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IMAX 3Dに対抗する新たな上映システムが世界中で続々と登場! 今、劇的に変わりつつある映画館

IMAX 3Dに対抗する新たな上映システムが世界中で続々と登場! 今、劇的に変わりつつある映画館

<7>4Dシステム(体感システム)

従来の3D上映システムに、新たな体感的要素を加えたものを一般に4Dシステムと呼ぶ。そのきっかけとなったのは、ダグラス・トランブルが1975年に特許を取得した12人乗りの"シネライド"だった。
トランブルはその実用第1号として、カナダのIEI社と共同で6軸油圧駆動のキャビン型モーションベース「マジックモーションマシン」(Magic Motion Machine)を開発。1985年にトロントCNタワーのアトラクションspan『ツアー・オブ・ザ・ユニバース』(Tour of the Universe)を発表する。
このマジックモーションマシンは、1987年にアナハイムのディズニーランドのアトラクション『スター・ツアーズ』(Star Tours)にも採用されている(※ただし、トランブルはタッチしていない)。

  • 今、劇的に変わりつつある映画館の上映システム
  • 世界初のシミュレーション・ライドである「ツアー・オブ・ザ・ユニバース」の広告


1988年にトランブルは、スイスのインタミン(Intamin)社製の開放型モーションベースにショースキャンを組み合わせた「ダイナミック・モーション・シミュレータ」(Dynamic Motion Simulator)を開発し、世界各地に売り込んだ。続けてトランブルは、OMNIMAX(IMAX DOME)と開放型モーションベース組み合わせた"IMAX Simulator Ride"を設計し、1991年にユニバーサル・スタジオ・フロリダに導入された『バック・トゥ・ザ・フューチャー: ザ・ライド』(Back to the Future: The Ride)を演出した。

その『バック・トゥ・ザ・フューチャー...』の前年の1990年には、世界初の4Dシステムが日本で生まれている。それは東京のサンリオ・ピューロランドと、大分のハーモニーランドに設置されたアトラクション『夢のタイムマシン』だった。米ランドマーク・エンターテインメント(Landmark Entertainment)と三菱重工、サンリオの共同開発によるもので、70mm 5P ツイン・プロジェクタの偏光式3D映像と、ムービングシート、レーザービーム、立体音響、3種類の香りなどの要素を加えている。最初に公開されたコンテンツが『Into the 4th Dimension』という題名のフルCGアニメで、この段階で4Dというコンセプトが出来上がったのがわかる。

今、劇的に変わりつつある映画館の上映システム

モーションベースに70mm 5P 60fpsのショースキャンを組み合わせた「ダイナミック・モーション・シミュレータ」

こういったことがきっかけとなり、80年代後半~90年代に、世界各地のテーマパークや遊園地、大型ゲームセンター、あるいはラスベガスのホテル&カジノなどに、数多くの4Dシステムが設置される。特にSimEx-Iwerks Entertainment(旧IEI社とIwerks社が合併して生まれた会社)は、盛んにライバルのアトラクション映像企業やシミュレーション・ライド企業を買収して成長し、4Dシステムを定着させていく。
しかし次第に飽きられ、かつてほど人々の注目を集めなくなっていたのも事実である。だが最近になり、新たな市場として映画館への導入が進み、第2の流行期を迎えたと言えよう。

7−1.D-BOX

航空、軍事、医療、交通、産業などの分野にモーション・シミュレータを提供している、カナダのD-BOXテクノロジーズ(D-BOX Technologies)が、2001年開発したシステム。座席がシーンに連動して、前後・上下・左右に動いたり、バイブレーションを作り出す。

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  • 「D-BOX」のシート


現在、世界300スクリーンで稼働しており、国内では2010年に「ワーナーマイカルシネマズ大高」(現・イオンシネマ大高)に導入され、その後「イオンシネマ幕張新都心」「イオンシネマ春日部」「イオンシネマ港北ニュータウン」「イオンシネマ和歌山」「イオンシネマ名古屋茶屋」「イオンシネマ京都桂川」「イオンシネマ岡山」にも導入された。

7−2.4DX

韓国CJグループの子会社CJ 4D PLEXが、2009年に開発した4Dシステム。座席が前後・上下・左右に動いたり、風、雨、水飛沫、泡、ストロボ光、煙、香り(追加で雪と嵐)の効果が加えられる。
そして韓国を皮切りに、メキシコ、ロシア、ブラジル、チリ、ペルー、ベネズエラ、ハンガリー、ポーランド、チェコ、日本、米国、香港、イギリス、スイスなどに普及し、2016年前半までに世界33の国と地域の300館以上での採用が決まっている。

今、劇的に変わりつつある映画館の上映システム

「4DX」の広告

日本では2013年に「中川コロナワールド」に採用され、その後「小倉コロナワールド」「福山コロナワールド」「小田原コロナワールド」「豊川コロナワールド」「大垣コロナワールド」「安城コロナワールド」「金沢コロナワールド」「シネマサンシャイン平和島」「シネマサンシャイン沼津」「シネマサンシャインエミフルMASAKI」「ユナイテッド・シネマ豊洲」「ユナイテッド・シネマ札幌」「ユナイテッド・シネマ前橋」「ユナイテッド・シネマ春日部」「ユナイテッド・シネマとしまえん」「ユナイテッド・シネマ新潟」「ユナイテッド・シネマ入間」「ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13」「ユナイテッド・シネマ橿原」「USシネマ木更津」「USシネマ千葉ニュータウン」「シネプレックス水戸」「シネプレックス枚方」「シネマックスつくば」「シネマックスちはら台」「シネマックスパルナ稲敷」「イオンシネマ四條畷」「イオンシネマみなとみらい」などに導入された。
さらに2017年には「東池袋1丁目新シネマコンプレックスプロジェクト(仮称)」にも導入されることが決まっている。

7−3.MediaMation MX4D

米国のメディアメーション(MediaMation)は、1991年に設立され、テーマパーク、ホテル、博物館などの、シミュレーション・ライドや噴水、ショー・コントロール・システムなどを手がけてきた。同社が2005年に開発した、映画館向け4Dシステムが「MX4D」である。座席が前後・上下・左右に動いたり、バイブレーション、風、ミスト、ストロボ、煙、香り、背もたれや首筋、足元の触覚など、11種類の効果が加えられる。

今、劇的に変わりつつある映画館の上映システム

「MX4D」の広告

まず2012年より、メキシコの興行チェーン「シネメックス」(Cinemex)の12館(内1館は2016年)に導入された。続いてコロンビアの「シネ・コロンビア」(Cine Colombia)の5館。中国の「万達影城」(Wanda Cinemas)。オマーンの「シティシネマ」(City Cinemas)、キュラソーの「The Cinemas Curaçao」。中国で5番目に大きい興行チェーン「金逸電影」(Jinyi Cinemas)の「金逸光美」に導入されている。

日本では2015年より「TOHOシネマズ六本木ヒルズ」「TOHOシネマズららぽーと富士見」「TOHOシネマズ新宿」などで稼働している。
さらに『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』公開に合わせ、「TOHOシネマズ岡南」「TOHOシネマズ宇都宮」「TOHOシネマズららぽーと船橋」「TOHOシネマズららぽーと横浜」「TOHOシネマズ川崎」「TOHOシネマズなんば」「TOHOシネマズ西宮OS」が導入を予定している。

7−4.ウィンブルシート

「ユナイテッド・シネマとしまえん」のNo.8スクリーンや、「ユナイテッド・シネマ岸和田」のNo.7スクリーンのほぼ全席に導入。上映作品の衝撃音や効果音に合わせ、シートの背面と座面が振動する。

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  • ウィンブルシート


7−5.5D/6D/7D Cinema

中国の広州滝沢電子科技有限公司(Guangzhou Longze Electronic Technology)が提供。座席が油圧ないし電動で、3軸または6軸で動いたり、風、雨、水飛沫、泡、ストロボ光、煙、香り、雪、炎、背もたれと座面の振動、レッグスイープ(足のくすぐり)といった効果が組み合される。
またHMDと回転する座席を用いた、9D VR egg Cinemaというタイプも新たに加わった。劇場用の他に、テーマパークのアトラクション用や、車載型の移動システムなどもある。

7−6.Dymatic 5D

こちらも中国の広州数祺数字科技有限公司(Guangzhou Shuqee Digital Tech)が提供しているシステム。座席が、空気圧か油圧ないし電動で、3軸または6軸で動いたり、風、雨、水飛沫、泡、ストロボ光、レーザー、煙、香り、雪、炎、背もたれと座面の振動、レッグスイープなどの効果が組み合される。システム構成によって4D、6D、7D、XDなど多数のバリエーションがある。

いかがだろうか? このように、いかに現在の映画館用テクノロジーが激しい開発競争をくり広げているかがおわかりいただけたと思う。ただ、その中核を成している国は、カナダ、アメリカ、ベルギー、韓国などで、日本の存在感が薄いのが残念である。

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