シーンコンストラクタを中心としたパイプライン
スタッフ間のコミュニケーションを重視したパイプライン作りが進められている中で、データサーバなどの構成にも十分配慮されている。
一般的に、ファイルサーバをタテ割りで分けているプロダクションが多く、他チームのデータを閲覧しにくいという状況が多いと思う。だが、そのような状況では、優秀なスタッフが多くの案件に兼任して参加するといった作業が非常に難しくなり、せっかくの人的資産が活かせない。そこで MARZA では、ダイナミックにスタッフが動けるようなファイル IO の構築を目指しているそうだ。
このようなパイプラインの構築のなかで、大きな挑戦であったのが、自社開発した 「シーンコンストラクタ」 の導入だ。シーンコンストラクタは、サーバに蓄積したデータベースから直接 Maya の .ma ファイルを構築するツールで、Maya の中で直接シーンを構築するわけではないため、大規模なシーンを制作する場合など、ファイルを開く時間の効率化を図ることができるのだという。
自社開発ツール「シーンコンストラクタ」を中心とした MARZA のパイプライン概念図
さらに、「シーンアップデータ」 なる関連ツールも用意されており、これを利用することでシーンを構築したデータやデザイナーがエディットした状態をデータベース化し、アセットのバージョンを切り替えたり、アセットがシーンに増えた場合にデータベースにある .ma ファイルを自動的にアップデートしてくれるという。
これらの作業は全て Maya を介さずに行えるようになっており、リグやシェーダのバージョンが上がった場合でも、Maya 上で差し替え作業を行う必要がなく、既存の .ma ファイルをレンダリングなどの別セクションが利用できるとのこと。
Maya の外でアセットを共通化してアセットを管理しようということが最大のポイントと言えるが、基本的にアセットのデータベースはテキストなので、このコンストラクタを使用すると、Maya 上で 20 分かかって構築していたものが、 2~3 秒で .ma ファイル化することができるようになったそうだ。
さらに本パイプラインには LOD/Level Of Detail を、プロキシリファレンスを用いて構築する機能も備わっている。例えば、アニメーターが幾つかのレベルの LOD を使用する場合、アニメーターはシーンをコンストラクトしたファイルを開く際に、LOD がプロキシとして読み込まれている状態で Maya で開くことができるとのこと。表示されたシーンを右クリックして、必要な LOD を選択するだけで、切り替えることができるようになっているとのこと。
その他、「カメラシーケンサ」 も『ハーロック』用に開発されたツールの 1 つである。これは、カメラを簡単にタイムライン上で編集してしまおうというもの。 Maya には標準でも同種の機能が搭載されているが、カメラシーケンサでは同じシーンファイルの中で、スタートフレームとエンドフレーム、タイムスライダの位置などを独立した時間軸の中で設定することが可能であり、それらの設定で一気にプレイブラストを作成することができるという。つまり、カメラを追加しても削除しても、順番を入れ替えても、一気にプレイブラストを作成することができるわけだ。「ちょっとだけスローモーションに......といったアニメーションスピードの調整やカメラワークのバリエーションなども簡単に試して、プレイブラストを作成して見ることができるようになっています」(Technology ヘッドを務める堀口直孝氏)。