
- ストレージ
- 500GB NVMe対応 M.2 SSD(PCIe 3.0×4)
- 光学ドライブ
- 非搭載
- GPU
- NVIDIA GeForce RTX 3080 10GB GDDR6X
- ケース
- ミドルタワーATXケース MasterCase MC500
- 電源
- 800W 80PLUS TITANIUM認証 ATX電源
※価格および各パーツのスペックは2021年10月時点の情報です。予告なく変更される場合があります。
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