制作:Rabie Rahou
Web: http://www.digitalrabie.com/

ストーリーに基づいた空想の世界を描くことは大きな挑戦です。Rabie Rahou氏が、そのカギとなるテクニックを9つのステップに分けて、解き明かします

空き時間に「Tosorの世界(World of Tosor)」という空想の世界を想像してみました。この未来のパラレルワールドには、不死の支配者Tosorが存在します。Tosorは思慮深く公正で世界の平和と調和を保っています。

ここでは、このシリーズの最初の作品である『Tosorの世界(World of Tosor)』の制作について説明しましょう、どのように描いたかの解説、照明や陰影に使用したテクニック、シーンを引き立たせるフレーミングや構図についても触れます。

ステップ1:フレーミングと構図

まず、グレースケールで構図を描きます。構図は、これからの作業の中で基礎となる手順です。高く評価される作品になるか、あるいは、ハードドライブの中に埋もれたスケッチになるかといった将来性までも決定づけます。適切な構図を作るためには「前景」「被写体」「背景」の要素を適切に並べる必要があります。奥行きを出すため、鑑賞者に近い要素は暗めに、遠い要素は明るめにします。

最小限のディテールでストーリーを伝えるため、最も重要な要素のみ描く

ステップ2:ライティング/照明

構図を上手く設定できたので、モデルに陰影をつけていきます。さまざまな方向から、さまざまなライティングを試しましょう。キャラクターライティングが、残りのシーンライティングの描き方を決定づけます。数年間描いていれば、どのような照明が最も良いかという直感的な感覚が磨かれていくことでしょう。今回のイメージでは、キーライトが背中で反射すると神秘的な印象となり、顔を照らさないことで謎めいた感じを出せると私は考えました。

主人公とストーリーにとって、最適な設定のために、さまざまな照明を試す

ステップ3:色付け

やり過ぎないようにしましょう。いろいろ試したくなるのはわかりますが、まず、赤/イエローのスペクトルで始めます。主人公を赤色に決めました。この選択がすべてに影響します。図の左の画像から分かるように、最初はそれほどワクワクするような結果は得られませんでした。しかし、右の画像のように、コントラストが出る色で動物に毛皮を付けたところ、私は手応えを感じ始めました。

色の選択が、その後のすべての作業に影響する

ステップ4:髪の毛/毛皮を描く

基本的に、毛の作成とブラッシングという2つの手順があります。図Aでは、[Dune grass(砂漠の草)]ブラシで、さまざまな方向から毛を描いていきます。その後に[平筆(アングル)]ブラシと[指先ツール]で、ブラッシングとスタイリングを施しました。図Bでは、ブラッシングして環境光を追加、ふわふわに見えるようにしました。図Cでは、滑らかな毛がほしかったので、コントラストを追加、細い毛を削除しました。図Dでは、カールした効果を試したかったので、カールした/ぐるぐる回る動きでブラッシングしました。滑らかというよりふわふわの毛に見せたかったので、ライティングを加えました。図Eでは、毛がもっと厚く高密度になっています。今回の動物 には、このような毛皮がぴったりです。

本物らしい髪の毛/毛皮を作成するには、ライティングとブラッシングがカギとなる

ステップ5:背景とその解釈を描く

背景に取り掛かり、山と地表の基本的な形・色を描きます。イメージの解釈については、まだ考えていませんでした。2つのイメージを組み合わせながら、ストーリーに着手。渓谷をファンタジー風にしたいと思いました。Tosorは、丘から地表を眺めながら、深く息を吸い込んだはずです。したがって、景色には調和が醸し出されている必要があります。

ここでは、大気のライティングがカギとなります。キャラクターは、後方(奥)の下から照らされているので、夕日のムードに設定しました。

複雑な環境をシミュレートするため、山を部分的に照らし、また、他の山々が影を落としているような感覚を作り出しました。色は紫のスペクトルの範囲内ですが、メインの日光は黄色です。私は自分のライブラリから雲を追加して、すべてを微調整しました。

背景はストーリーを補完して、英雄にふさわしい時間と空間を設定します

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ステップ6:ディテールをつける

ついに、ここまでやって来ました。この大きな動物に鎧を描き、木には陰影をつけました。また、木の上には小さな動物を配置しました。

ここで、CGを何も知らない人に作品を見せる必要があります。個人的に、このような人を「シロウト」と呼んでいます。彼らは「本物のフィードバック」をくれる貴重な存在です。

私の友人は、木の上の小さな動物のことを鋭く批評、大きな野獣についても角が変だと指摘しました。彼は小さな動物を認識できなかったことが不満だったようです。また、大きな野獣の角も形が奇妙だと言いました。ここでは、友人にその理由をこれ以上説明するのではなく、作品の一部を切り捨てる必要があります。

ディテールを加えるプロセスには多くの選択肢がありますが、そのすべてが良いとは限りません

ステップ7:角

2つのバージョンの角をペイントしました。Aは野生の羊の角のように見え、この動物にとても似合っています。Bは水牛のような角です。ただし、物事が異なる様相を見せる「Tosorの世界観」に合う新たな形態を表現したいと思いました。

少し考えた後、特に理由もなく、モデルBを選びました。アーティストとしての直感を信じたわけです。

2つのバージョンを描けば、正しい選択をするのに役立ちます

ステップ8:ヤツガシラ(鳥)

リーフ(葉)ブラシで、背景の木に葉を加えました。deviantart.com などのウェブサイトで、さまざまなブラシが見つかります。また、自分自身でブラシを作っても良いでしょう。

Tosorのプロポーションを調整して、頭と帽子を適切な形に描き直しました。角も適切に描き、陰影とテクスチャも調整しました。

前景の木を見るとわかりますが、謎めいた鳥「ヤツガシラ」を描きました。長い羽を持ち、素敵な形(特に頭)をしています。そして、小さいので鑑賞者の邪魔にもなりません。主人公Tosorのストーリーを妨げることなく、イメージと全ストーリーを豊かなものにしてくれます。

小さな動物をストーリーに加えるのは簡単ではありません。本筋への混乱と妨げにならないようにしましょう

ステップ9:Tosor

最後の手順では、すべての空間を異なる要素で埋め、シーンの照明と陰影を適切なものにしながら、作品を完璧に近づけていきます。たとえば、木の上のキノコは、右側に光が当たっており、サブサーフェス・スキャタリング(表面下散乱)を表現する必要があります。私は常日頃、3Dライター(照明担当)として、このような作業をしているため、光の方向を確認して、自然に反応します。また、表面にどう陰影を付けるべきかも分かっています。皆さんにも3Dで練習することをお勧めします。3Dソフトで作業をするだけで、ものの見方に対する反射神経が少なからず養われてくることでしょう。

完成イメージ

重要なアドバイス:フィボナッチ数列

作品における重要な目標は「見る人に安定感を与え、迷わせることなくイメージの最も重要なポイントに視線を送らせること」です。したがって、今回のポイントである主人公を基点に、フィボナッチ数列の黄金螺旋を使いました。私にとって、これは欠くことのできない機能です!

フィボナッチ数列の黄金螺旋

オリジナルURL(英語):
http://www.3dtotal.com/index_tutorial_detailed.php?id=1916

翻訳:STUDIO LIZZ(Nao) 編集:3DTotal.jp



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