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NVIDIA Quadro VCAは、NVIDIAがほこるハイエンドGPU8基を搭載した、高速・高品質なGPUレンダリングマシンだ。 本機のGPUは、Quadro M6000がベースとなっており、1基あたり12GBのGPUメモリ、24,576のNVIDIA CUDAコアを搭載している。 そのため、非常に高精細な表示、複雑な物理シミュレーションに対応できるのに加え、MDLマテリアル(NVIDIA マテリアル定義言語)NVIDIA Irayを併用することで、高速・高品質な物理ベースレンダリングも可能となる。

これを高く評価した博報堂プロダクツ企画制作事業本部ビジュアルクリエイティブスタジオ VCS 制作チームは、Quadro VCAを2015年3月に導入した。 本機の性能にいち早く注目し、導入の牽引役となったCGプロデューサーの白澤圭司氏に、その真価を語っていただいた。


NVIDIA Quadro VCAには、NVIDIAがほこるハイエンドGPUが8基搭載されている。左上に並ぶ緑色のカード8基がGPUだ。


  

シボに代表される、複雑で繊細なディテールをCGでリアルに再現したい


  • VCS 制作チームは3DCGによる静止画制作を得意としており、自動車を始めとする工業製品のカタログ、Web、リーフレット用のCGなどを中心に手がけている。

    「最近の自動車広告は、クライアントである自動車メーカ各社から支給いただいた自動車のCADデータをもとに制作しています。そのため、実物の自動車と寸分たがわぬ形をCGで再現できます。一方で、エクステリアの塗装、インテリアのシボなどは、素材サンプルを観察して反射率などのパラメータを調整したり、写真からテクスチャを生成することで再現してきました」と白澤氏は解説する。

シボとは、皮革製品などの表面に見られるシワ模様のことで、自動車の場合には、ドア内装パネル(トリム)、ダッシュボード、ステアリングハンドルなどの随所にシボ加工、すなわち細かい凹凸加工が施されている。自動車のインテリアには、ポリプロピレン、ポリウレタンなどの合成樹脂素材が多用される。この表面にシボを加えると、高級感が出せるのに加え、反射を防止し、傷を目立ちにくくする効果もある。

「最近はどの自動車メーカも、シボのデザインに並々ならぬこだわりをもっています。ですが、それをCGで再現することは非常に難しく、クライアントに満足いただけない状況が続いてきました」。たとえ自動車の完成前であっても、CGを使えば多彩な背景、ライティング、カメラアングルの画像を制作できる。そのため、最近の自動車カタログはCGの使用頻度が高くなっている。

ただし、カタログのCG画像と、実際の自動車の見た目に大きなちがいがあれば、自動車メーカの信頼性をゆるがしかねない事態へと発展してしまう。「シボに代表される、複雑で繊細なディテールをいかにCGでリアルに再現するかは、どれほど追求しても終わりの見えない課題です」。


上のようにシボの素材サンプルを写真撮影すると、光源からの光に対して直交している面は凹凸の深さに関係なく明るくなってしまう。シボの凹凸の深さ情報を写真撮影で取得することは難しいため、写真からバンプマップやディスプレイスメントマップを作成しても、シボを正確に再現することはできない。


正確な計測値を根拠とした、物理ベースレンダリングにこそ勝機がある

長年にわたりCGによるリアルな自動車表現を追求し続けてきた白澤氏は、あるときQuadro VCAによる物理ベースレンダリングという解決策に出会い、大きな可能性を感じたとふり返る。「素材サンプルを写真撮影してテクスチャをつくったり、アーティストの主観を頼りにパラメータを調整したりといった手法には限界を感じていました。従来のアプローチでは、自動車メーカ各社が納得する" リアル" にはたどりつけない。正確な計測値を根拠とした、物理ベースレンダリングにこそ勝機がある。Quadro VCAの性能を知ったとき、そう確信したのです」。

Quadro VCA と Iray を導入した白澤氏たちのチームは、手始めにシボの正確な計測値の取得に挑戦した。「合成樹脂の光沢感はBRDF 計測によって、シボの凹凸の深さは顕微鏡を使った計測によって割り出しました。得られた膨大な計測値をMDLマテリアルの文法に変換するインハウスのソフトウェアを開発し、変換結果をもとにV-RayやIrayでレンダリングするワークフローを構築したのです」。このプロセスを経てつくられた物理ベースレンダリングによるシボは、従来とは比較にならないリアルなものだった。

なお、取得できる計測値の面積は最大でも20cm×10cm程度なので、広範囲のシボをレンダリングする際には単純なタイリングをほどこすのではなく、アルゴリズムによって近似の凹凸模様を自動生成しているという。「物理ベースレンダリングの導入以前、我々のチームが制作した画像を"CGっぽい"と評していた関係者たちに新しい画像を見ていただいたら、" 写真ですか? "というコメントが返ってきました。本当に嬉しかったですし、大きな自信につながりましたね」。



白澤氏たちが制作した自動車のインテリア画像(左)と、パネルのシボ部分の拡大画像(右)。拡大画像の左側のシボは写真による従来の方法で、右側のシボは正確な計測値を根拠とする方法でつくられている。模様や陰影の表現力のちがいを、じっくり比較してほしい。なお、左は横3,000 ピクセル、右は横2,000 ピクセルでレンダリングされているが、Quadro VCAを用いればどちらも数秒で完了する。


現在、白澤氏たちのチームには7〜8人のアーティストが所属しており、各々が異なるクライアントや案件を抱えている。「短納期の静止画の仕事が多いので、全員が全工程に対応できるゼネラリストです。Quadro VCA の導入前は、Mayaで制作したデータをV-Rayでレンダリングするというワークフローでした。Quadro VCAはV-Rayにも対応しているので、これまで蓄積してきたデータやノウハウも引き続き使える点は心強いです」。今後は案件によってV-RayとIrayを使い分け、より効率の良いワークフローを追求したいという。

「緊急性の高い案件を抱えた人や、重いデータをレンダリングしたい人が優先的にQuadroVCA とIrayを使い、それ以外の人は従来のレンダリングサーバを使っています。Quadro VCA、MDLマテリアル、Iray は、すべてNVIDIAが最新のテクノロジーを投じて開発したものなので、合わせて使うことで高いパフォーマンスが発揮されるように感じます。ライティングやカメラアングルの試行錯誤を、レスポンス良く、納得いくまで繰り返せることは大きなメリットですね。高品質・高解像度の画像を、高速でレンダリングできるようになったことで、我々のストレスは減り、表現力とクライアントの満足度は向上しました」。

なお、Quadro VCAの設置は代理店である株式会社アスクのエンジニアに依頼したものの、その後はトラブルもなく、社内のアーティストだけで管理しているという。「Quadro VCAのインターフェイスはすごく直感的で、我々だけで支障なく操作できます。何かあればアスクの方々がサポートしてくださいますし、専属のエンジニアの必要性は感じていません」。


Quadro VCAのインターフェイス。この画面を介して、各アーティストのローカルマシンからサーバルームのQuadro VCAにレンダリングのジョブを送信できる。「予約者がいなければ、Quadro VCAを独占してレンダリングすることも可能です」(白澤氏)。


GPUレンダリングという、多くのプロダクションにとって未知のシステムをいち早く取り入れ、着実に結果を出している博報堂プロダクツ。同社の高い機動力と柔軟な対応力はもちろん、Quadro VCAの性能にも驚きを感じる。フォトリアル表現を必要とするプロダクションにとって、今回紹介した事例は、非常に参考になるだろう。先日、NVIDIAはIray用プラグインであるIray for MAYA2016と、Iray for MAX2016を相次いで発表した。NVIDIA Irayは、光が物体に与える影響を正確にシミュレーションすることで、写真のようにリアルな画像を高速に生成できる物理ベースのレンダラーだ。ぜひ、NVIDIAの最新テクノロジーを自身のプロジェクトで体験してほしい。


製品情報

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株式会社アスク
TEL: 03-5215-5652
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http://www.ask-corp.jp/

EDIT_ 尾形美幸(CGWORLD)
PHOTO_ 弘田 充