>   >  『#コンパス』短篇アニメ制作部:#03 1枚のイラストから生まれた「シリーズアニメのクライマックスシーン」とEDダンス/『魔法少女リリカルルカ』by トムス・ジーニーズ
#03 1枚のイラストから生まれた「シリーズアニメのクライマックスシーン」とEDダンス/『魔法少女リリカルルカ』by トムス・ジーニーズ

#03 1枚のイラストから生まれた「シリーズアニメのクライマックスシーン」とEDダンス/『魔法少女リリカルルカ』by トムス・ジーニーズ

<3>モデル

本作でも『Voidoll irregular』同様、NHN PlayArtからゲーム版のリリカのモデルデータが提供されている。VoidollはMMDモデルからプロポーションの変更はほとんどなかったが、リリカの場合はカードイラストに寄せつつアニメ映像向きにプロポーションの調整を行なっている。モデラーの作業に対し監督が3Dデータを直接チェックするというかたちで作り上げていった。「提供されたモデルのカラーイメージがしっかりしていたので、完成までは早かったです。CGとアニメの中間地点ではなくアニメの映像を、と目標がハッキリしていました」(なべしげ監督)。

●モデル


リリカのモデル


左からゲームモデル、MMDモデル、短篇用モデルの比較。ゲームの場合はやや引きのショットで見られることが多いため、シルエットを印象づけるようなプロポーションに設定されている


ルルカのモデル


リリカとルルカの比較。ルルカはリリカよりも若干身長が高い設定であるため、プロポーションも合わせて調整している


覚醒リリカのモデル


リリカと覚醒リリカの比較。覚醒リリカは、通常のリリカから年齢と頭身を上げている

●背景モデル


  • ダンスステージのモデル。背景の陰影や光沢などの質感は、ライティングではなくテクスチャで表現している。その方がアニメの美術に近いイメージで描けるからだという。ダンスステージは、空背景と宇宙背景の2種類のテクスチャを準備した

ダンスステージは、空背景と宇宙背景の2種類のテクスチャを準備した

左:ラスボスステージのモデル/右:ラスボスステージ完成画像

●テクスチャ

ハイライトや陰影はテクスチャに描き込んでいる。Mayaのレンダーレイヤーで各素材を分けて出力しているので、テクスチャはベースカラー、影マスク、光沢、ラインマップ等レイヤー分けされたPSDデータで編集しやすいようにしている。左:リリカの髪テクスチャ、右:ルルカの髪テクスチャ

背景テクスチャ。こちらもベースカラー、影マスク、光沢等レイヤー分けされたPSDデータで編集している

<4>リグ&アニメーション

フォーマットのパロディから始まった本作だが、内容についてはあくまでオリジナルの映像作品として表現を突き詰めていく必要があった。ダンスシーンにおいては「最初はキャラクターらしさや性格があまり盛り込まれておらず、記号的だった」と監督は語る。そこでリリカの場合であれば踊るときの一生懸命な表情を突き詰めていくことで、キャラクターらしさを生み出していった。アニメーターの小笠原俊介氏は「みんなが応援したくなるような表情づくりを目指した」と語る。一方、ルルカは落ち着いている表情が多い。ダンスシーンではカメラへの目線送りから彼女の余裕ぶりが垣間見える。「可愛い表情を見せつつ、カットが終わるくらいのときに『見えちゃった』みたいな感じ」(小笠原氏)を出すのがポイントだったという。


  • 小笠原俊介/Shunsuke Ogasawara
    トムス・ジーニーズ

なお、ダンスシーンでモーションキャプチャが使われているのは先述の通りだが、それ以前のバトルシーンでもモーションキャプチャの撮影を行なっている。これはVコンテ用のリファレンスで、監督が自ら演じた。なお、本編の動きについては小笠原氏が手付けで制作している。また、髪の毛の揺れは作業効率を考えつつシミュレーションを使い分けている。ダンスではシミュレーションを使用し、めり込みが起きないようリガーの岩井文吾氏が調整を行い、固めに設定。バトルシーンでは手付けで丁寧に付けている。なお、スカートやリボンはどちらもシミュレーションだ。


  • 岩井文吾/Bungo Iwai
    トムス・ジーニーズ

●リグ


リリカのリグ、左からトムス・ジーニーズのリグシステムで使用される標準リグ、リリカの体型に合わせて設定したリグ、各補助リグを追加したもの


右の赤いジョイントは、モーションキャプチャとセカンダリシミュレーション用のジョイント。このジョイントの動きをリグのコントローラに反映させ、オフセットにより最終的な動きをつける

●フェイシャル


リリカのブレンドシェイプ

左:リリカの表情。自分なりに頑張ろうとしている表情を出すのがリリカらしさ/右:ルルカの表情。ルルカはお姉さんらしさを出している

●アニメーションのながれ


Mayaの作業画面

この短編のファーストカット。ルルカが不意を突かれ驚く表情がアニメーションの作業が進むにつれ緻密になっている。眉や口、瞳孔の動きに注目

●揺れもの

シミュレーションによる髪、スカートなどの揺れ

手付けによる髪の揺れ

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<5>エフェクト

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