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Vol.1:MAXScriptから始めるスクリプトによる効率化

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10回手を動かすならスクリプト化してみよう

スクリプトによる自動化を考えるとき、明確な基準を持っていると分かりやすいです。筆者の場合、「10回手を動かすならスクリプト化してみよう」と考えるようにしています。仕事でCGを使っていると、同じ作業を10回以上繰り返すことは多々ありますよね。10回だけで済むならほんの数分で終るかもしれませんが、それが100回、1,000回となったら? 人員を増やすか、オーバーワークをして作業を終らせないといけなくなります。みんなで一丸となって頑張るのはコンテンツ制作の原点ですが、ちょっと立ち止まって考えてみてください。その仕事、スクリプト化して機械に任せる事ができないでしょうか?

機械が得意なのは、同じような処理を何十回何百回と繰り返すことです。今やっている仕事を分析して、機械の得意な仕事に置き換えることができれば、スタッフ総出で徹夜しても終らない仕事を昼休みの間に終らせることだって可能になります。

10回手を動かすならスクリプト化してみよう 10回手を動かすならスクリプト化してみよう

最初は手でやったほうが早い

スクリプトの作成に慣れないうちは簡単なことでつまづいたり、何かをしようとする度に、毎回毎回マニュアルと首っ引きになってしまって時間ばかりが過ぎてしまいます。頑張ってスクリプトを作っても、結局は手でやったほうが早かった......という経験をされたことがある方も多いのではないでしょうか。

しかし、そこを我慢して使い続けると少しづつ定形の書き方を覚えていったり過去に自分が作ったプログラムが蓄積してくるので、飛躍的に効率がよくなっていきます。例えば、私がスクリプトを書くときに一番良く使うのは選択したオブジェクトに対して同じ処理をするというコードです。そのためのコードは指が覚えていて、瞬時に;



for s in selection do (
 )


......というところまで書いてしまいます(本記事の冒頭にあるUIはその例)。たった二行(実質一行)の短い定例文ですが、このコードのお陰で今まで節約できた時間は何百時間もあります。

最初は手でやったほうが早い

最後は餅は餅屋に

簡単な例であれば仕事の合間に勉強した知識で十分対応できるようになりますし、それだけでも日々の問題の多くを解決することができます。しかし、やはり餅は餅屋です。本職のプログラマーに任せないと到底手に負えない内容もたくさんあります。そのような時でも、デザイナーがスクリプトの勉強をしていればプログラマーとの会話の足がかりにすることができ、今どんな問題が起こっているのか、どこが自分たちには解決できないのかをハッキリと伝えることができるようになります。

デザイナーもプログラマーも同じ日本語を使って会話をしているため忘れがちですが、実は全く別の言葉を話していると言っても大げさではないくらい"用いる言葉の意味"に差があります。そのために意思疎通がうまくいかなくなってしまい誤解を生む事も多々あります。

英語しか話せない外国人とのコミュニケーションであれば、日本語が通じなくても腹を立てる人はいないでしょう。それと同じ様な気持ちでプログラマーと会話をし、身振り手振りや簡単な"プログラマー語"を駆使しながら交流をしてみてください。きっと、今まで通じなかった言葉が通じるようになります。

いかかでしたか? 1回目はプログラミング入門以前ということで、実際にスクリプトの勉強を始める前に何故スクリプトを使うのか、スクリプトを覚えることのメリットは何なのかという話題を中心に解説しました。次回からは本格的な学習を始めるていくのでご期待ください。せっかくやる気だったのにまだはじまらないのか!!と落胆した方は、先ほど紹介した for文を使った繰り返し処理をマニュアルを読みながら理解してみることをおすすめします。この短い一文に凝縮されている内容も、ひとつひとつ紐解いていくと意外と高度な内容が含まれているので、全くの未経験者が自分で理解するとなると結構手強い相手ですよ。

TEXT_痴山紘史(JCGS)

映像制作のためのパイプライン構築をはじめ、技術提供を行なっていくためのエンジニア集団、
株式会社JCGS(日本CGサービス)の代表取締役......というのは、表の顔で実態は飲み会とCG技術好きなただのCGオタク。
http://philosy.com/blog

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