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Story 02:構造力学や強度のはなし

Story 02:構造力学や強度のはなし

TVアニメ、実写映画、ゲームなどを幅広く手がける株式会社コロビト代表・大島夏雄氏によるCG雑学コラム。一見CGには関係なさそうでも知っていればいつか必ず制作に役立つ、身の回りの様々な知識を紹介していく。

TEXT&ILLUSTRATION_大島夏雄 / Natsuo Oshima(コロビト
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)

<1>「重さの感覚」と「単位」

こんにちは、コロビトの大島夏雄です。今回は「構造力学」に関して書いていきますが、難しい計算式は飛ばして、できるだけイメージをわかりやすくお伝えできればと思っております。記事を書くにあたって改めて勉強したのですが、22年ぶりの数学は忘れていることばかり......。

私は美大を受けたので受験に必要な学科は、国語と英語だけでした。浪人時代に塾で学科の勉強を少しでもすると、実技の先生に「学科なんかやるな!芸大に行くなら必要ない!」と言われていたくらいです。すごく怖い先生でした。話がそれてしまいましたが、構造力学に関して書く前に「単位のはなし」を少しだけ。

CGでも大きさ(サイズ)の感覚はすごく大事です。例えば鉄板で乗り物や建造物をつくっているときに「この厚みは何mm?」「入口の高さは何mだろう?」など、人型のモデルを仮に配置して確認し、鉄板や鎧、布の厚みなども意識しながらモデリングを進めていると思います。

これは、何となく意識する、というレベルではなく、具体的であるべきです。プロジェクトが始まる前には、1グリッド=1mや1グリッド=1cmといったようにスケールを決めますよね。

そこでもう少し具体的にモデリングするときのコツとして、重さの感覚も意識すると、作業を進めやすくなると思います。例えば、1m四方の大きさで厚さ10mmの鉄板の重さはだいたい80kgです。結構重いですよね。戦車の装甲に使われているものは、80mmや180mmもの厚みがあります。厚さ80mmだと1㎡で640kg、180mmだと1㎡で1.5t弱! すごい! こうやって重さの感覚も何となくでも知っていると、より良いものを作れるのではないでしょうか。

物理には様々な単位が出てきます。構造力学を勉強していてよく出てくる単位が力を表す「N(ニュートン)」です。ん?「kg重(kgf)」というのは知っているけど、Nって何だっけ? と思った方は32歳以上かもしれません。実は、平成14年以降、中学の理科で教える力の単位がkg重からNに統一されたのです。私は余裕で「kg重」の方です。

「N」は「国際単位系(SI)」と呼ばれる、国際的に正式採用されている単位のひとつです。こちらに詳しく掲載されていますので興味のある方はぜひ見てみてください。

●産業技術総合研究所 計量標準総合センター
https://www.nmij.jp/library/units/si/

「N」もそうですが、学校で習うことはどんどん変わっていきますね。ちなみに鎌倉幕府設立も今は1192年(いいくにつくろう鎌倉幕府)ではなく、1185年と教えているそうです。

それでは、構造力学に関してはいろいろ書きたいことがあるのですが、今回は基本的なことをいくつか紹介したいと思います。

<2>「力の三要素」と「モーメント」

力は「作用点」「方向」「大きさ」の3つの要素で表すことができます。矢印で表現すると便利です。矢印の始点が「作用点」、矢印の向きが「方向」、矢印の長さが「大きさ」となるわけです。

また、物体を回転させようとする力もあります。これを「モーメント」といい、「M」で表します。

上のイラストのような、片側が固定されている5mの梁の先端に10kNの力が加わる場合、根元の反力をそれぞれ求めましょう、という問題があるとします。梁は静止しているので、対となる矢印は同じ力となります。ということは、H=20kNV=10kNと特に意識しなくてもわかりますよね。そこで問題になってくるのがM(モーメント)、根本は固定されているので回転の負荷がかかるのがイメージできますでしょうか?その力がモーメントです。Mは10kN×5m50kNmとなります。梁が長ければ長いほど根元にかかる力は大きくなり、より強固に固定する必要があるというわけですね。

<3>内外からの力による変形

薄い金属板に両側から徐々に力を加えると弓なりに変形します。建築物では上からの荷重に対してや、地震などが発生したときの横からの力でこの「座屈」と呼ばれる変形が発生し、その変形が大きくなると崩壊してしまう恐れがあります。

●横からの力による変形

この構造物に横から力が加わった場合どのように変形するでしょうか? 部材と地面、柱と天井は直角に固定されています。

こんな感じに変形します。固定されている箇所はほぼ直角を保ちます。柱と梁の接合も直角を保ちます。柱部分のそれぞれの場所でかかっているモーメントの向きが変わるので山ができます。どのくらいの力でどのように変形するか計算することができるのですが、すごーく大変ですので興味のある方は勉強してみてください!(私も勉強中です......)

●部材内に生じる力

例えば直方体の部材に1cmピッチにグリッドを描き、それに大きい力を加えたときにグリッドの正方形がどのように変形するかを想像するとわかりやすいです。部材自体が変形しようとする力は3種類に分けられます。

・曲げモーメント
正方形は扇田型に変形しています。

・せん断力
正方形は平行四辺形に変形しています。

・軸方向力
正方形は長方形に変形しています。これは伸びたり縮んだりする変形です。

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<4>曲がりやすい形、曲がりにくい形

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