>   >  海外で働いたからこそ、見えてきた真実がある~ステルスワークス米岡 馨に聞くCGアーティスト人生(後編)
海外で働いたからこそ、見えてきた真実がある~ステルスワークス米岡 馨に聞くCGアーティスト人生(後編)

海外で働いたからこそ、見えてきた真実がある~ステルスワークス米岡 馨に聞くCGアーティスト人生(後編)

業界屈指のエフェクトアーティストとして知られ、11月30日(金)にはCGWORLD +ONE Knowledgeにて昨年開催された大人気講座「StealthWorks 破壊FX講座」の再開催を予定しているステルスワークス代表・米岡 馨氏。3時間超にわたったインタビューの後編は、笹原組入社からフリーランスとして様々なプロダクションを渡り歩き、海外での勤務経験を経て帰国後ステルスワークスを起業、現在にいたるまでの道程を語ってもらった。

INTERVIEW_小野憲史 / Kenji Ono
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

関連記事
山口県で生まれ育った少年がエフェクトスペシャリストになるまで~ステルスワークス米岡 馨に聞くCGアーティスト人生(前編)

StealthWorks FX Reel 2018 from StealthWorks LLC on Vimeo.

11月30日(金)19時~
「StealthWorks 破壊FX講座」
(CGWORLD +ONE Knowledge)
詳細・お申し込みはこちら

<1>ゲームのムービー制作を通してキャリアを積む

CGW:笹原組ではゲームの仕事を良く受注されていましたよね。

米岡:自分も『ドラッグオンドラグーン』(2003)、『ワイルドアームズ アルターコード:F』(2003)、『どろろ』(2004)、『ドラッグオンドラグーン2 封印の紅、背徳の黒』(2005)などのイベントムービーを制作しました。いずれもPS2のゲームで、当時ならではの映像表現でした。

CGW:まさに端境期でしたね。これがPS3になると、インゲームのカットシーンが中心になっていきます。

米岡:ただ、笹原組にいた頃は、自分自身でなかなか納得がいくクオリティが出せなかったんです。当時はスクウェア・エニックス ヴィジュアルワークスが業界でも断トツで高いクオリティを出していて、どう頑張ってもそこに到達しなかったんですよ。

CGW:実際、ヴィジュアルワークスは今でも国内最高峰ですし、当時はもっと差がありましたよね。

米岡:そんなとき、LiNDAの林田宏之さん(故人)と仕事をする機会がありました。林田さんの審美眼はすごくて、どうやったらこんなに高いクオリティが出せるんだろうと、いつも驚かされました。その後、笹原組を離れてフリーランスになって、いろんな会社でお世話になりました。そんな中、『ロストオデッセイ』(2007)のCG制作でお呼びがかかったんです。林田さんが主導でシネマティクスを制作されていて、そこにモデラーとして招集されました。

CGW:『FF』シリーズの坂口博信さんがプロデューサーを務め、『バガボンド』の井上雄彦さんがキャラクターデザインをされたRPGですよね。

米岡:自分にとっては、林田さんと初めて直で仕事をしたことで、思い出深いタイトルになりました。とにかく、緊張感がすごかったんですよ。そこで当時から戦闘機や戦車を作っていたこともあり、4つ足で剣がついている戦車みたいなキャラクターを、モデリングからテクスチャ、質感までまるっと任されました。ちょうど自分なりに制作スタイルが固まりつつあった頃で、外装の汚れについても手で適当に描かずに、実際の写真をリファレンスにして、丁寧に汚しを入れていきました。そうしたら、林田さんに結構気に入ってもらえたようで、クオリティが不足しているモデルがあると、自分にフォローの依頼が来るようになりました。

CGW:ああ、そうだったんですね。それは印象に残りますね。

米岡:そんな風に『ロストオデッセイ』は自分にとって、節目のタイトルになりました。そこからまたしばらくして、『ファイナルファンタジーXIII』(2009)の話がLiNDAとアニマロイドに来ました。そのときはとにかくリアリティを突き詰める、といったテーマだったそうです。そこでも林田さんから「米岡君にやってほしい」と指名が来まして。これはやるしかないなと。そこでもまた自信をもらえました。

CGW:まとめると『ロストオデッセイ』が31歳のとき、『ファイナルファンタジーXIII』が33歳のときですね。20代の悶々とした時期を抜けて、30代でひと皮むけたと言うことですね。

米岡:そうですね。当時はこのままやっててもいいのかなと、すごく悶々としていました。

CGW:笹原組を辞めて転職せずにフリーランスになったのには、何か理由がありましたか?

米岡安定よりも自由にやりたかったんですね。フリーランスには、会社からすれば手が足りないときに来てもらう、どこかお客さんみたいなところがあります。そのため、結果さえ出せば自由にやらせてもらえる良さがあるんですね。これが会社員になると、安定性と引き換えに、会社の社風に縛られます。実際オムニバス・ジャパンで1年間契約社員をやったんですが、会社員に向いていないことが改めてわかりました。

CGW:よくわかります。いろんな会社に常駐することで、それぞれのノウハウもわかるでしょうし。

米岡:そうですね。良くも悪くもいろんな会社のやり方がわかりましたし、ある会社の良いところを別の会社でも採り入れて、フローの改善を行なったこともありました。行く先々で結果を出しつつ、地盤を固めていったんです。それが先々、海外に出るときに役に立ちました。

CGW:どういうことですか?

米岡:自分で言うのもなんですが、どの会社でも貢献度が高かったと思うんです。無茶ぶりにも応えましたし、結果を出すまでちゃんと付き合いました。もちろん、クオリティも出しました。一介のアーティストだけではなく、フリーランスなのに背景ディレクションをやったりなど、少し上のポジションを任されていました。それが功を奏したのか、海外に行くときにスタジオに提出する推薦文の作成を、お世話になったプロデューサーにお願いできたんです。そもそも皆さん忙しいですし、お願いするのも恐れ多いじゃないですか。それに推薦文って英語で書く必要がありますし。

CGW:確かに。

米岡:そんなときでも「あのときお世話になったから」と、皆さん気軽に対応して頂けました。自分も英語でひな形を作っておいて、そこにサインをすれば良いだけにしておくなど、結構図々しいことをやったりしましたね。「エフェクトディレクターとして結果を出しただけでなく、若手の育成にも貢献しました」とか、自画自賛する内容を書いて、「この内容で良ければサインをお願いします」とか(笑)。

CGW:会社にとってみても、フリーランスで中間管理職的な仕事をしてくれて、プロジェクトが終わったらサクッと辞めてくれるみたいな人は重宝しますよね。実際、一度正社員雇用すると、日本では解雇が大変難しいですから、余計に印象が強かったかもしれませんね。

米岡:そうかもしれないですね。

CGW:しかも、どこの会社に行っても、すぐに社内にすっと馴染まれたわけですよね。会社にはそれぞれ、明文化されていないしきたりみたいなものがあります。それを踏まえた上でディレクションをしてくれたら、自然に好感度が高まります。

米岡:今から思うと、笹原組にいたときは内心「自分より上手い人がいるなんて、腹が立つ」とギラギラしていたように思います。そこからフリーランスになって、いろんな組織に溶け込んでいかざるを得なくなったとき、考え方が変わりました。いつまでもバチバチでやっていたら、周囲に馴染めないですし。そのために変なライバル意識を捨てて、上手い人は素直に上手いと認めることにしました。これは会社を経営する上でも重要で、スタッフの成果物をフェアに評価するように心がけています。厳しいだけだとモチベーション保てないですからね。

CGW:昭和的ですね。

米岡:自分も駄目なものは駄目とハッキリ言いますが、良いものは褒めるようにしています。「これ、良いね」「これ、もう答えが出たんじゃないの」「これ、模範解答が出たね」みたいな感じで、多少大げさに褒めるんですよ。実際、そんな風に言われたら悪い気はしないですしね。自分がいた会社には、そうした雰囲気がありましたし、自分もフリーランスで入るときは、そうした雰囲気づくりをするように心がけていました。それが今の組織づくりの根幹になっていますね。

CGW:フリーランス時代に人間力が磨かれたんですね。

米岡:実際、周りと仲良くしなければ、やっていけないですからね。

次ページ:
<2>実写VFXの世界に飛び込み、そこから海外へ

Profileプロフィール

米岡 馨/Kei Yoneoka

米岡 馨/Kei Yoneoka

2002~2011年にかけて、アニマ(旧笹原組)、アニマロイドデジタル・メディア・ラボオムニバス・ジャパンOXYBOTなど、複数の国内プロダクションでCG制作に携わる。2011年、エフェクトアーティストとして、PIXOMONDOのベルリンスタジオへ移籍。2012年、ScanlineVFXのバンクーバースタジオへ移籍。両社で学んだハリウッドクオリティのエフェクト制作を日本で実現するため、帰国を決意。2014年、帰国。2015年、エフェクト専門プロダクションのステルスワークスを設立。 『evangelion : Another Impact(Confidential)』、『シン・ゴジラ』、『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』、『鋼の錬金術師』などの多くの著名タイトルのヒーローショットを担当。2017年中目黒オフィスを起ち上げ事業拡大中
https://twitter.com/keiyoneoka
https://vimeo.com/stealthworks

スペシャルインタビュー