<5>笹原組で修行し、フリーランスの道へ
CGW:最初に就職されたのはアニマさんなんですね。昔、笹原和也さんと一緒にサバイバルゲームをしたことがありますよ。
米岡:正確にはアニマになる前の、笹原組ですね。2002年から3年くらいいたような気がします。ご存じの通り、笹原さんはめちゃくちゃサバゲーが好きでした。当時自分はもっとストイックだったので、笹原さんの仕事が忙しいのにサバゲーに行くスタイルに、ちょっと納得がいっていませんでした。CGアーティストとしての方向性のちがいというか(笑)。
CGW:なぜ笹原組に入ったんですか?
米岡:デジハリを卒業する上で、フロム・ソフトウェアやスクウェア・エニックスなどに就職活動をしましたが、ちょっと敷居が高かったんです。そんな頃、声をかけてくれたのが笹原さんだったんですよ。当時自分はサメがマイブームで、ホオジロザメのCGを作って展覧会に出したら、笹原さんが「こいつは、ちょっと見込みがありそうだぞ」と。それで会社に呼ばれました。当時の笹原組は新人に課題を出していたんです。1ヶ月くらいで課題をこなして、一定以上のクオリティだったら晴れてスタッフになれるというしくみです。
CGW:なるほど。
米岡:自分に与えられた課題は映画『エネミー・ライン』(2001)で、戦闘機のF/A-18が地対空ミサイルに撃墜されるショットをLightWaveで再現するというものでした。戦闘機のモデルは自分が以前作ったものを流用したと思います。その上で背景とエフェクトを作って、10秒くらいのショットにまとめました。今見ても、よくLightWaveでここまでやったな、というクオリティだったと思います。それで、晴れて笹原組の一員になりました。
笹原組の課題として制作したムービー/Enemy Line from Kei Yoneoka on Vimeo.
CGW:良かったですね。
米岡:本当にそうですね。ちょっと話が飛びますが、2015年にステルスワークスを起ち上げて、今年で4期目になります。当初は笹原組の先輩だった河野真也と一緒にやるはずだったんですがすぐには叶わず、それがようやく今年の9月から共同経営者としてジョインしてくれることになりました。河野は笹原組の後、スクエニの第2ビジネス・ディビジョンで、『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』のエフェクトアウトソーシングディレクターを務めた人物です。自分は直感的に動きますが、彼は論理的に動くタイプで、自分にないものをもっています。
CGW:お互いに補完関係にあるんですね。
米岡:ステルスワークスはこれまで自分が前に出てやってきましたから、今後もそういうカラーで進んでいくと思いますが、そこに河野が参謀的な役割で入ることで、今まで自分がほったらかしにしてきた会社のあれこれをやってくれて。自分が相当身軽に動けるようになりました。
CGW:いまステルスワークスさんは何人くらいいらっしゃるんですか?
米岡:コアメンバーは7〜8人で、全員合わせると10人くらいです。ただ、厳密には社員ではなくて、全員が業務委託契約です。今後は正社員を進めていきます。それもあって河野に入ってもらったかたちです。自分はそのあたりは適当で、単純にエフェクトが作れれば良いというタイプですから。
CGW:雇用保険とか、源泉徴収とか、すごく面倒くさいですからね。それも笹原組でのご縁が巡り巡って......ですよね。
米岡:本当にそうですね。笹原組はさっきのゲームセンターの話と同じで、若手の凄腕が集まっていたんですね。河野もそうだし、ILMのエフェクトアーティストとして第一線で活躍されている後輩の藤田竜士や、コロビトの大島夏雄君など、同世代で活躍している人材が、磁石に引き寄せられるように集まってきました。当時の自分は若かったので、最初は何かといえばサバゲーをしていたりした笹原さんに対して、何かちがうものを感じていましたが、今から考えればCGアーティストが楽しめる仕事をしやすい場づくりをしていたんですね。
CGW:それが社風になりますし、それに惹かれたCGアーティストがまた、集まってきたでしょうし。
米岡:そうなんですよね。自分も一介のCGアーティストから経営者になって、そういうこともアリなんだなと思うようになりました。自分はサバゲーのようなでかいイベントをオーガナイズするメンタリティはないので、そのあたりはすごいなと思いますね。
11月30日(金)19時~
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