2013年7月20日(土)より公開中のオムニバス映画『SHORT PEACE』。アニメーションとしては約9年ぶりの新作となる大友克洋監督作『火要鎮』をはじめ、日本を代表するクリエイターたちが結集しており、CGWORLD 読者であれば要注目作であることはまちがいない。そんな本作の公開を記念して、『九十九』を監督した森田修平氏(YAMATOWORKS)のインタビューをお届けしよう。

九十九メイン

オムニバス映画『SHORT PEACE』
新宿ピカデリー他にて全国で上映中!
©SHORT PEACE COMMITTEE
©KATSUHIRO OTOMO/MASH・ROOM/SHORT PEACE COMMITTEE

世界観フェチから、アニメCGへとたどりついた

CGWORLD(以下、CGW):本日はよろしくお願いします。森田監督は、作画的な3DCG アニメーション表現の第一人者だと思っているのですが、そもそものところで3DCGを使おうと思われたキッカケは何だったのでしょうか?

森田修平(以下、森田):映像制作したいと思ったのは、元々自分が「世界観フェチ」だったからです。その意味では、特にアニメを志していたわけではなく、むしろ実写を志していたんですよ。

CGW:なんと、そうだったんですね!

森田:ですが、美大で学んでいくうちに、宮崎 駿さんや大友克洋さん、森本晃司さんといった、壮大な世界観をアニメーションで表現している素晴らしい映像作家さんが多くいらっしゃることに気づきました。特に『AKIRA』(1988)には大きな影響を受けましたね。語弊を承知で言うと、日本で壮大な世界観をもった映像作品をつくるなら実写よりもアニメの方が有利なんじゃないかなと思ったのです。それと並行して大学2年のときに、パワーマックG3(Power Macintosh G3)が登場して個人でも商業ラインにのせられるクオリティの映像作品がつくれるようになりました。そうしたDTV技術の盛り上がりの中で自然と、デジタルを、そして3DCGを自分の武器として用いるようになっていたんです。

CGW:そして、京都造形芸術大学在学中に神風動画の起ち上げに参加し、さらにSTUDIO4℃にも在籍......といった流れで、アニメ業界に足を踏み入れていかれたわけですね。

森田:当時、僕の周りではハリウッド映画など海外のVFXに憧れてフォトリアル路線の3DCG表現を目指す人が多かったんですよね。僕も洋画は好きで今でもよく観ていますが、日本には大友作品や宮崎作品など海外からも高い評価を得ているアニメ作品が沢山あるので、より身近にあるこっちの路線を目指した方が何かと都合が良いだろうし、ライバルとの差別化にもなると思ったのです。そこで美大卒業のタイミングでSTUDIO4℃に入社しました。ただ、世界観フェチなので履歴書には世界観設定をしたいと志望書に書いたのですが、3DCGができるということでCG班に配属されてしまい、最初はふてくされていました(笑)。

CGW:(笑)。

森田:ですが、STUDIO4℃という組織の下、分業体制の中で3DCGキャラクターアニメーションだけに集中して取り組むことができたことは、今でも自分にとって大きな武器になっていると思うので感謝していますよ。小林 治さん柳沼和良さんといった優れた作画アニメーターさんと一緒に仕事をさせてもらいましたし、なかでも小原秀一さんは大学を卒業したばかりだった僕に、『ダンペトリー教授の憂鬱』(2001)という作品のCGI監督を任せてくださり、アニメーションのイロハを教えてくださいました。当時のSTUDIO4℃では、むしろ作画の方々が3DCGを面白がって積極的に使っていくような雰囲気がありましたね。

森田監督

Syuhei Morita
1978 年生まれ、奈良県出身。合同会社「YAMATOWORKS」代表。アニメーション監督作の代表作としてOVA『KAKURENBO』(2005)OVA『FREEDOM』(2006~2008)OVA『コイ☆セント』(2010)がある。『KAKURENBO』(東京アニメアワード公募作品一般部門で優秀作品賞、カナダ・ファンタジア映画祭ショートフィルム部門金賞)『FREEDOM』(日本映像技術賞 アニメ・ビデオパッケージ部門/技術奨励賞)。現在は、TVシリーズ『ガッチャマンクラウズ』にCGI監督として参加中。

CGW:STUDIO4℃ご出身ということでは、『SHORT PEACE』の一編、『GAMBO』の監督を務められた安藤裕章さんもいらっしゃいますね。

森田:安藤さんも憧れの存在でしたよ。安藤さんが3DCGによる特殊カットを担当された『音響生命体ノイズマン』(1997)を観たときは、作画ベースのアニメなのに奥行きのある背景でカメラが自由に動きまわっていたので大きな衝撃を受けました。そして3DCGの可能性を感じましたね。


『SHORT PEACE』予告編 新宿ピカデリー他全国で上映中!
『AKIRA』『スチームボーイ』の大友克洋最新作。日本のアニメーションの最先端にあり、その先にありうる表現の方向性を模索しているトップクリエイターたちが結集したオムニバス映画

CGW:そうした盛り上がりの中で、作画的な3DCGアニメーションが着実に進化をしてきたと言えるのでしょうか?

森田:そうではありません。表現としては確かに進化してきたと思うのですが、根本的な問題として作画的なアニメーションを付けられる3DCGアニメーターが絶対的に不足しているのです。また、ひとつの作品をつくる上では自分のイメージを共有できる仲間も必要でした。だから、OVA『FREEDOM』(2006〜2008) のオファーをいただいたときに、チームとして成長ができるスタッフを育てようと思ったのです。

CGW:なるほど。

森田:今では変わってきたのかもしれませんが、3DCG を勉強する学生さんの多くはピクサーのようなアニメーション表現を目指す人がほとんどでしょう。だけど、より身近なところに"作画 "という優れた教材があって、そこから学べることが沢山あります。そこで、僕が3DCGアニメーターを育成する際は、3DCGであることは意識せずにツメやタメなど作画の動きの気持ち良さや格好いいキーポーズとはといったことから教えるようにしました。

森田監督ポートレート1

 

CGW:2コマ打ち、3コマ打ちといった作画によるアニメーション表現は日本独特のもの。だからこそ、3DCGと作画のちがいを意識せずに、作画の動きのエッセンスを習得してもらおうようにしたというわけですね。

森田:そうです。ただ、仕事の中で育成するわけなので、どうしても一度に教えられる人数は限られます。『FREEDOM』プロジェクトを通じて6~7人の若手を3DCGアニメーターとして独り立ちさせることができました。そのうちの何人かとは一緒にOVA『コイ☆セント』(2011)を制作することもできたのですが、アニメ業界は作品ベースでの契約が基本なので、プロジェクトが終了するとチームが解散してしまうんですよね。その意味では、三歩進んで二歩下がるみたいな地道な努力を絶えず続けなければなりません(苦笑)。

CGW:たしかに、専門の教育機関ではありませんからね。

森田:ですが、苦労ばかりでもありません。実力(センス)のある子が1人でもいると、周りが感化されて勝手に成長してくれるんですよね。『九十九』でCGI監督を務めてくれた坂本隆輔(※1)もそんなひとりです。そこで、演出として参加させてもらった『武器よさらば』では、あえて新人を投入したのですが期待通りに伸びてくれました。

※ 1:坂本隆輔
『FREEDOM』プロジェクトから、森田氏が率いる YAMATOWORKS に参加。『SHORT PEACE』プロジェクトでは、『九十九』でCGI監督を務めたのはじめ、『GAMBO』では CG アニメーションチーフを担当。『火要鎮』と『武器よさらば』にも中核スタッフとして参加した若手の注目株

CGW:お話を聞いていると、安藤さんたちの世代がまずアニメのデジタル化を推し進め、続く森田さんたちが3DCGによるキャラクターアニメーションを推し進めてきたのだなと、改めて思いました。

森田:そうかもしれません。ですが、まだまだアニメーターが足りません。また、僕たちが様々なプロジェクトに参加させてきてもらってきたサンライズ荻窪スタジオ自体が、練馬スタジオとして生まれ変わり、現在はTVシリーズ『革命機ヴァルヴレイヴ』に取り組んでいるというのもおもしろいですね。今までは劇場長編やOVAなどに注力してきたスタジオが TV シリーズを手がけるというのは、"アニメCG "の広がりという意味でも興味深いです。

森田監督ポートレート1

 

CGW:その意味では、『SHORT PEACE』は約10年にわたって続いた荻窪スタジオの集大成的なプロジェクトとも言えるのでしょうか? 森田監督として、特別な思い入れなどはありましたか?

森田:うーん、無我夢中でやってきたので特別なにかというのはありません。ただ、『FREEDOM』終了後は、なかなか企画が通らなくて気ばかりが焦る不毛な時期が2年ほどありました。逆に言えば企画を沢山考えることができた時期でもあったわけですが(笑)。『SHORT PEACE』の話を、土屋(康昌)プロデューサーからいただいたときは、丁度そのモヤモヤが晴れた頃で、『九十九』のアイデアはわりとすぐに浮かびました。妖怪ものをつくりたいとずっと思っていましたし、民話や伝記なども好きなので「まんが日本昔ばなし」を自分なりに新しくつくりたいという想いが根底にある企画です。

CGW:『コイ☆セント』も奈良を舞台にした民話的なストーリーでしたが?

森田:奈良を舞台にしたのは単に自分の出身地だからですが、その意味では芸幅が狭いのかもしれませんね(笑)。『コイ☆セント』を企画していた頃は 森見登美彦さん万城目 学さんといった方たちの地方を舞台にした小説が好きで「地方ブームにのっかろう!」と思ったわけですが、映像制作って完成するまでに1年くらいかかるんで、出来上がる頃にはそのブームが終わっていたという(苦笑)。それでも「平城遷都1300年記念作品」として発表できたのはラッキーでした。

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作画で育まれた表現技術で描かれる『九十九』の 3DCG

CGW:『九十九』では、特にどのような部分にこだわられたのでしょうか?

森田:3DCG 的にはやはりアニメーションですね。中核スタッフは自分を含めて4人という少数精鋭で、大半の作業を仕上げたのですが、坂本に加えて、『FREEDOM』でCGI監督を務めてくれた佐藤広大が参加してくれたので、3人で「このキャラなら、あくびはこれぐらい大げさにするだろう」、「獣のように脇のにおいを嗅いだりもするはずだ」など、あーだ、こーだと議論しながら、実際に LightWave 3D ver. 9.6(以下、LW) で即興的に付けた動きを見せ合いながら進めていました。

CGW:主人公「旅の男」のまるで歌舞伎のような大きな動きは印象的でした。

森田:武骨な男をいかに魅力的にみせるのか? 「面白ければなんでもあり」といったノリで、楽しみながら妥協せずに動きをつけていくことができたと思います。基本的には大きな動きをつけていたので、表情が崩れるような動きではそのさじ加減が難しかったですけど。

旅の男

主人公「旅の男」のキャラクターデザイン画
©SHORT PEACE COMMITTEE
©KATSUHIRO OTOMO/MASH・ROOM/SHORT PEACE COMMITTEE

CGW:あえてお聞きしたいのですが、森田さんが3DCGによって、作画的なタメツメのあるリミテッドのアニメーションを追求されていらっしゃるのはなぜでしょう?

森田:たしかに「フルコマで自由にカメラを動かせる3DCGなのに、なぜ作画に近づける必要があるの?」といったことは聞かれることはよく聞かれます(苦笑)。実は『FREEDOM』制作時に、大友さんも「3DCGを使ってカメラワークやシェーディングなど新しい表現を試したい」とおっしゃっていたのですが、「まずは従来の作画によるアニメ表現を3DCGで成り立たせることに集中させてください」とお願いしました。

CGW:なるほど。

森田:『AKIRA』そして『STEAMBOY』を通じて、"作画の頂点 "を追求されてきた大友さんからすれば、それとはちがう3DCGの特性を活かした表現がみたかったのだと思います。だけど、僕たちはまだその域(作画の頂点)にも達していないと。語弊があるかもしれませんが、『STEAMBOY』の作画が100とすると、当時の僕らの3DCGアニメーションは実感として10~20ぐらいでした。それを80~90にまで高めることから始めたいと思ったのです。

CGW:なるほど。そのためにも 3DCG アニメーターを育てることに重きをおかれていらっしゃるわけですね。

森田:そうです。カメラワークやシェーディングが斬新でもアニメーションに違和感があったら台無しですからね。だから、キャラクターの感情をしっかりと描くこと、そのためのアニメーションには今もこだわり続けています。

九十九 九十九

『九十九』
<あらすじ>
18 世紀。嵐の夜、深い山中で男が道に迷っていた。そこで見つけた小さな祠(ほこら)。中に入るとその空間は突然別世界の部屋に変化する。そこに次々と現れたのは捨てられた傘や、着てもらえなくなった着物などの「モノノケ」たち。男はその怨念を秘めた古い道具たちを丁寧に修理し、慰めてやる。
<主要スタッフ>
脚本/監督:森田修平、ストーリー原案/コンセプトデザイン:岸 啓介、キャラクターデザイン:桟敷大祐、CGI 監督:坂本隆輔、美術:中村豪希、作画:堀内博之、音楽:北里玲二
©SHORT PEACE COMMITTEE
©KATSUHIRO OTOMO/MASH・ROOM/SHORT PEACE COMMITTEE


CGW:男が持っている寄せ木細工の道具箱というアイデアはどうやって生まれたのでしょうか?

森田:単純に箱から道具を取り出すだけではつまらないなあと。そこで江戸時代らしいものを考えていたときにカラクリ箱を思いついたんです。寄せ木細工について調べてみたら、木の端くれを再利用するというリサイクルの発想が根底にあることがわかり、古い道具の怨念から生まれたモノノケを供養するという作品テーマにも合わせることができました。


「SHORT PEACE」『九十九』15秒PV

CGW:短い尺の中でしっかりと起承転結が込められていて、とてもテンポ良くまとまっていると思いました。

森田:ありがとうございます。今回は短篇ということで、10分で完結させることも課題のひとつでした。短編って、オチがなかったり、中途半端なところで終わってしまいがちなんですよね。とくに3DCGアニメーションの場合は技術的なトピックばかりが注目されがちで、物語が疎かになってしまう危険性もあります。そこで『九十九』では、昔話だけど子供向けというわけではない、かと言ってむやみに派手なエンタメ路線には向かわず眈々とストーリーが展開させていく、それこそが妖怪ものの神髄だと意識しながら完成させました。昔から妖怪ものの構想を練っていたので、脚本もすんなり書けましたね。

九十九 九十九

©SHORT PEACE COMMITTEE
©KATSUHIRO OTOMO/MASH・ROOM/SHORT PEACE COMMITTEE

CGW:森田さんは『SHORT PEACE』プロジェクトでは、『武器よさらば』の演出も担当されていますよね。本作ではプロテクションスーツを装着した状態のキャラクター表現はフル3DCGで作成されたと知り驚きました。当初は、キャラクターの顔は作画を貼り込むという案もあったそうですが、森田さんが「フル3DCGでやりきれる」と強く主張されたそうですね。

森田:これまでにも大友キャラを3DCG化していたので勝算があったのです。たしかにキャラクターデザインを担当された田中達之さんも最初は不安だったようですが、完成したアニメーションをご覧になって「ここまでできるんだ!」と喜んでくれました。達之さんの描くキャラクターは骨格などが正確に描かれているので、立体化がしやすいんですよ。

CGW:監督のカトキハジメさんはメカデザイナーでいらっしゃるので、メカデザインにはひときわこだわりをもたれていたと聞いています。こうしたハイディテールのメカ表現を成り立たせる上でも作画ではスケジュールがはまらなかったでしょうね。


「SHORT PEACE」『武器よさらば』15秒PV

森田:作画でまともに描いていたら、実力のある作画さんを揃えなければなりませんし、時間も相応にかかると思います。加えて作画は歴史が長い分、原画や動画、仕上げ、撮影など区分けやルールがしっかりしています。ですが、それゆえに臨機応変に対応できないこともあるんですよね。

CGW:たしかに、そうした悩みもよく耳にします。

森田:作画の場合、原画マンから上がってきた作画に作画監督が修正を入れていくわけですが、3DCGの場合はカットを担当したアニメーターが、適宜チェックを受けながらも1人で仕上げることが可能です。3DCGはまだ過渡期で、絶対的なワークフローが存在しないため、かえって自由につくれるという面白みがあるんですよ。実は『SHORT PEACE』制作時に、森本(晃司)さんとお話させていただく機会があったのですが、そうした3DCGアニメの「面白ければなんでもあり」、「自分たちが面白いと思うものを最後のギリギリまで追求する」というノリは、80~90年代に自分たちがやっていたアニメ制作に相通じるものがあるとおっしゃっていただけました。

CGW:その盛り上がりはぜひ続けてください。すごく大変だと思いますが(笑)。

森田:あははは(笑)。

CGW:森田監督には、お使いになるツールに対しても独自のこだわりを感じます。3DCG作業についてはLWを長年使い続けていらっしゃいますよね?

森田:LWって、「何もできないソフト」なんです。そう言うと誤解を招きそうですが(笑)、要は「余計な機能がないソフトウェア」なんですね。他の3DCGソフトであれば、「○○っぽい表現を物理計算で自動生成」といった便利でお手軽な機能が搭載されているものですが、LWにはそうしたものがいっさいない(笑)。それゆえに作り手の力量が明白になるんです。

CGW:なるほど。

森田:どんな画をつくりたいのかが問題であり、どのソフトを使うのかは問題ではありません。だからこそ、アニメーターにとってイメージ力がとても重要なのです。僕の作品に参加してくれるスタッフの大半はLW未経験者ですが、直ぐに使いこなせるようになります。自分が描きたい動きをしっかりとイメージできているからですね。そうしたアニメーターにとってLWは、機能に縛られずに自由な発想でものづくりができる便利なツールなんです。

CGW:複雑な機能がなく、操作がシンプルなので習得しやすいわけですね。

森田:その通りです。また、3DCG アニメーションにとって、セットアップ(リギング)はきってもきれない関係ですが、ボーンを動かしているだけでは"アニメーション "にはなりません。アニメーション作業の操作ができているだけで、キャラクターらしさを表現できる域に達していない3DCGアニメーターは残念ながら多いです。作画でも、アクションよりも日常芝居の方が難しいと言われていますが、3DCGも同じでキャラクターを歩かせてみるだけで、その人の力量が明白になるんですよ。

CGW:そうした意味では、作画的な動きの延長にある「アニメCG(リミテッドの3DCGアニメーション)」にとって、良い表現とはどのようなものでしょうか?

森田:僕は2つのポイントがあると思っていて、ひとつはリズムとか音を感じられる動きでツメタメに影響する要素ですね。そして、もうひとつはシルエットで動きを付けること。3DCGの場合は情報量が多いので、無駄に動かしてしまいがちです。だけど、余計な画(ポーズ)を入れないことこそが「アニメCG」では重要なのです。

CGW:フォトリアルな3DCGであれば別でしょうが、作画の中で育まれてきたアニメ表現を3DCGで描く上では、ときには3DCGのセオリーに逆らってもかまわないと?

森田:その通りです。3DCGでは、モデルやセットアップなど、アニメーション作業の前段階の要素がどうして多くなるので、それに囚われがちだと思います。ですが、「アニメCG」なのだから、シルエットがイメージ通りにならなければアニメーターが自分でモデルやリグを調整すれば良いんですよ。それぐらい自由な感覚で作ってほしいと思っています。

CGW:そんな森田監督は、アニメーターをどのようにディレクションされるのですか?

森田:シルエットはかなり厳しく見ますよ。あとは、頭から1フレームずつアニメーションを付けるのもNGですね。アニメCGで重要なのは原画、つまりキーポーズから付けていくべきなんです。2コマ打ちや3コマ打ちなどリミテッドで動きを付けるのであれば、コマが少ない分だけ動いているように意識することが欠かせません。

CGW:そうした森田流の、つまり YAMATOWORKS 流の制作スタイルが浸透していけば、新しいアニメCG表現が生まれそうですね。

森田:そう信じています。また、そうしたスタイルでやっていく上では3DCGアニメーターも作画アニメーターと同様に、" 独自の色 "をもつ必要があると常々感じています。作画で培われた動きの気持ちよさのツボをおさえつつ、独自の動きをリズム、スタイルをつくり出すことです。

CGW:なるほど。

森田:だから、若い子たちには「名前で仕事がもらえるアニメーターになれ」と、いつも話しています。自分が40~50代になったとき、若さ(気力と体力)だけでは戦えなくなったときこそが本当の勝負だと。それに、名前で仕事がもらえるようになれば単価も上がりますし、仕事のやりがい(難易度)も上がっていきますからね。

CGW:最後に、今後の目標についてお聞かせください。

森田:作画的な表現という意味においては、「アニメCG」もかなり進歩してきていると思います。だからこそ、繰り返しになりますが、アニメCGという表現の可能性を高めていくためにも、そのスキルをもったアニメーターを増やしていかなければいけません。今は、『ガッチャマン クラウズ』のCGI 監督を務めさせてもらっているのですが、この作品ではサブリメイションさんとタッグを組んでいます。こうした活動をどんどんやっていきたいですね。あとは、監督としてのスキル、演出力を高めていきたいです。

CGW:今回はありがとうございました。さらなるご活躍を期待しています!

INTERVIEW_村上 浩(夢幻PICTURES
EDIT_沼倉有人(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充

『SHORT

オムニバス映画『SHORT PEACE』

新宿ピカデリー他にて全国で上映中!
『火要鎮』_脚本・監督:大友克洋、CGI監督:篠田周二
『九十九』_脚本・監督:森田修平、CGI監督:坂本隆輔
『GAMBO』_監督:安藤裕章、原案・脚本・クリエイティブディレクター:石井克人、CGI監督:小久保将志、CGアニメーションチーフ:坂本隆輔
『武器よさらば』_原作:大友克洋、脚本・監督:カトキハジメ、演出:森田修平、CGI監督:若間 真
オープニングアニメーション_デザインワーク・作画・監督:森本晃司、CGI:篠田周二、吉野功一
アニメーション制作:サンライズ
配給:松竹
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