>   >  『#コンパス』短篇アニメ制作部:初めて描かれる「ゲームシステム内部」を舞台に展開するアクションムービー/#02『Voidoll irregular』by トムス・ジーニーズ
初めて描かれる「ゲームシステム内部」を舞台に展開するアクションムービー/#02『Voidoll irregular』by トムス・ジーニーズ

初めて描かれる「ゲームシステム内部」を舞台に展開するアクションムービー/#02『Voidoll irregular』by トムス・ジーニーズ

<4>エフェクト

『#コンパス』のゲームではアニメ調のエフェクトが使用されているため、本作でもそのルックを踏襲し、爆発やVoidollが発するビームなど作画素材を活用した2Dエフェクトが随所にみられる。2Dエフェクト作画はrapparu氏が担当、コンポジットはトムス・ジーニーズの島田洋平氏を中心にコンポジットチームによって行われた。「いただいた作画素材にエフェクトを足し、さらに豪華にしていく作業に力を入れました」(島田氏)。


  • 島田洋平/Yohei Shimada
    トムス・ジーニーズ

●原作のルックに合わせた2Dエフェクト


  • 2Dエフェクトを得意とするアニメーターrapparu氏による作画エフェクト。まず、アニメーターが3D上でアタリのエフェクトを作成し(左上)、そのアニメーションを下絵にrapparu氏がエフェクトを作画し、色分けされた2D作画連番で納品(右上)、そのデータにグローなどのエフェクトをかけて仕上げる(左下)


  • 左上:社内アニメーターによるアタリのエフェクト、右上:アタリを基にrapparu氏が作画したエフェクト、左下:完成画像

●キューブが舞うエフェクト


  • 本作の舞台はデジタル世界であるため、ゲーム内で衝撃が起こったときなどには細かいキューブが舞うという表現が採り入れられている。キューブの動きはボクセルを使って表現している。左上:Maya作業画面、右上:ベース素材、左下:最終コンポジット。「キューブはパーティクルで設定した後、大きく映らないのでキャッシュを取らず、プレイブラストで出力したものをコンポジット時に加工しています」(島田氏)

<5>コンポジット

コンポジット作業において、Voidollの素材分けとしてはカラー、シャドウ、コンターなど通常のセル調表現の素材が用意されたが、スペキュラのみ3種類出し、用途に応じて使うという方法が採られた。スペキュラは実写的なものとアニメ的なハッキリした形のものを織り交ぜている。

また、クライマックスの、ハッキングされたバトルステージが次々に正常に戻っていくシーンでは、各端末の画面の色が侵食状態の紫から通常の赤・青に変化していくわけだが、色の差異が大きくないため、そのままでは演出が目立たなくなってしまう。そこでコンポジットの際に一度発光させることで色の変化をしっかりと見せるよう工夫された。

「『#コンパス』の短篇プロジェクトでは、アニマティクスからアニメーション、レンダリング、エフェクト、コンポジットまでを1人のスタッフが担当することが多かったため、アニマティクスの段階から、後工程で自分がコンポジットしやすいように作業をしていました」と島田氏。監督との意向のすり合わせにおいて何度かリテイクがあると予感したため、リテイクがあってもMayaに戻らず編集できるようなかたちでコンポジットを構築したという。

●Voidollの各素材


  • カラー

  • コンター


  • ラインマスク

  • シャドウ

  • スペキュラA

  • スペキュラB

  • スペキュラC

  • 全て合成した完成画像

Voidollの各部位によってリフレクションの設定を変え、カットによって使い分けることで質感のちがいを表現している。「ライン出力で途切れたり出にくかったりする部分にはカラーマスクを出し、コンポジットでマスクのアルファを使ってアウトラインを出力しています。カットによってラインの設定を細かく調整したり、出し直したりする作業が削減できました。最終ルックは3DルックとVoidollの2Dイラストの中間あたりを意識して制作しています」(島田氏)

●背後の端末の色が紫から赤や青に変化していくカット


  • 【A】

  • 【B】

  • 【C】

  • 【D】

ハッキングされた数多のバトルステージが次々に正常に戻るシーンにおいて、紫だった各端末の画面の色が、中央から広がるように赤もしくは青に変化していく。まず、【A】のような大きなマスクで大まかなながれを作り、いくつかのマスクで後から点灯するようなマスクアニメーションをつける。次に、画面が点灯する瞬間にフレアを入れるため、【A】のデータをコピーして発光用マスク【B】を作成し、そのルミナンスをソースとしてライトエフェクトを適用【C】。そうして完成したカットが【D】だ。「発光の強さや色変更、タイミングなど細かい要望もMayaに戻らずコンポジットですぐ対応できたので、先の作業の効率を考え作業する大事さが認識できました」(島田氏)

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