3DCG投稿サービス「ニコニ立体」の公式初となるコンテスト「ニコニ立体 3Dモデリングコンテスト」が昨年開催された。
今回はCGWORLD賞を受賞したLand-Y氏へのインタビューをお届けする。

3DCGデータ投稿サービス初の公式モデリングコンテストが開催

今回は、ニコニ立体 3Dモデリングコンテスト受賞者のLand-Y氏へのインタビューと受賞作品のメイキングをお送りさせていただくのだが、まずニコニ立体とコンテストについて説明しておこう。

 ニコニ立体は、2014年5月に開設されたドワンゴ、ニワンゴの両社が運営する、3DCGモデルを投稿できるWebサービスだ。レンダリングした画像はもちろん.unity3d/.obj/.mqoなど複数のファイルフォーマット、MMD用モデルやモーションデータなども投稿でき、3DCGモデル自体も閲覧できる面白いサービスになっている。

TIPSやチュートリアルも投稿できるため、モデルデータをぐるぐる見ながらチュートリアルも読めるという、新たな取り組みの場でもある。
筆者が見る限り、現時点では女の子のキャラクターが圧倒的に多いが、ユーザーが増えれば多種多様な投稿も増えていくかもしれない。国内で3DCG主体のSNSは少ないので、モデラーの交流の場として、また3DCGを始めたい方のスタート地点や目標の場として発展していってほしいところだ。

 そんなニコニ立体初のコンテストが、「テーマ部門」と「ローポリ部門」の2つからなる本コンテストである。
テーマ部門は「和」をテーマに、3DCGで作成されていれば静止画でもリアルタイムモデルでも形式は問われず、背景込みの作品も可能ではあるが、必ず人物を含めることが条件。

ローポリ部門は総頂点数4,000以下で、テーマやモチーフは問わないがこちらも人物を含めることが必要だ。CGコンテストといえば昔は静止画かムービーであったが、今はリアルタイムモデルなのか......と時代を感じる。このようなコンテストは3DCGを勉強している人にとっても作品をつくり続けている人にとっても、自身の作品を試す目標となるため、今後もぜひ開催を続けてもらいたいものだ。それでは、Land-Y氏のインタビューを紹介していこう。

Land-Y 氏インタビュー 業界の発展を見据えて

ゲーム、映像業界を経てフリーランスとして仕事をこなしながら、SoftImage&XSI道場の運営や自主制作にも精力的に取り組んでいるLand-Y氏。 氏のバックグラウンドやコンテスト参加への想いについてお話を伺った。

Q:Land-Y氏について

  • 「せっかく3DCGで描くなら、3DCGでしか成し得ない絵柄を追求した方が良いと思います」と作品への想いを語る

 Land-Y氏は、cvELDというサークル活動を行うフリーランスのクリエイターだ。
ご本人は「ブローカーです」と話すが、各種制作会社から仕事の発注を受け、必要に応じてリギングやアセット制作をサポートしつつ、幅広い人脈を通してクリエイターやモデラーに仕事を依頼するという、進行管理兼プロデューサー的な役割をこなしている。

経歴をたどると、京都のゲーム会社トーセでキャリアをスタートさせ、『新選組群狼伝』(PS2)、『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー』(DS)などのゲーム制作に関わった後、カプコンでアプリケーションのツールアシストを行なってから上京。そこで入社したゲーム会社がまさかの3ヶ月で倒産!という不幸に遭遇したことからフリーランスへ。いくつもの会社と連携して仕事をこなし、現在にいたるという。

「私はモデラーではないので、基本的に実制作は他の人に任せています。自分でメインビジュアルをつくりたいという思いもありますが、下請けの立場では難しい。アニメーション以降の制作をしたいというのもあり、同人活動もしましたがあまり評価をいただけず、少し考え直して自分が目指すビジュアルを再構築することにしました。女の子のキャラクターを制作するには、見てくれる人が女性に何を求めているのか、単にアダルトとかエロいとかではなく、見てかわいい女性の魅力を出すことが必要です。そういう意味で「エロかわ」というコンセプトは必要かもしれないと気づきました。例えばミニスカートはかわいらしさもあって制作面でも作りやすいですし、作業も楽しかったですね」とLand-Y氏。

「モデラーではない」と断言されていたが、氏の作品は賞を受賞するほどの出来映えである。子どもの頃から漫画を描くことが好きで小学生から描き始めた作品は高校生の頃には400Pを超えていたのだとか。残念ながら門外不出とのことで誌面ではお見せできないが、1つの作品に執着して描き続ける気概は、作品をつくる上での地力として現れているのかもしれない。

Q:コンテスト応募への想い

コンテスト応募の経緯をひと言で言うと「Softimageの発展と応援でしょうか」とLand-Y氏。
お話を聞いていくと、美少女のCGキャラクター制作の土壌の底上げ、ひいては3DCG業界の活性化という目的もあったそうだ。

「2Dと比べてクオリティの高い作品が少ないこともありますが、3DCGのキャラクターはなかなか評価を得られません。新しい人に興味をもってもらうためには3DCG専用のコミュニケーションできる場所がほしいと考えました。ニコニ立体がその場所なのではないでしょうか。今回参加したのは、ニコニ立体を盛り上げる応援という意味も含まれています」とのこと。


 筆者はテライユキ以降の美少女CGはよくわからないが、人気のあるジャンルであることは知っている。
作品自体はたくさんあれども、クオリティの高い作品を制作できる人は少なく、裾野もまだ狭いそうだ。

「最近はフィギュアなどのアナログ造形をやっていた人がZBrushを使って参入してきています。CGを始めるにはPCやツールが必要という障壁もありますが、美少女CGの分野はまだまだ発展途上なので、多くの方が参入してクオリティの高い作品が増え、3DCGのキャラクターが一般的に評価される土壌が育てばよいと期待しています。少しでも興味をもってくれたそこのあなた、3DCGで頂天を目指してみないか⁉」とLand-Y氏。

なお、氏のPCは堅牢性の高い電源とマザーボードを選択した自作で、RLE圧縮のOpenEXRをNUKEでコンポジットすることを前提として、MegaRAID SAS 9260-8iをベースに4台のSSDをRAID 0で構築し、読み書き速度2,000MBを実現させているのが特徴だという。

「速度も重要ですが安定性の方が重要です。NVIDIA Quadroを卒業しまして、今後はGeForce GTX 980でリアルタイムレンダリングを攻めたいと思います」。

Q:今後の目標

今回はモデリングコンテストなので、当然モデルが評価されたわけであるが、今後の活動についてはどのように考えているのだろうか。

「この2年くらいは仕事を中心に活動してきたので、今後は世界観や脚本づくりをメインに、自分の作品制作に今まで以上に注力していきたいです。もちろん、仕事もしますよ!」とのこと。

現在、夜は22時に寝て朝は2~3時に起床し、珈琲店へ行って2時間ほど脚本を書くのが日課、充実した毎日を送っているという。

「自分が良いと考えたものをつくり、それを気に入った人がお金を出してくれる、それを実践できているのがアーティスト、芸術家だと思っています。今はKickstarterのようなクラウドファンディングもあり、芸術活動を行える土台もある。ニコニコ動画や初音ミクの登場で、ひとりの天才ではなく、100人の天才の時代に移り変わってきています。まずは1万人の中から100人の人に気に入ってもらえればいいかな」。

Land-Y氏が進む芸術家の道は後進の道標になるかもしれない。

TEXT_草皆健太郎(Z-FLAG)
PHOTO_弘田 充
※CGWORLD vol.199より転載