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近年のスマホゲーム市場の拡大につづき、今年はVRが注目を集めるなど、「リアルタイムCG」技術が使われている分野の成長が目覚ましい。 大きな盛り上がりを見せるリアルタイムCG分野における人材採用事情を紹介するべく、今回はVR、モバイルゲーム、コンシューマ向けハイエンドゲームの3ジャンルに分けて、就・転職に役立つ情報を掲載していく。

第一弾となる今回は、「VR」分野を取り上げる。 雑誌「CGWORLD」216号(2016年7月発売)に掲載されたCGクリエイターを対象としたVR制作に関するアンケートのほか、実際にVR制作を手がけている企業3社に訊いた制作体制や、今後の展望についてのインタビューを紹介しよう。

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VR制作経験のあるクリエイターは2割未満
案件としてはまだまだ少ない

今年2016年は「VR元年」とも呼ばれ、VRは一般にも広く関心を集めたが、、コンテンツ制作に携わるクリエイターたちはどのようにとらえているのだろうか? CGWORLD 216号で実施した読者アンケートの結果から、クリエイターのVRの制作状況を紹介しよう。

※アンケート結果は雑誌CGWORLD 216号に掲載された「CGWORLD白書 2016」より抜粋

  • Q.1(左図)を見るとわかるように、ゲームジャンルに次ぐ16%程度のクリエイターがVRジャンルの案件の増加を感じていたようだ。 ゲームやアニメ、Web・携帯コンテンツと同程度の数字であり、新しいジャンルではあるものの、大きな伸びを見せている。

また、Q.2(左下図)では、82%のクリエイターはVRを制作した経験がないという結果がでた。 仕事として手がけたクリエイターとなると全体の10%程度と、まだまだ案件としては少ないということがわかる。 加えてQ.3(右下図)の、VRの制作経験があると答えたクリエイターが何件のVRの仕事をこなしたか、ということでもアンケートをとったが、 半数以上が「制作件数1件」と答えており、制作経験豊富なクリエイターは現状ではほぼいないようだ。

このようにVRコンテンツの制作数が少ない原因としては、ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)が広く普及していないことが挙げられるのではないだろうか。 ハコスコなどの簡易的なVRサービスを除いてHMDが高価であり、HMDを動作させるためには高性能(高価)なPCも用意せねばならない。 また、HMDを装着した際に周囲が見えなくなってしまうなどの安全面の問題もあり、一般消費者への普及はまだまだ時間がかかりそうだ。 コンシューマ向けのVRコンテンツというのはまだ希少であり、イベントや専用の施設などでアトラクションのひとつとしてVRが提供されていることが多いのも、上記のような理由があるからだろう。

現状ではあまり制作機会のないVRであるが、クリエイターたちは今後の動向をどのように予想しているのだろうか?

  • Q.4(右図)を見ると、半数以上の約58%のクリエイターが今後VR案件が増えるだろうと予想しており、2番手であるゲームの19%を大きく引き離している。 今年こそ少なかったものの、今後は案件数が伸びていくと多くのクリエイターは考えているようだ。

    今後、HMDなどの機材の低価格化などが進み、個人レベルでも安価にVRが楽しめるようになれば自然とVR制作の需要は高まっていくだろう。 大きく様変わりすることを期待しつつ、来年以降のVR業界の動向に注目したい。

では、VRを制作した経験のある企業は、今後のVR業界の動向をどのように予想しているのだろうか? ここからは今年VR制作を手がけた企業3社のインタビューを紹介しよう。 どのようなコンテンツを制作しているのか、またVR制作のためにどのような人材採用をしているのかなど、7つの項目についてお答えいただいた。

[CASE - 1] ゲーム系VR


  • 株式会社プリズムプラス
    http://prismplus.jp/

    リアルタイム3DCGをメインに家庭用ゲーム、モバイルゲームの制作をしている企業。ハイエンド、モバイル問わず、モデリングやアニメーションに定評があるという。

Q1.御社ではどういったVRコンテンツを制作されていらっしゃいますか?
当社では、『VRアクアリウム』というアプリの制作を手がけました。 本作は、「様々な魚が泳ぎまわるアクアリウムの中に、鑑賞者が入る」という体験ができるコンテンツとなっています。 プロトタイプではありますが、本作で、東京ゲームショウ2016にも出展いたしました。

『VRアクアリウム』

Q2.VR開発用に導入しているツールを教えてください。
Unity、Unreal Engineを使用しています。当社では主にゲーム開発を手がけているため、新規導入したソフトウェアはありませんでした。 ただ、ハードウェアの面では、VR開発用機材はゲーム開発用の機材よりも高性能なものを導入しなければなりません。 特に、高いフレームレートで安定して映像を出力するためグラフィックボードは高性能なものが必要です。

Q3.御社が手がけている案件のうち、VR案件はどの程度の割合を占めていますか?
現状ですと、VR関連の案件が占める割合は、10~20%というところです。 まだまだ、技術検証しつつ進めている段階ではありますが、リアルタイム技術がそのまま転用できる点は、ありがたいです。

Q4.VRコンテンツと他の案件を比べた場合の受注単価の高低について教えてください。
VRの案件単価は、ゲーム案件より高いものもあると思います。 ただ現状、VRコンテンツはイベントなどで使用されることも多く、CG制作だけでなく企画から制作後のプロモーションまで求められる場合もあります。 そのように案件全体を一手に引き受けることができるのであれば、金銭的なメリットは大きいのではないでしょうか。

Q5.VRコンテンツの開発規模を教えてください。
当社全体では約30名のスタッフがおりますが、そのうちVR制作を担当しているのは2、3名です。ゲーム事業が主力ですので、あまり多く人数を割いてはいないです。

Q6.VR専属でのスタッフ採用はされていますか?
専属での採用はしていません。VR制作にはリアルタイムの技術が必要となりますが、ゲーム制作を担当するスタッフであれば、そのままVR制作のほうも担当できるためです。

Q7.VRコンテンツの開発にあたり、CGクリエイターに求められるスキルはありますか?
制作手法自体は、ゲーム制作と大きく変わりませんので、特別必要なスキルはないと思います。 ただ、VRでは扱うデータ量がゲーム以上に大きくなる場合が多いので、データ量の削減についてはゲームよりもシビアに考えなければならないこともあります。

[CASE - 2] CM・プロモーション系VR


  • 株式会社BIRDMAN
    http://www.birdman.ne.jp/

    Webやインタラクティブなインスタレーション、サイネージなどの制作、イベントなどの企画を手がける。 今まで誰も見たことが無い/体験したことが無いようなモノをつくり、常に世界を驚かせニュースになるようなチャレンジをしている。

Q1.御社ではどういったVRコンテンツを制作されていらっしゃいますか?
当社はデジタル広告の制作を手がけており、VRは基本的に広告キャンペーンの一環で制作しています。 2015年以降、VRを使ったイベントなどが特に多かったです。

VRコンテンツ『THE EXTREME試飲会』

Q2.VR開発用に導入しているツールを教えてください。
CG制作、映像編集以外のツールとして、UnityとUnreal Engineを使用しています。 Unityは扱いやすい点、VR以外にもWebやスマートフォン向けにコンテンツを展開するなど、マルチフォーマットに対応している点が便利です。 Unreal EngineはCGのクオリティが求められる時に使用するなど、使い分けています。

Q3.御社が手がけている案件のうち、VR案件はどの程度の割合を占めていますか?
仕事の割合として、現在は全体の5%もありませんがVR案件は増えていると感じます。 今年は特にPlayStationVRが発売されVRが一般的にも注目されてきているため、今後は広告制作の企画として通りやすいのではないかと思います。

Q4.VRコンテンツと他の案件を比べた場合の受注単価の高低について教えてください。
他の映像案件と比べた場合、VR案件の制作単価は高いです。 撮影にしてもVRは4K以上のクオリティの解像度で制作が求められますし、そもそも普通のVR撮影をするだけでも周り全てが映り込む、つまり撮影スタッフも映り込んでしまうので、それを消すための処理の工数も増えるためです。 VR案件を手がけることのメリットとしては、まだ未開の地にチャレンジして市場開拓できる場所が残されていることですね。

Q5.VRコンテンツの開発規模を教えてください。
案件によりますが、映像のスタッフだけでなくUnityなどのプログラムも扱うので3名以上は必要になります。

Q6.VR専属でのスタッフ採用はされていますか?
専属での採用はしていません。 もともと、当社では専門に特化したスタッフを抱えていません。 VRにしても映像やCGにしても、なんでもチャレンジしたい、というマルチなスキルを持った人を求めていますね。

Q7.VRコンテンツの開発にあたり、CGクリエイターに求められるスキルはありますか?
現状のVR制作においては、Unityは必須になると思います。 またUnreal Engineも扱えるとより幅広い表現が可能になるので、役立ちます。

[CASE - 3] 建築系VR


  • 株式会社積木製作
    http://tsumikiseisaku.com/

    建築系のCG制作、VRコンテンツ制作の2本柱で事業を拡大中だという。 これまで培ってきた技術を生かしてジャンルにとらわれない作品を制作していく予定とのことで、建築、エンターテインメントコンテンツ、アプリ開発、ゲーム開発等全ての分野で着実に実績をあげている。

Q1.御社ではどういったVRコンテンツを制作されていらっしゃいますか?
建築プレゼンテーション用のVRや、アトラクション用のVRの制作を手がけています。 『VROX』というVRシステムのブランドを起ち上げ、業務の幅を広げています。 今後、開拓の余地が大きいと考えている、企業の教育・訓練用のVR制作に現在は注力しています。

VR技術を活用した施工管理者向け教育システム

Q2.VR開発用に導入しているツールを教えてください。
Unityを導入しています。Unityアセットストアにて、モデルなどが豊富に用意されていて、非常に便利だからです。 Unreal Engineの導入も検討していますが、現状ではUnityのような豊富なアセットがないという壁があります。

Q3.御社が手がけている案件のうち、VR案件はどの程度の割合を占めていますか?
案件全体の、半分程度を占めています。その他は建築パース案件が多いです。 VRは新興分野であり、パース以上に市場的に伸びしろがあると思っていますので、今後も積極的に手がけていくつもりです。

Q4.VRコンテンツと他の案件を比べた場合の受注単価の高低について教えてください。
当社で手がけている案件ですと、パース案件の10倍程度の単価でお受けしています。 ただ、パース案件が1~2週間で納品というものが多いのに対して、VR案件ですと数ヵ月単位で制作期間が必要になるので、金額的なメリットが大きいかというと、必ずしもそういうわけではありません。 VR案件を手がけるメリットとしては、他のパース制作企業との差別化が図れるという点にあります。 先んじて取り組むことで、営業的な観点から見ればプラスに働くことがあるかと思います。

Q5.VRコンテンツの開発規模を教えてください。
現在は、専属スタッフが2名、VR用のモデル制作などの工程でさらに2名が協力して制作しています。 当社のスタッフが12名ですので、制作スタッフの約半数がVR制作に関わっています。

Q6.VR専属でのスタッフ採用はされていますか?
専属での採用をしています。現状では2名ですが、今後の案件数の増加を見込んで5名程度まで増員を考えています。 リアルタイムエンジンを使用できる、またはVR制作に関心のあるクリエイターを採用していくつもりです。

Q7.VRコンテンツの開発にあたり、CGクリエイターに求められるスキルはありますか?
リアルタイムエンジンを習得することが必須になると思います。その他、専門的に手がけるスタッフについては、プログラムの知識も要求されます。

ゲーム、CM・プロモーション、建築と制作ジャンルの異なる3社のインタビューをご覧いただいたが、いずれの企業もVR制作は継続していく、とのことだ。 各社とも、先んじてVR技術を取り入れておくことで、先駆的に取り組む企業としてアピールができ、業界の変化にも素早く対応できるという点を重視しているようだ。

リアルタイム技術を取り入れたことで、業界をまたいだ業務を実現している企業もある。 建築パースを制作してきた積木製作では、今ではゲームコンテンツ制作を手がけている。 ゲーム制作をメインに手がけているプリズムプラスでは、セルルック表現に挑戦中で、今後はアニメ制作も行いたいという。 このように、VR以外にも幅広い利用方法を模索できるという点も、リアルタイム技術の魅力といえる。

また、VRの制作ツールに関してはどの企業でもリアルタイムエンジンのUnity、Unreal Engineの名前が挙がった。 今後VR制作に取り組むのであれば、ほぼ必須で必要になるツールであろう。