>   >  IMAX 3Dに対抗する新たな上映システムが世界中で続々と登場! 今、劇的に変わりつつある映画館
IMAX 3Dに対抗する新たな上映システムが世界中で続々と登場! 今、劇的に変わりつつある映画館

IMAX 3Dに対抗する新たな上映システムが世界中で続々と登場! 今、劇的に変わりつつある映画館

<3>マルチプロジェクション

1950年代に大流行した劇場システムに、3台の35mmプロジェクタを用い、水平画角146°(最前列中心の席が基準)の円弧状スクリーンに上映する「シネラマ」があった。
その高いイマーシブ(Immersive、没入感)効果から全世界に大きな反響をもたらし、各地に常設館が次々と作られた。しかし残念ながらシステムの複雑さやコストが災いし、より簡素なシネマスコープや70mmフィルムにその座を奪われてしまう。だが最近、デジタル映写技術を用いた"21世紀版シネラマ"と呼べるシステムが、相次いで登場している。

3−1.バルコ・エスケープ(Barco Escape)

バルコ社が2014年に発表した劇場システム。3台のDCI準拠のデジタルシネマ・プロジェクタを用い、3面のスクリーンに水平画角270°で投影するというシステムである。
第1作となったのは、20世紀フォックスの『メイズ・ランナー』(2014)で、米国の5館の「シネマーク」(Cinemark)とベルギーの「キネポリス」(Kinepolis)が2館において、劇中の10分間をアスペクト比5.95:1で投影した。

今、劇的に変わりつつある映画館の上映システム

バルコ・エスケープのシアター

この成功を受けて20世紀フォックスは、今後もエスケープに対応した作品を手掛けるという5年契約をバルコと締結した。そして続編の『メイズ・ランナー2: 砂漠の迷宮』(2015)では、対応劇場がメキシコの「Cinépolis Bucareli」を含む20館以上となり、劇中の20分間が3面スクリーンで上映された。

現在は、「Lincoln Square Cinemas」「Cinema West - Village Cinema」「Cinema West - Palladio 16 Cinemas」「Cinemagic Hollywood 12 Theatres」「Roxy Stadium 14」「Century at Pacific Commons and XD」「Camera 12 Cinema」「United Artists Sierra Vista 6」「Cinemark Legacy and XD」、「Santikos Palladium IMAX-San Antonio」(http://www.santikos.com/locations/theatre?house_id=10367)、「Santikos Silverado 16-San Antonio」「Santikos Silverado IMAX-Tomball」「Santikos Palladium AVX-West Houston」「Cinépolis Bucareli」「Kinepolis Antwerpen」「Kinepolis Kortrijk」に導入されている。

今後対応劇場が増えるためには、この方式を採用する作品が継続的に現れる必要がある。そこでバルコは、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズで有名なプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーを、エスケープの諮問委員会に加えた。ブラッカイマーは、自身がプロデュースした旧作映画、ならびに今後制作する新作映画のエスケープ・フォーマットへの対応を約束した。

またバルコは、エスケープの3つの画面に別々の映像を投影する、マルチスクリーン表現を積極的に提唱している。2015年2月にサンノゼで開催された「シネクエスト映画祭」(Cinequest Film Festival)では、ヘロイン中毒の娘とその父親を複数の視点から描いたビジェイ・ラジャン監督の『Withdrawal』や、『Escape to Burning Man』『Lady Gaga and Tony Bennett In Concert』など、エスケープに対応したマルチスクリーン短編が数本上映された。
筆者の私見だが、現在このシステムの話題性や認知度は、他と比べて高いとは言えない。そこで3面全てを3D映写することで、劇場全体に巨大なCAVE的な立体空間が生まれると思われ、それは従来の映画館をはるかに超越するイマーシブ体験をもたらすだろう。実現の可能性は十分考えられる。

3−2.Screen X

CJグループの運営する韓国最大の興行チェーンCJ CGVが、2012年よりKAIST大学と共同開発してきたマルチプロジェクション・システム。3台のDCI準拠のデジタルシネマ・プロジェクタ(クリスティ・デジタル・システムズ製)を用い、3面スクリーンに270°で投影するという構造はバルコ・エスケープと共通する。
対応した第1作は短編の『The X』(2013)で、2015年には3本の長編『차이나타운(Coinlocker Girl)』『Odysseo』『검은 사제들(The Priests)』もつくられている。そして中国の万達集団(Wanda Group)と契約し、中国の超大作ファンタジー『鬼吹灯之尋竜訣(The Ghouls)』(2015)に採用した。
現在46館、79スクリーンが稼働しており、韓国の他にロサンゼルス、ラスベガス、バンコクにある。CJ CGVは2020年までに、世界1000スクリーンへの導入を計画している。

今、劇的に変わりつつある映画館の上映システム

Screen Xのシアター

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<4>画質の改善

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