>   >  作画もCGも、"アニメをつくる"ということに変わりはない。『ポッピンQ』で映画監督デビューをはたした宮原直樹のアニメ演出術
作画もCGも、"アニメをつくる"ということに変わりはない。『ポッピンQ』で映画監督デビューをはたした宮原直樹のアニメ演出術

作画もCGも、"アニメをつくる"ということに変わりはない。『ポッピンQ』で映画監督デビューをはたした宮原直樹のアニメ演出術

東映アニメーションの創立60周年である2016年。記念作品として12月の最後を飾るオリジナル劇場長編『ポッピンQ』は、新たな時代の息吹を感じさせる少女5人による青春ストーリーの作品だ。1カット目からカメラマップを使い、作中では様々なCGダンスを表現。一方で、日常描写やアクションカットなど、作画アニメの面白さも存分に発揮されている。監督を務める宮原直樹は、アニメーターとして『デジモンアドベンチャー』総作画監督などを務めたキャリアを持つ一方で、業界でもいち早くCGアニメーターとしての腕を振るい、『フレッシュプリキュア!』以降、CGキャラのダンスアニメーションを追求してきた"二刀流"のクリエイター。彼は本作をどのように監督し、アニメの未来をどう見ているのかを聞いた。

INTERVIEW_日詰明嘉 / Akiyoshi Hizume
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota



『ポッピンQ』本予告

<1>宮原直樹の存在が『ポッピンQ』という企画の原点

――宮原監督は東映アニメーションには作画のアニメーターとして入社され、作画監督まで務められた後でCGアニメーターに転向されたそうですね。その後、『フレッシュプリキュア!』(2009)以降、多くのダンスCGのある作品にて中心的な役割をはたさられてきました。本作『ポッピンQ』もそのフィルモグラフィーに沿った作品と捉えてよろしいでしょうか?

宮原直樹監督(以下、宮原):そうですね。『プリキュア!』シリーズについては劇場版やTVアニメのエンディングなど、いくつかの作品でダンス映像をディレクションしましたが、なかでも『プリキュアオールスターズDX 3Dシアター』(2011)という、12分のイベント映像(※1)で監督を務めたことが大きかったと思います。この作品の制作では、鷲尾 天プロデューサーの「これからはダンス映像に意味をもたせるにはもっとストーリーと絡める必要がある」という方針の下、キャラクターたちがダンスを始めるきっかけとなるプロローグストーリーを付け足したんです。その後しばらくして、金丸 裕プロデューサーから「クライマックスにダンスがある作品をつくりましょう」と誘いを受けたことから、『ポッピンQ』の企画を練っていきました。

※1:本作は、『プリキュアオールスターズDX the DANCE LIVE ~ミラクルダンスステージへようこそ~』として、2011年11月25日(金)よりDVDパッケージ化されている

作画もCGも、"アニメをつくる"ということには変わりはない。『ポッピンQ』で映画監督デビューをはたした宮原直樹のアニメ演出術

宮原直樹/Yasushi Kawamura

1965年生まれ。東映アニメーション所属。作画アニメーターとしてキャリアをスタート、『ドラゴンボールZ』(1989〜)で作画監督、『デジモンアドベンチャー』(1999)では創作が監督を務めた。その後、3DCGに可能性を感じてデジタルアーティストへ転身(デジタル映像部へ異動)。フルCG短編シリーズ『ロボディーズ -RoboDz- 風雲編』(2008)に、キャラクターデザイナーとして携わった後、『フレッシュプリキュア!』(2009)から『プリキュア!』シリーズに参加し、『プリキュアオールスターズDX2』(2010)や『スイートプリキュア♪』(2011)ではEDダンス映像のCGディレクターを務めた。、2011年に全国のイベント会場で上映されたフルCGダンスムービー『プリキュアオールスターズDX 3Dシアター』で初監督。そして、『ポッピンQ』にて映画監督デビューをはたした。

@naokin_Q


――『ポッピンQ』のストーリーや舞台設定などはどのように練っていかれたのですか?

宮原:プロデューサー陣からはオールターゲットの青春作品を求められましたので、5人の少女たちを主人公とした冒険ストーリーを提案しました。やはり単独よりも複数の方が各キャラの個性を活かした話がつくれますし、ダンスをするときにも画面が華やかになります。それに合わせて90分のストーリーを組み立てていきました。

――監督の中でターゲットは明確にありましたか?

宮原:『プリキュア!』を観ている子たちよりも若干、上の世代を巻き込んでいければと思いましたが、かといって、こういう風につくれば必ずその子たちが喜んでくれるという確証もなかったので、直球勝負で自分たちが面白いと思うものをどんどん詰め込んでいこうと思いました。オープニングテーマを歌ってくれたP.IDLさんは主人公キャラたちと近い世代で、ダンスを踊ったりアイドル活動をしている方たちですので、お会いした際に未来や自分の将来像についてどんな思いをもっているのかを聞いて、それらをストーリーづくりのヒントにしていきました。加えて、脚本の荒井修子さんがキャラクターのセリフや心理的な起伏を非常に細かく紡いでくれました。

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© 東映アニメーション/「ポッピンQ」Partners2016

――キャラクター原案に黒星紅白さんを起用されたねらいをお聞かせください。

宮原:数年前に黒星さんがネットで公開されていたプリキュアのファンアートを偶然見つけまして、独特の世界観で描かれていて、すごく魅力的だなと思って調べてみたら、『キノの旅』の挿絵とか、『サモンナイト』シリーズのキャラクターデザインとか、様々なお仕事をされている有名な方だと知りました。東映アニメーションのアニメーターにキャラデザを頼んだり、あるいは僕自身が行うという選択肢もあったのですが、やっぱり黒星さんにお願いしたいなと。プロデューサーたちとお伺いして直接お願いしたんです。僕の方で5人のキャラ付けやラフイメージを描いたものをお渡ししつつ、それに縛られてはほしくなかったので、「ここに描いてあることはいったん忘れて、好きに描いてください」とお伝えしました。すると、最初から素晴らしい絵が上がってきて、とても嬉しかったですね。

作画もCGも、"アニメをつくる"ということには変わりはない。『ポッピンQ』で映画監督デビューをはたした宮原直樹のアニメ演出術

© 東映アニメーション/「ポッピンQ」Partners2016

――続いて、キャラクターデザイン/総作画監督の浦上貴之さんにはどのようなオーダーをされましたか?

宮原:浦上さんも素晴らしくプロフェッショナルな方で、「黒星さんの絵をそのまま動かしたい」とお伝えしただけで、もう通じていました。浦上さんともお仕事をするのは初めてだったのですが、彼のフィルモグラフィを見ると、ドラマや心情芝居をすごく得意とされていて、地に足がついた芝居を描いてくれる方だとわかりました。浦上さんなら僕らが描こうとしている青春感を上手く表現してくれるんじゃないかと考えたわけですが、最後まで素晴らしい仕事をしてくれました。アクションのカットについては東映アニメ社内で、『ドラゴンボール超』や『ワンピース』で描いているアニメーターが担当しています。適材適所な感じで作画をお願いできたことが良い結果につながったと思います。

作画もCGも、"アニメをつくる"ということには変わりはない。『ポッピンQ』で映画監督デビューをはたした宮原直樹のアニメ演出術

© 東映アニメーション/「ポッピンQ」Partners2016

――『プリキュア!』と比べるわけではありませんが、護身を除いて直接的なバトルを行わないのは、やはりこの作品の特性からでしょうか?

宮原:はい。彼女たちはスーパーヒロインではなく、普通の女の子たちがもっている能力を精一杯使うキャラクターであるという描写にしています。ポッピン・ピンクに変身するというようなことはありません(笑)。作品としての爽快感はほしかったので、一歩まちがえるとそうなってしまいがちですから、どこを落としどころにするのかは、かなり悩んだ部分ですね。そうした思いから、ストーリーの最後はバトルアクションではなく、奇跡のダンスを描きました。作品全体を見渡しても、ダンスシーンだけ分離しているのではなく、ストーリーのなかにきちんと組み込まれているという構成にしています。

――お話をうかがっていると、宮原監督が得意とされるダンス表現をドラマに組み込むということが、『ポッピンQ』という企画の原点であることがよく伝わってきます。

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<2>保守的にならずに、CGと作画の積極的な交流を

Profileプロフィール

宮原直樹/Naoki Miyahara<br />(東映アニメーション/TOEI ANIMATION)

宮原直樹/Naoki Miyahara
(東映アニメーション/TOEI ANIMATION)

1965年生まれ。東映アニメーション所属。作画アニメーターとしてキャリアをスタート、『ドラゴンボールZ』(1989〜)で作画監督、『デジモンアドベンチャー』(1999)では創作が監督を務めた。その後、3DCGに可能性を感じてデジタルアーティストへ転身(デジタル映像部へ異動)。フルCG短編シリーズ『ロボディーズ -RoboDz- 風雲編』(2008)に、キャラクターデザイナーとして携わった後、『フレッシュプリキュア!』(2009)から『プリキュア!』シリーズに参加し、『プリキュアオールスターズDX2』(2010)や『スイートプリキュア♪』(2011)ではEDダンス映像のCGディレクターを務めた。、2011年に全国のイベント会場で上映されたフルCGダンスムービー『プリキュアオールスターズDX 3Dシアター』で初監督。そして、『ポッピンQ』にて映画監督デビューをはたした。

@naokin_Q

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