>   >  NEXT FIELD 1:バーチャルファッションモデルimmaは「個の時代」の先駆者なのか?
NEXT FIELD 1:バーチャルファッションモデルimmaは「個の時代」の先駆者なのか?

NEXT FIELD 1:バーチャルファッションモデルimmaは「個の時代」の先駆者なのか?

入社1ヶ月目で、immaの担当に抜擢!?

C:川島さんは講演で、「現在、immaのInstagram投稿は100枚以上あり、そのうちの約80枚の制作を担当してきました」と語っていましたね。先ほど、今年の前半と後半の投稿とでは、immaの髪型が少し変わっていると伺いましたが、メイクも変化しているのでしょうか?

川島:メイクは企画ごとに変えています。私自身はすごくオシャレな人間というわけではないですが、昔からファッション雑誌を見るのが好きで、よく買っていました。Mさんやスタイリストさんの意見を聞きながら、immaの衣装に合うメイクを考えて、表情やポーズを付けていくのはすごく楽しいです。

▲「CGWORLD NEXT FIELD」の講演スライド。immaの髪、眉毛、睫毛(まつげ)は、Autodesk MayaXGen インタラクティブ グルーミングというツールを使い、1本1本生成されている。3DCGを使えばどんな髪型でも表現できてしまうからこそ、不自然にならないよう、リアルに見えるよう、ヘアスタイリストの意見も取り入れながら細かい調整が施されている。上のスライドのように、髪を長くしたり、色を変えたりといった変更にも即座に対応できるのは、バーチャルヒューマンの強みだ。ただし、ここまで変えてしまうと「immaらしさ」が損なわれてしまうので、immaがこの髪型でInstagramに登場する可能性は低そうだ


▲「CGWORLD NEXT FIELD」の講演スライド。左はメイクを施していない状態のimma、右はメイクを施した状態のimma。生身の人間のメイク手順と同様に、ベースのファンデーションを施した後、眉、アイシャドウ、アイライン、チーク、リップなどのメイクをペイントしている。ここでも、メイク専門のスタイリストの意見を取り入れているそうだ。「テクスチャ制作には3DペイントツールのMARIを使っており、鏡を見ながら自分の顔にメイクをしているような感覚で、immaのメイクをペイントできます」(川島氏)


C:immaの制作は、男性モデラーよりも、ファッションやメイクに興味のある女性モデラーの方が相性が良さそうですね。

岸本:そう思います。ただ、immaのようなリアルな人体の制作に興味がある女性モデラーはすごく少ないので、川島は希少な存在でした。加えて、immaは初期段階で「ああでもない」「こうでもない」と相当つくり直してもらったので、そういう依頼に対応してくれる柔軟性があったことも、川島を抜擢した決め手のひとつです。腕が良くても、自分のこだわりや意見を押し通そうとする人だと、ここまで繊細な表現はできなかったと思います。

C:川島さんの入社は2018年の3月だそうですから、入社早々の抜擢だったのでしょうか?

川島:はい。以前は弁護士の秘書など、3DCGとは全然関係のない仕事をしていました。ただ、3DCGには以前から興味があったので、3Dツールを独学で触ってみたら、すごく楽しかったんです。人生は1回しかないから、自分が楽しいと思うことをやろうと思うようになり、デジタルハリウッドの本科(1年制)に入学して本格的にAutodesk Mayaを勉強しました。在学中にリアルな人体を1体つくってみて、面白いなと思ったものの、学生の知識では納得できるレベルまで到達できませんでした。そんなとき、ModelingCafeにデジタルヒューマン制作を専門とするチーム(ModelingCafe.Human)ができたと聞き、入りたいと思ったんです。無事に採用され、入社1ヶ月目に受けもった最初の仕事がimmaの制作でした。

C:川島さんの経歴も、規格外で面白いですね。

▲ModelingCafeの社内風景。写真手前付近が、川島氏を含むModelingCafe.Humanのチームメンバーのデスク。各所に参考資料の人体模型やトルソーが置かれている


immaはこれから、さらに進化する?

C:講演の締めくくりに、川島さんが「immaはこれから、さらに進化していきます」と語っていましたね。最後に、Awwと、ModelingCafe.Humanの今後の展望を伺えますか?

M:受託ベースの、B to Bの映像制作やアプリ制作の仕事を長らくやってみて、そのビジネスモデルに限界を感じてきました。これから個の時代が加速すれば、受託ではない、B to Cのビジネスをしかける環境がさらに整ってくると思います。その中で、Awwはバーチャルヒューマン・エージェンシーとして、様々な事業を展開し、新しいマーケットを創出していきたいです。現在、imma以外にも、2体のバーチャルヒューマンを開発中です。順次公開していくので、ご期待ください。

岸本:ModelingCafe.Humanでは、当初から、AIを搭載したリアルタイムに動くバーチャルヒューマンの制作を目標に、日々研究開発を進めています。現在のimmaは頭部のみを3DCGで表現していますが、全身の3DCGも完成しつつあります。Mさんの高いプロデュース力と、ModelingCafeの3DCGの技術力を組み合わせ、さらに面白い展開をご覧いただけるよう準備しているところです。

C:日本初のバーチャルファッションモデルとして勢いよくデビューしたimmaが、次のステージではどんな展開を見せてくれるのか楽しみにしています。ほかのバーチャルヒューマンのお披露目にも期待したいですね。immaとはちがったイメージになるのか、例えばゴージャスだったり、ロマンティックだったりするのかなど、想像が膨らみます。お話いただき、ありがとうございました。

●関連記事

NEXT FIELD 2:「漫画と3DCGの親和性って、僕は結構高いと思ってるんです」(浅野いにお)
NEXT FIELD 3:愛くるしさ溢れる新生「aibo」〜動きに"物語"と"生命感"を与えるモーションクリエイターたち
NEXT FIELD 4:映画表現で培われたストーリーテリングを採り入れる、新世代の建築ビジュアライゼーションとは? 〜竹中工務店・山口大地の挑戦〜
NEXT FIELD 5:異分野間の連携が革命を起こす〜Mayaを操る脳神経外科医が語る、医療と3DCGの可能性

Profileプロフィール

Aww/ModelingCafe

Aww/ModelingCafe

左から、川島かな恵氏(ModelingCafe/モデラー)、岸本浩一氏(Aww/取締役)
※M氏(Aww/代表取締役)は写真なし

スペシャルインタビュー