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IMAX 3Dに対抗する新たな上映システムが世界中で続々と登場! 今、劇的に変わりつつある映画館

IMAX 3Dに対抗する新たな上映システムが世界中で続々と登場! 今、劇的に変わりつつある映画館

はじめに

TEXT_大口孝之 / Takayuki Oguchi

現在、ネット配信やホームシアターの普及により、映画館に行く人が減りつつある。実際、米The Hollywood Reporter誌が2015年3月13日に報じた調査によると、25~39歳の観客層におけるチケットの売り上げ枚数は、2012年には990万枚あったものの、2014年は710万枚まで減少していたということである。わずか2年で30%も減ってしまったのだ。

実はこういった現象は初めてではない。ラジオが登場した1920年代やテレビが急速に普及した1950年代にも起こっている。その結果、映画産業側が対抗措置として、1920年代にはムービーパレスと呼ばれる豪華絢爛な劇場を建設したり、大型フィルムや2色カラーなどを生み出した。1950年代には3D映画や、シネラマ、シネマスコープ、70mmなどのワイドスクリーン、立体音響などを誕生させている。

そして現在においても、もう一度観客を取り戻すべく、世界の映画館がかつてない勢いで変貌を遂げている。そこで試みられている改良点は、音響、画面のサイズと数、映像のダイナミックレンジ、フレームレート、S3D(Stereoscopic 3D/立体視)、4Dなどと、五感全てに渡っている。そして2009年に『アバター』が、一気にデジタルプロジェクタと3D映写システムの普及を推し進めたように、各興行チェーンは昨年12月18日(金)の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』公開に合わせて、最新劇場システムの導入を競っている。今は、かつてない映画館戦国時代なのだ。
前置きが長くなったが、本稿ではそうした状況をふまえ観客側にとって、また製作者やクリエイター側も知っておくべき最新の映画館の上映システムに関する情報を、国内未導入のシステムも含めて紹介していく。

<1>立体音響(サラウンド)

映画館のサラウンド(Surround)とは、ステレオよりも多くのチャンネルを有する音響システムを言う。最初のサラウンドは、1940年のディズニー作品『ファンタジア』において米国8館の劇場で試みられた、「ファンタサウンド」(Fantasound)システムである。これはRCAの協力で開発されたもので、独立した35mmシネテープ(フィルムと同じ幅で、同様のパーフォレーションを持った磁気テープ)に、前方3ch(左・中央・右)とコントロールトラックの4トラックが記録されていた。

1952年に開発されたワイドスクリーン・システム「シネラマ」(Cinerama)の音響は、6ch(前方5ch+サラウンド1ch)で同時録音され、7トラック(音響6ch+コントロールトラック)の35mmシネテープにダビングされた。再生装置は3台のプロジェクタに同期する仕掛けで、専用オペレーターを必要とした。
シネラマに対抗して1956年にソ連で開発された「キノパノラマ」(Kinopanorama)では、9トラックのシネテープが用いられている。全てが音響用で、前方5ch、左壁面1ch、右壁面1ch、後方壁面1ch、天井1chという、現在の目で見ても本格的なサラウンド設計だった。
やはりシネラマに対抗して1953年に開発された「シネマスコープ」(Cinemascope)では、35mmフィルム自体に3chステレオの磁気トラックが設けられ、翌年にはサラウンド用トラックを追加した4chとされた。
同じく対シネラマとして1955年に生まれた「Todd-AO」では、70mmフィルムに6本の磁気トラックを設け、プロジェクタだけで6ch(前方5ch+サラウンド1ch)を実現させた。

1970年代には、家庭用オーディオにおいて4chステレオブームが巻き起こり、各メーカーが独自技術を競っていた。その中の1社であった山水電気の「QSマトリックス」は、1975年に英国のロックオペラ映画『トミー』「クインタフォニック・サウンド」(Quintaphonic Sound)用に応用された。これは、35mmフィルムの光学トラック3本だけを使い、QSデコーダーを通して5ch(前方3ch+後方2ch)に分離するというものだった。
この山水電気のQSマトリックス回路は、米ドルビーラボラトリーズも採用し、1975年に「Dolby Stereo」として発表される。そして映画『リストマニア』(1975)で前方3chのみが使用され、『スター誕生』(1976)ではサラウンド1chが追加された。そして『スター・ウォーズ』(1977)で全世界に普及し、1979年からは独自開発のマトリックス回路を使用するようになった。

1988年には、「IMAXデジタルサウンドシステム」(IMAX Digital Sound System)が登場する。これは、米ソニックス・アソシエイツ(Sonics Associates、1999年にIMAXが買収)によって開発されたもので、70mm 15Pフィルム映写機に連動させて、3台のオーディオCD-ROMプレーヤーから6chのサウンドを再生するものだった。ちなみにソニックス・アソシエイツは、IMAXシアター向けのバイノーラル音響システム「IMAX PSE」(IMAX Personal Sound Environment)も1993年に開発しているが、対応する作品が登場せず活用されなかった。

1990年には、米デジタル・シアター・システムズ(Digital Theater Systems、現DATASAT)社が一般劇場向けに「dts」を発表する。これもオーディオCD-ROMを35mmフィルムに同期させて上映する方式で、前方3ch+サラウンド2ch+サブウーファーの合計5.1chとなり、『ジュラシック・パーク』(1993)で初使用された。

その前年に公開された『バットマン リターンズ』(1992)では、ドルビーのデジタル録音規格である「Dolby SRD」が採用されている。その構成は、前方3ch+サラウンド2ch+サブウーファー(0.1ch)の合計5.1chで、データはパーフォレーションの間に記録された。
1993年の『ラスト・アクション・ヒーロー』では、ソニーとソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントが共同開発したデジタル圧縮録音規格「SDDS」(Sony Dynamic Digital Sound)が採用された。前方5ch(左・中央左・中央・中央右・右)+サラウンド2ch(左・右)+サブウーファーの合計8chの音響データは、フィルムの両端に記録されている。

『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999)からは、Dolby SRDを拡張した「Dolby SRD-EX」が登場する。これによりサラウンドが3chとなり、合計6.1chになった。するとライバルのdtsも、6.1ch化した「dts-ES」を同年に発表し、『ホーンティング』(1999)で初使用された。さらに『トイ・ストーリー3』(2010)においては、デジタルシネマ用の規格「Dolby Surround 7.1」が採用され、サラウンドが左・後左・後右・右の4chとなり、合計7.1chとなった。
このように映画館の音響は、徐々に水平方向のチャンネル数を増やす形で発展してきた。だが最近は、これに高さ方向の音場を加えた新方式の導入が盛んになっている。これによって、音の移動や空間における定位を正確に描写することが可能になった。

1−1.Auro-3D(Auro11.1)

ベルギーのバルコ(Barco)社が2005年に開発し、2011年より劇場に導入されている立体音響システム。従来の水平層にハイト(上層)とオーバーヘッド(天井)を加えた3層のサラウンド音場を、11.1chで表現するもの。このフォーマットを最初に導入した映画は、ルーカスフィルム製作の『Red Tails』(日本未公開, 2012)である。国内の映画館では、「シネマックスつくば」のADMIXシアターや、「安城コロナシネマワールド」などが採用している。

今、劇的に変わりつつある映画館の上映システム

「Auro-3D」

1−2.imm sound

スペインのimm sound社が2010年に開発した。音響を14.1~23.1chに分けて録音し、天井を含む劇場全体に配置されたスピーカーによって、周囲の音まで忠実に再現する。ヨーロッパ、南米、アメリカを中心に採用され、国内では「シネマサンシャイン平和島」のアメイジング・サウンドシアターに導入されている。現在はimm sound社がドルビーに買収されてしまったため、これ以上新しく導入劇場は出てこない。

1−3.ドルビーアトモス(Dolby Atmos)

ドルビーラボラトリーズが2012年に発表したシステム。音響データを、「ベッド」と呼ばれる静的な要素と、位置と時間の情報を持った「オブジェクト」の組み合わせで構成し、特定の空間に音を配置させたり移動させることを可能にした。チャンネルの制限がなく、観客の頭上を音が飛んで行くような表現も可能にしている。

今、劇的に変わりつつある映画館の上映システム

「ドルビーアトモス(Dolby Atmos)」

導入した全世界のスクリーン数は1,200以上で、国内でも「TOHOシネマズららぽーと船橋」「イオンシネマ幕張新都心」「シネマサンシャイン平和島」「TOHOシネマズ六本木ヒルズ」「TOHOシネマズ日本橋」「TOHOシネマズ新宿」「USシネマ木更津」「TOHOシネマズららぽーと富士見」「イオンシネマ名古屋茶屋」「TOHOシネマズくずはモール」「イオンシネマ京都桂川」「アースシネマズ姫路」「イオンシネマ和歌山」「イオンシネマ岡山」「TOHOシネマズアミュプラザおおいた」「シネマサンシャイン下関」において稼働中。2015年12月5日には「TOHOシネマズ梅田」にも導入される。

1−4.IMAXイマーシブ・サウンドシステム

加IMAXコーポレーションが、2014年に発表した次世代サウンドシステム。従来のIMAXシステムでは、フィルムでもデジタルでもソニックス・アソシエイツの6ch方式を採用していたが、新たに開発されたシステムでは、独立した12のチャンネルにサブ・バスを加えた12.1chとなっている。
採用した国内の劇場には、「TOHOシネマズ新宿」「109シネマズ二子玉川」「109シネマズ大阪エキスポシティ」などがあり、「東池袋1丁目新シネマコンプレックスプロジェクト(仮称)」(2017年開業予定)にも導入される予定である。

  • 今、劇的に変わりつつある映画館の上映システム
  • 「東池袋1丁目新シネマコンプレックスプロジェクト(仮称)」の完成予想図


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