記事の目次

    NHN PlayArtとドワンゴが開発・運営を行う大人気対戦ゲームアプリ『#コンパス 戦闘摂理解析システム』(以下、『#コンパス』)を原作に、CGから手描きまで様々なアニメーションスタジオがそれぞれの「ヒーロー」を主人公とした短編アニメーションをつくり上げるという連作企画「#コンパス短編アニメ」。

    プロジェクトの第2弾として公開された『Voidoll irregular』は、ゲームシステムそのものを物語の舞台として創造し、それを応援するニコニコ動画のコメントも演出として使うというメタ的な構造をとりながら、映像としても本格的なアクションとエフェクトなど見どころが満載の作品に。制作したトムス・ジーニーズを取材した。

    INTERVIEW_日詰明嘉 / Akiyoshi Hizume
    EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)
    PHOTO_弘田 充/ Mitsuru Hirota

    ●Information
    #コンパス 戦闘摂理解析システム
    ジャンル:リアルタイムオンライン対戦ゲーム
    プレイ料金:基本無料(有料アイテム販売あり)
    運営・開発:NHN PlayArt株式会社、株式会社ドワンゴ
    https://app.nhn-playart.com/compass/

    <1>短篇によって初めて描かれた『#コンパス』の内部

    トムス・エンタテインメントのグループ企業で、グループ内の各プロダクションと連携した作品開発をはじめ、TVアニメ『猫のニャッホ』『ファイアボール』シリーズなどで知られるCGプロダクションのトムス・ジーニーズ。同社は高級ブランドが立ち並ぶ東京・表参道にスタジオを構え、近辺の雰囲気に溶け込むオシャレな内装。加えてモーションキャプチャ設備を社内に整えているのが特徴だ。


    写真左から 小笠原俊介氏、圓谷章吾氏、岩井文吾氏、渡辺誠之氏、島田洋平氏、肖 雨青氏、中田英輔氏
    jinnis.com

    プロダクションのアサインを一手に引き受けたトムス・エンタテインメントの久保雄輔プロデューサーは、『#コンパス』のヒーローたちの中からトムス・ジーニーズが得意とするタイプのキャラクターとしてVoidollとリリカ、双挽乃保の3体を選び、『ファイアボール』シリーズでCG監督を務めた経歴をもつ渡辺誠之氏が『Voidoll irregular』の監督・脚本を担当することとなった。渡辺氏は「作品のコンセプトやストーリーから任せていただけたことは、とても嬉しく思いました。何かしらのカラーを出せれば」と意気込み、制作に臨んだという。


    • 渡辺誠之/Shigeyuki Watanabe
      監督
      トムス・ジーニーズ

    Voidollは『#コンパス』のメインシステムを管理しているというキャラクター。その設定を活かし、ストーリーの骨子はシステムがハッキングを受け、普段はシステムを保守している警備ロボGuardollが攻撃を仕掛けてくるという内容に固まった。なお、これまで『#コンパス』のゲームにおいてシステム内部が描かれたことはなかったため、NHN PlayArtの監修を受けて作られたこの作品が初の"公式"のビジュアライズとなった。

    その後、シナリオを詰める作業と並行して、美術設定の中田英輔氏にイメージボードを進めてもらいながらVoidollのモデルを制作。次のシナリオ打ち合わせの時点でルックを確認できる状態にまでもっていくという手際の良さで進められた。全体では4〜5名のスタッフによって4ヶ月ほどの制作期間で完成まで漕ぎ着け、昨夏に開催されたイベント「#コンパス ライブアリーナ千葉」にて初めてファンに公開された。


    • 中田英輔/Eisuke Nakata
      美術設定

    本作は冒頭からニコニコ動画のコメントを模した実況コメントを演出として盛り込み、クライマックスのシーンでは改めて応援コメントを流すという、ファンの気持ちに寄り添った内容になっている。ニコニコ動画での配信では、この映像にさらに視聴者による本物の実況コメントが重なることでムービーが完成するという、ファンとの交流を体現した内容は好評をもって迎えられた。

    「ショートアニメーションで時間は短いながらも、映画的な起承転結をしっかりと盛り込むことをチャレンジとして掲げていました。ファンの方の反応を見ると、それが伝わったようで嬉しく思います」(渡辺監督)。「背景デザインだけではなく、3Dモデルへの張り込みテクスチャや、劇中に登場するインターフェイスのグラフィックなど実際に画面に登場するものまで今回作ることができました。細かいところまでこだわりをもってデザインしましたので、そうしたところをユーザーに見てほしいと思います」(中田氏)。

    こうした仕上がりに『#コンパス』開発チームのアートディレクターを務めるNHN PlayArt・藤田大介氏は「カメラと空間を上手に使って内部の広さや世界観を説明しているところや、中盤のカーチェイスのアクション等世界観とバトルを上手に演出されていたところに感心しました。開発も想像していなかった『#コンパス』の世界を創造していただきありがとうございました!」と絶賛。では、この作品がどのように作られていったのかを見ていこう。


    • 藤田大介/Daisuke Fujita
      NHN PlayArt株式会社
      アートディレクター

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    <2>プリプロダクション

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    <2>プリプロダクション

    メインシステム内部のデザインはまず渡辺監督がアイデアを膨らませてラフスケッチを描き、中田氏がイメージボードを3ds Maxで仮組みして具現化するという手順で行われた。3Dで組むメリットは、イメージボードの段階からレイアウトのテストをしたりカメラアングルを検討したりできる点。いわゆる2D的な嘘がない状態で組み上がっていくため、モデリングの際にも齟齬を少なく構築することができる。 Photoshopで画像に加筆をしてやりとりを重ねることも珍しくなかったという。

    NHN PlayArtからはVoidollのモデルデータや背景など各種3Dデータも提供された。開発の仕事であってもデータが社外に貸し出されることは一般的に少ない。「ハッキングされたところを他のヒーローたちが助けるというカットを作りたい」と渡辺監督が相談したところ、テクスチャの作成や各世界が侵略される際のシーンの提供まで協力をしてもらえたという。しかもこのシーンは本作のためにプログラマーが組んで別のビルドを作成したという手の込みようだ。これらの協力もあり、ゲームのビジュアルに近いものを作ることができたと渡辺監督は語る。

    ●Voidollのルック検討

    左:ゲーム版のVoidollのキャラクターイラスト/右:ゲーム版の設定デザイン画

    本作におけるVoidollのルック検討画像。最初に提出した画像(左上)は光沢が多数入ったCGらしいルック。次はセルルックに反射を抑えたパターン(右上)。決定稿はその中間の少し光沢が入ったルックに決まった(左下)。「普通のセルテイストだとデジタル感がどうしても弱くなってしまうので、キャラクターはセルに加えてグラデーションベースの質感やリフレクションを与えたCGっぽさを少し残した表現をご提案いただきました」(藤田氏)

    ●Voidollのモデル比較


    左からゲーム用のモデル、MMD配布モデル、本作用のモデル。ゲーム用モデルは様々なスペックのスマートフォンに対応させる必要があるため、ディテールを省略した比較的ローポリゴンのモデルになっている。MMD向けはそれよりもやや高精細なモデルで、これをもとに本作用のモデルを制作した。目の部分に透明のカバーをつけることでディテールアップしている

    ●コアシステムのデザイン


    本作の舞台となった『#コンパス』のコアシステムのデザインにあたって、渡辺監督が起こしたアイデアスケッチ。「システムの核となるキューブの周りにたくさんのモニタが浮かび、それぞれのモニタ内でバトルが行われている。バトル終了後、バトルのデータがポータルキーの形でキューブに向けて打ち出されるというイメージです」(渡辺監督)

    渡辺監督のスケッチを基に、中田氏が制作したラフデザイン。初稿(左上)では非常線のモチーフやモニタ表現に漢字を用いていることが見て取れる。その後渡辺監督とのやりとりを経て2稿(右上)、3稿(左下)とブラッシュアップを重ねていったが、ギミックやオブジェを排した白く整然としたクールなイメージの方針は初期から変わりがない。また、キューブのデザインは初期の時点でほぼ固まっていたことがわかる。「キューブ表面のパターンは、ハッキングされて光が広がっていくという演出を見せたかったので電子基板のような光の筋を入れてもらいました。その後、テクスチャを描いて貼り付けてデザインをハッキリとさせています」(渡辺監督)。「3Dでランダムにキューブを作る機能があり、それでパターンを出したら基板っぽく格好良くなりました」(中田氏)

    上記のラフ作成を経て、NHNに提出されたデザイン。左が通常時、右がハッキングを受けた異常時のイメージ。「『#コンパス』はシンプルなデザインを基本として、遠景は情報量を減らす等の工夫もしていますが、近景になる部分では基盤を見せるなど適切な密度で環境を表現することで、『#コンパス』らしさとアニメとしてのクオリティを両立していただきました」(藤田氏)

    ●完成した設定画

    コアシステムのイメージボード。当初は白+Voidollのカラーである水色が正常な状態で、ハッキングを受けると赤系のカラーリングに変わるというアイデアだったが、『#コンパス』のゲームは青チームと赤チームに分かれて戦うルールのため赤色を異常とすることは避けたいというNHN側からの要望により、異常状態は紫色+ブラックライトのような色合いに変更された。ゲーム中でも毒の表現が紫で表現されるため、ネガティブなイメージとも合致した。「ブラックライトはVoidollの蛍光色が目立つ色。この空間にVoidollを入れると目の青色がより強調され、全体的に赤色にするよりもキャラクターが映える空間になりました」(渡辺監督)


    • ポータルキーの設定画。『#コンパス』は、ステージ内に配置された5つのポータルキーを赤・青の2チームに分かれたプレイヤーが奪い合うというゲームであるため、プレイヤーにもお馴染みのアイテムだ。本作に登場するポータルキーはゲームのステージに登場するモデルよりも複雑な機構になっている。挿し込まれるとアームが起き、台座が45度回り、シリンダがロックされるという段階を踏んだアクションをみせる。これはハッキングを受けたキーをVoidollが踏んで挿し込むカットやその後のハッキングが進んでいくシーンで、手順を追うことで印象的に見せるための工夫だ

    • 敵キャラクター「イレギュラー」の設定画。『#コンパス』作中のVoidollの世界には液体金属のキャラクターが存在しており、それをアレンジしてイレギュラーのキャラクターとした。決定稿となったAはNHNでも満場一致だったという。「磁性流体に磁石を近づけるとトゲトゲした形状になる動画を、アニメーションのリファレンスにしました。Voidollは目がマンガっぽい挙動をするため、それに合わせてあまりメカメカしくない方が世界観に合うのではと考えました」(渡辺監督)

    ●シナリオ


    • Voidollは口パクがないキャラクターということもあり、ギリギリまで『#コンパス』プロデューサー・林 智之氏による台詞の推敲が行われた。画像はシナリオの一部。青字は1回目の推敲、赤字は2回目の推敲のもので、念入りに監修が行われているのがわかる。「Voidollのセリフはちょっと上から目線の言葉のように聞こえますが、それはAIだから単純に感情なくズバズバ言ってしまっているという設定です。これは一歩間違うと、とてもヒドいことを言ってしまっているように捉えられかねません。その微妙なさじ加減は林にしか分からないので、しっかり監修をさせていただきました」(藤田氏)

    ●Vコンテ

    渡辺監督によるVコンテ。一般的なアニメーション制作の作業ではシナリオから絵コンテを起こし、その後アニメーターがレイアウト作業を行う流れだが、この作品では絵コンテが描かれず3DCGでVコンテが制作された。「制作する相手は皆3Dのスタッフですのでコンテの段階からMaya上で組んで、レイアウトの一歩前まで行いました。尺も出してPremiereでオフライン編集、仮のボイスまで収録してしまいます。ここまでで2週間くらいです」(渡辺監督)。Vコンテでの作業は効率面だけでなく、演出においても効果を発揮。「クライマックスで流れるメインテーマは、当初は決めていなかったのですが、Vコンを作っているときに思いついて、すぐに当ててみました。聴きようによってはコミカルに感じられる曲ですが、上手く曲がハマり感動的なシーンを構築することができました」(渡辺監督)

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    <3>リグとアニメーション

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    <3>リグとアニメーション

    トムス・ジーニーズは社内に小規模なモーションキャプチャの施設をもつこともあり、モーキャプにも手付けにも対応できる内製のリグシステムを構築し、活用している。本作のアニメーションはVコンテをベースとして全て手付けで制作されており、メインツールはMayaだが、ヒーロースキルを使用するシーンのアニメーションのみ3ds Maxが使われている。「自社のリグシステムのおかげで、3ds MaxのアニメーションキーをMayaに読み込む作業がスムーズにできました」とリギングを担当した岩井文吾氏は語る。


    • 岩井文吾/Bungo Iwai
      トムス・ジーニーズ

    「Voidollは設定上ロボットではありますが、固いだけではなく柔らかさも共存しており、それが表現できるリギングにしてもらいました。例えば手足や髪にしなる感じを入れたり、ひねったり歪ませたりできるようにとお願いしました」(渡辺監督)。

    『#コンパス』は、スマートフォンの画面で見てもキャラクターがすぐに判別できるよう、それぞれのキャラクターのシルエットに特徴をもたせている。なかでもVoidollは手首足首がなく浮遊しているためポーズがつけやすく、アニメーターにとっても動かしやすいキャラクターだったという。アニメーションは24fpsで付けている。

    アニメーションは小笠原俊介氏を中心に4名で担当。「ゲームのユーザーの方から見たときにイメージが壊れないよう、ゲーム内で取っているポーズをアニメーションに採り入れ、ファンの方が受け入れやすいようなアニメーションにしました。最後の戦闘シーンでのキメの部分はタイミングを詰めて格好良く演出しつつも、そこにいかにVoidollの可愛らしさを盛り込むかがポイントでした」(小笠原氏)。


    • 小笠原俊介/Shunsuke Ogasawara
      トムス・ジーニーズ

    ●Voidollのリグ


    左から、リグシステムのベースリグ、Voidollの体型に合わせて調整したリグ、リグを適用して各補助リグを追加した状態。手足の部分は関節以上に湾曲させたり補助ガイドを付けたりしているのが特徴。フェイシャルはブレンドシェイプを使用


    カットによって肩の関節の位置をずらしたり、手足の関節部分を繋げたりと、見え方に応じて構成をチューニングしている。中央が調整前、右が調整後

    ●アニメーションのながれ①キーポーズ

    アニメーションキーポーズの例。Voidollのアニメーションにおいてはキーポーズが重要な役割を果たした。まずはセリフに合わせてキーポーズを作り、ゲーム内の可愛いポーズを再現し合間に盛り込むことでVoidollらしさを印象づけていった。「ポージングにおいては、人間のファッションモデルのポーズを参考にしました。Voidollはけっこう可愛らしいポーズを取るんですよ」(小笠原氏)

    ●アニメーションのながれ②髪の揺れ


    Voidollはロボットでありながら柔らかさを感じられる動きが目指されたが、髪についてはシミュレーションでは柔らかくなりすぎたため、全て手付けで作成された。ゲームでのポーズを印象づける際、ゲームでは真っ直ぐなポーズが短篇では曲がっていたりするとイメージが乖離するため、入念に再現したという

    揺れなし

    揺れあり

    ●アニメーションのながれ③カメラワーク


    冒頭の登場シーンのアニメーション。カメラワークもアニメーション担当が付けている。ここで動き方の模索をしてテストをくり返し、イメージを固めていった。当初はふんわりとした動きだったが、渡辺監督からの「浮遊感の中にもキビキビとした動きを入れていきたい」という意見を採り入れ、現在の動きに固まった。「システム内部はこれまで描かれたことがなかったので、最初のカットでのVoidollのフワッとした動きでユーザーにイメージを伝えることができたと思います」(藤田氏)

    ●リグによる手先のしなり表現

    手先をしならせるリグ


    • しなりなし

    • しなりあり

    Voidollは手首、足首がない構造のため、手先をしならせることで動きに柔らかさを出している。「Voidollが両手を合わせるところは、モデルの形状そのままでは合わせることができないのですが、しならせるリグを使って合わせられるようにしました。手がない分表現が難しい要素をしならせることでカバーしています」(小笠原氏)

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    <4>エフェクト

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    <4>エフェクト

    『#コンパス』のゲームではアニメ調のエフェクトが使用されているため、本作でもそのルックを踏襲し、爆発やVoidollが発するビームなど作画素材を活用した2Dエフェクトが随所にみられる。2Dエフェクト作画はrapparu氏が担当、コンポジットはトムス・ジーニーズの島田洋平氏を中心にコンポジットチームによって行われた。「いただいた作画素材にエフェクトを足し、さらに豪華にしていく作業に力を入れました」(島田氏)。


    • 島田洋平/Yohei Shimada
      トムス・ジーニーズ

    ●原作のルックに合わせた2Dエフェクト


    • 2Dエフェクトを得意とするアニメーターrapparu氏による作画エフェクト。まず、アニメーターが3D上でアタリのエフェクトを作成し(左上)、そのアニメーションを下絵にrapparu氏がエフェクトを作画し、色分けされた2D作画連番で納品(右上)、そのデータにグローなどのエフェクトをかけて仕上げる(左下)


    • 左上:社内アニメーターによるアタリのエフェクト、右上:アタリを基にrapparu氏が作画したエフェクト、左下:完成画像

    ●キューブが舞うエフェクト


    • 本作の舞台はデジタル世界であるため、ゲーム内で衝撃が起こったときなどには細かいキューブが舞うという表現が採り入れられている。キューブの動きはボクセルを使って表現している。左上:Maya作業画面、右上:ベース素材、左下:最終コンポジット。「キューブはパーティクルで設定した後、大きく映らないのでキャッシュを取らず、プレイブラストで出力したものをコンポジット時に加工しています」(島田氏)

    <5>コンポジット

    コンポジット作業において、Voidollの素材分けとしてはカラー、シャドウ、コンターなど通常のセル調表現の素材が用意されたが、スペキュラのみ3種類出し、用途に応じて使うという方法が採られた。スペキュラは実写的なものとアニメ的なハッキリした形のものを織り交ぜている。

    また、クライマックスの、ハッキングされたバトルステージが次々に正常に戻っていくシーンでは、各端末の画面の色が侵食状態の紫から通常の赤・青に変化していくわけだが、色の差異が大きくないため、そのままでは演出が目立たなくなってしまう。そこでコンポジットの際に一度発光させることで色の変化をしっかりと見せるよう工夫された。

    「『#コンパス』の短篇プロジェクトでは、アニマティクスからアニメーション、レンダリング、エフェクト、コンポジットまでを1人のスタッフが担当することが多かったため、アニマティクスの段階から、後工程で自分がコンポジットしやすいように作業をしていました」と島田氏。監督との意向のすり合わせにおいて何度かリテイクがあると予感したため、リテイクがあってもMayaに戻らず編集できるようなかたちでコンポジットを構築したという。

    ●Voidollの各素材


    • カラー

    • コンター


    • ラインマスク

    • シャドウ

    • スペキュラA

    • スペキュラB

    • スペキュラC

    • 全て合成した完成画像

    Voidollの各部位によってリフレクションの設定を変え、カットによって使い分けることで質感のちがいを表現している。「ライン出力で途切れたり出にくかったりする部分にはカラーマスクを出し、コンポジットでマスクのアルファを使ってアウトラインを出力しています。カットによってラインの設定を細かく調整したり、出し直したりする作業が削減できました。最終ルックは3DルックとVoidollの2Dイラストの中間あたりを意識して制作しています」(島田氏)

    ●背後の端末の色が紫から赤や青に変化していくカット


    • 【A】

    • 【B】

    • 【C】

    • 【D】

    ハッキングされた数多のバトルステージが次々に正常に戻るシーンにおいて、紫だった各端末の画面の色が、中央から広がるように赤もしくは青に変化していく。まず、【A】のような大きなマスクで大まかなながれを作り、いくつかのマスクで後から点灯するようなマスクアニメーションをつける。次に、画面が点灯する瞬間にフレアを入れるため、【A】のデータをコピーして発光用マスク【B】を作成し、そのルミナンスをソースとしてライトエフェクトを適用【C】。そうして完成したカットが【D】だ。「発光の強さや色変更、タイミングなど細かい要望もMayaに戻らずコンポジットですぐ対応できたので、先の作業の効率を考え作業する大事さが認識できました」(島田氏)

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    近日公開予定!