>   >  『#コンパス』短篇アニメ制作部:#04 原作ファンが見てみたいジャスティスの姿を探し求めて/『CALL OF JUSTICE』by ハイパーボール
#04 原作ファンが見てみたいジャスティスの姿を探し求めて/『CALL OF JUSTICE』by ハイパーボール

#04 原作ファンが見てみたいジャスティスの姿を探し求めて/『CALL OF JUSTICE』by ハイパーボール

NHN PlayArtとドワンゴが開発・運営を行う大人気対戦ゲームアプリ『#コンパス 戦闘摂理解析システム』(以下、『#コンパス』)を原作に、CGから手描きまで様々なアニメーションスタジオがそれぞれの「ヒーロー」を主人公とした短編アニメーションをつくり上げるという連作企画「#コンパス短編アニメ」。

プロジェクトの第4弾として公開された『CALL OF JUSTICE』は、自らを盾にするタンクキャラクター・ジャスティス ハンコックの渋さと格好良さを際立たせるアクションアニメーションに仕上がった。この短篇を制作したのはハイパーボールバンブーマウンテンGODTAILによるトライアングル。それぞれのアーティストがリスペクトし合うなかで作られた様子を詳細に解説する。

INTERVIEW_日詰明嘉 / Akiyoshi Hizume
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充/ Mitsuru Hirota

●Information
#コンパス 戦闘摂理解析システム
ジャンル:リアルタイムオンライン対戦ゲーム
プレイ料金:基本無料(有料アイテム販売あり)
運営・開発:NHN PlayArt株式会社、株式会社ドワンゴ
https://app.nhn-playart.com/compass/

<1>ゲーム内の設定やセリフのみでストーリーを魅せる

連合宇宙軍大尉の英雄・ジャスティス ハンコック。その見た目の通り、力強い軍人でありながら「テヤァ!」の決めゼリフなどのキャラクター性がファンから愛されて止まないヒーローだ。この短篇アニメーション『CALL OF JUSTICE』ではそんな彼のバトルアクションを存分に楽しめる一方、キャラクター像を深める意外な一面を描いている。こうした内容は、これまでの「#コンパス短篇アニメ」シリーズ同様、原作ゲームからクリエイターが最大限までアイデアを練り上げて作られていった。

ディレクションを担当したのは『ルパン三世 PART4』をはじめ、数多くのTVアニメでOP・EDのアニメーションディレクターを手がけるハイパーボールの山下敏幸氏。キャラクターデザイン・絵コンテ、2Dアニメーションパートは大阪在住で競技型デジタルアート「LIMITS JAPAN」での優勝経験をもつイラストレーターGODTAIL氏が、CG制作およびアニメーションを福岡のCGプロダクション、バンブーマウンテン(※)が担当した。

※注:バンブーマウンテンは2020年4月1日より株式会社グラフィニカ 福岡バンブースタジオに社名変更

『#コンパス』開発チームのアートディレクターを務めるNHN PlayArt・藤田大介氏が本作のグランドデザインとしてもっていたのは「アメコミ調」。そのリクエストを受けた山下氏は、GODTAIL氏のイラストタッチと、それを動かすバンブーマウンテンのチームが最適だと確信し、この3社のトライアングルが成立した。


前列左から 藤田大介氏(NHN PlayArt)、山下敏幸氏(ハイパーボール)、後列左から 竹山諒一氏(バンブーマウンテン)、三皷梨菜氏(ハイパーボール)、GODTAIL氏

山下氏がこれまで数多く手がけてきたOP映像と、本作のような短篇アニメーション。尺の点では大きなちがいはないが、前者はミュージックビデオ的な絵と音のリンクを重視するのに対し、後者は短い尺の中でもひとつの物語をつくる必要がある。本作において山下氏が悩み抜いてつくり上げたのが「ゲーム中のセリフや設定だけで構成し、その後で物語をつくる」(山下氏)というアイデアだった。

『#コンパス』原作ゲームのキャラクター設定について、「最低限の情報しか出さない」のがNHN PlayArt・林 智之プロデューサーのスタンスであると、藤田氏は語る。それは、ファンに想像の余地を大きく残すことで、一緒にこの世界観をつくり上げていくという共感を与えることに繋がるからだ。


  • 藤田大介/Daisuke Fujita
    NHN PlayArt株式会社
    アートディレクター
    www.nhn-playart.com

山下氏も「ゲームのリリースから時間が経っているため、ファンの中でキャラクターが出来上がっている。そうしたなかで僕たちのエゴを押し付けるのではなく、ファンが見てみたいジャスティスを作るのが命題」と考え、それまでMV的に構想していた映像のイメージを解体し、短篇として再構築を行なっていった。

とはいえ、山下氏には自由に任されたゆえの産みの苦しみもあったようだ。「従来のアニメのOP映像制作は、原作やアニメの設定といった制限の中でいかに"遊ぶ"かが腕の見せどころでした。本作はあまりにも自由で、どこまで走って逃げても良い鬼ごっこのよう」と語る。そうしたなかで「ファンが見たいもの」に寄り添ったかたちが「セリフ縛り」の作劇だった。

山下氏が構成を作った後、GODTAIL氏が絵コンテを作成し、バンブーマウンテンがCGを担当するというながれで制作が行われた。それぞれの会社間でも「この3社は決まりごとを多くするよりも、自由に任せていく方が面白いものができる」(山下氏)というクリエイティビティの下、スムーズに進行していったという。制作はプリプロダクションの後、モデリングに約1ヶ月、CGアニメーションパートの作業に約1ヶ月と短期間で作られ、2018年12月23日(日) 「#コンパスフェス 2nd ANNIVERSARY」にて初お披露目となった。それでは次項から具体的な工程をみていこう。

<2>プリプロダクション

先述の通り、アクションシーンはゲームのセリフを基に山下氏が発想していった。一方、前半のバーのシーンのアイデアはGODTAIL氏によるものだ。「ジャスティスは『酒を飲むと饒舌になる』という設定からバーでのシーンが思い浮かびました」(GODTAIL氏)。その上でバーのママ、ホステスの女性アンドロイド・ラブといったオリジナルキャラクターのデザインも手がけた。ラフの段階からPhotoshopで描き、その後清書していくという方法で、非常にスムーズに進行していったという。

そうして生まれたバーのシーンのアイデアを踏まえ、山下氏が文字コンテを作り、それをGODTAIL氏が絵コンテに起こしていった。「字コンテの段階で出来上がっていたので描きやすかったです。格好良いアングルで具現化することに注力できました」(GODTAIL氏)。限られたリソースの中で制作を行う上で、コロニーの外を荒野という設定にして省力化を図り、その分キャラクターを動かしたりバーのシーンを制作したりすることに労力を割いた。作りたいシーンと作れる状況の双方から詰めていくプランニングが本作の制作において重要だったと山下氏はふり返る。

●キャラクター設定


  • ゲーム内のジャスティスのイラスト。キャラクター原案はひでかず氏(NHN PlayArt)。海外のFPSやアメコミ的なキャラクターのジャスティス。連合宇宙軍大尉というヒーロー然としたキャラクター性をもつ。「過去に仲間を戦死させたことがない人物」という設定は、ゲーム中のタンクとしての役割を強調した結果生まれたものだ





ゲームのジャスティスの設定画。ゲーム画面のサイズ感に合わせ、イラストよりも頭身が低くなっているが、シルエットやカラーリングなどから個性が際立つ。トレードマークの巨大なハンマーは、タンクタイプのキャラクターに合わせ、射程が短く大振りする武器として考案された


GODTAIL氏によるアニメーション用のキャラクター設定。ゲームと比べて頭身が上がり、カラーリングも相まって全体的にシャープな体型になっている


パワードスーツなし状態の設定画。体型やポージング、小物や意匠から軍人らしさがより際立つ。顔やボディに使われているブラックによって、ゲーム開発当初からあったアメコミキャラクターのような印象を与えている。画像右側に描かれている表情については、年齢感がポイントであったため修正を重ねたという。当初は若々しく爽やかな顔立ち(左側)だったが、骨太な感じや渋さを加えてバランスを取り、決定稿(右側)に至った


本編で登場するオリジナルキャラクター、バーのマムとアンドロイド・ラブの設定画。ラブがいわゆる美少女キャラクターの文法とは異なるデザインになっていることについては、「未来にアンドロイドが作られることになったとしたら、最初はいわゆる美人型が作られると思うのですが、いずれそれにも飽きが来て、多様な嗜好に対応したタイプが作られることになるでしょう」とGODTAIL氏はその意図を語る。そうした未来の中での時間経過も世界観として表現している。マムの「元戦闘員でジャスティスと古くからの知り合い」という設定はGODTAIL氏の考案。右上腕の星のマークから歴戦の勇士だったことが窺える

●絵コンテ

バトルシーンでの大立ち回りの一部(CUT:40)はCGパートを担当したバンブーマウンテンの自由な発想に任せている。山下氏→GODTAIL氏→バンブーマウンテンとそれぞれが信頼し合い創造の余地を残すことによってそれぞれの個性が活きた短篇映像が生み出された

●Vコンテ

絵コンテをつなげたVコンテ。カメラワークだけでなく、2Dパートには簡易なコンポジットやキャラクターアニメーションも付与されている。この映像では立ち回りのシーンのアップが2D、ミドルショットは3Dと入れ替わっているが、そこに違和感がない。この時点でモデリングが相当キャラクターと馴染んでいることがわかる

●原作ゲームの要素

これまでの#コンパス短篇アニメの例に漏れず、本作でも原作ゲームに登場するカードが作中で使用されている。映像作品中に絵柄は出てこないが、最後に使用した「連合宇宙軍 サテライトキャノン」もゲーム中のカードとして存在する(UR)。【上】「ぶじゅつかの超速加速」カード(自分の移動速度を25秒間大アップ)と使用シーン。多脚ロボットに向けて飛び込む際に使用/【下】「恒星間転送装置Tele-Pass」カード(一番近くの敵の背後に瞬間移動)と使用シーン。宇宙にジャンプする際に使用

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<3>モデル

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