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第3回:セット&プロップ

第3回:セット&プロップ

section 03 Props
ベテランに支えられながら物量とハイクオリティを両立

今回は、ハーロックをはじめとするキャラクターが手に持つ武器やスイッチからアルカディア号のような巨大戦艦まで、「ターンテーブルでチェックするもの全てが該当」という大きな枠組みの中で多彩なプロップが制作された。

ハーロック

© LEIJI MATSUMOTO / CAPTAIN HARLOCK Film Partners

Arnoldの導入によりほぼイチから作り直すことに

荒牧伸志監督自身が現役のメカニカルデザイナーということもあり、メカについてはひときわ厳しいチェックを受けながら制作が進められたというプロップ。「当初はRITAのアセットを流用しようという話をしていたのですが、実際に本番シーンに入れてみると、後から作ったアセットと比較して明らかに見劣りしてしまったため、ほぼ全てのモデルをイチから作り直しています」(中井氏)。また、セットとプロップの双方において苦労したのが、Arnoldレンダラへの対応だったという。「RITAではRenderManを採用していたため、それまで使用していたテクスチャやマテリアル設定を、ほぼイチから再調整することになりました」(花田義浩氏)。しかし、プロジェクトが進むにつれてArnoldの恩恵を実感するようになったとのこと。「質感をねらいどおり設定するのが楽になりました。特にシェーダに関しては、荒川くんの方であらかじめ精査した上でアーティストが調整できるパラメータを絞っておいてくれたので助かりました」(卷之内秀明氏)。「Arnoldはノードベースでパラメータを追加できるので、僕にとってもそうした調整がやりやすくなりました」(荒川氏)。そのほかにもArnoldの仕様に基づいて各種作業ルールの見直しが求められ、ネーミングコンベンション、不正ポリゴンの制限、ポリゴン数の制限などを盛り込んだ、チーム内で共有するテックバイブルを作り、情報の共有が図られた。「ヒューマンエラーを排除するために、最初にArnoldを前提としたパイプライン用のデータチェックツールを作り、それを徹底して使い続けました」(東 秀幸氏)。物量とクオリティの両立に加え、新ツールへの対応など様々な苦労があったというが、制作する上ではフリーランスとして参加したベテランアーティストの支えも大きかったという。「マットペインター林 隆之さんには質感表現について、そしてアルカディア号などを担当された帆足剛彦さんにはスケール感を表現するといった部分で多くのアドバイスをしていただきました」(松岡昌志氏)。

ハーロック ハーロック ハーロック ハーロック

アルカディア号の制作➀
アルカディア号の完成モデル。メカモデラーとして幅広く活躍している帆足剛彦氏(studio picapixels)が制作をリードした
© LEIJI MATSUMOTO / CAPTAIN HARLOCK Film Partners

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アルカディア号の制作➁
アルカディア号のテクスチャ(いずれも8,192×8,192ピクセル)。上から、ディフューズ、スペキュラ、スペキュラ調整用のラフネス。アルカディア号のテクスチャは貼る面積や用途に応じて1~8Kまで様々なサイズが作成された
© LEIJI MATSUMOTO / CAPTAIN HARLOCK Film Partners

ハーロック ハーロック ハーロック ハーロック

アルカディア号の制作➂
レンダリングした完成形
© LEIJI MATSUMOTO / CAPTAIN HARLOCK Film Partners

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