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多様なラインナップを有し、安定した性能をほこるデルのマシンは、多くのCG・映像プロダクションやゲーム会社で愛用されている。そんな同社が、ハイエンドなCG制作にも充分対応できるモバイルワークステーションを開発した。それが、モバイルワークステーション Dell Precision 7000シリーズ モデル型番7710(以降、Precision7710)だ。縦281.44mm(11.08インチ)×横417.04mm(16.42インチ)×厚み34.49mm(1.36インチ)の本機は、一見すると「ちょっと大きなノートパソコン」だが、ワークステーションの名を冠するに相応しいパワーをもっている。

そんなPrecision 7710を、月刊誌『CGWORLD』の連載「Houdini Cook Book」でお馴染みの秋元純一氏(トランジスタ・スタジオ/ディレクター)が徹底検証した。Houdini、Maya、After Effectsによる、CGならではの高負荷な処理に、デルの最新"ノートパソコン"がどこまで耐えられたのか、その驚きの結果をぜひ見届けてほしい。


モバイルでも充分に仕事ができる時代になった

CGWORLD(以下、CGW):秋元さんといえば"熟練のHoudini使い"というイメージが強いですが、トランジスタ・スタジオ内ではハードウェアやネットワークの管理もなさっているそうですね。今の社内でモバイルワークステーションを使う機会はありますか?

秋元純一(以後、秋元):講演や地方出張の際にはMacBookを持参しますが、スライドの表示やデータ確認に使う程度です。ワークステーションとしてガッツリ仕事で使えるようなモバイルマシンは所有していません。そもそも、モバイルでまともにCG制作ができるとは思っていませんでした。

CGW:今回は、高負荷のCG制作を想定してカスタマイズされたPrecision 7710と、普段使われているタワー型マシンの比較をしていただいたわけですが、モバイルに対する印象は変わりましたか?スペックだけを比べると(以下の表参照)、片方がモバイルだとは思えないですね。

  • Precision 7710
    (モバイルワークステーション)
  • 秋元氏のマシン
    (国内BTOメーカー製のタワー型)
  • CPU
  • インテル Xeon E3-1535M
  • インテル Core i7-3930K
  • GPU
  • Nvidia Quadro M4000M
  • Nvidia Quadro 4000
  • メモリ
  • 64GB
  • 32GB

秋元:私のマシンは購入してから2年以上経っていることもあって、Precision 7710の方が高性能ですね。もの凄いモンスターマシンだと思います。その割に、発熱や動作音は十分に大人しい。どうしてもタワー型よりコストは割高になりますが、そこさえクリアできれば、モバイルでも充分に仕事ができる時代になったのだと確信しました。CGならではの高負荷な処理に耐えられるかにフォーカスを当て、両機に同様の物理シミュレーションやレンダリングをさせたところ、Precision 7710の実力を見せつけられる結果となりました。

CGW:「正直、ここまでのスペックは必要ない」というレベルのモンスターマシンということでしょうか?

秋元:当社の場合、CPUはインテル Core i7シリーズで4コア、メモリは16GB以上というのが現在の最低基準で、個々人の作業内容に応じて、この基準から増設しています。例えば新人のアニメーターが使うなら、完全なオーバースペックですね。一方で、正確性と安定性を要求される医療分野等のシミュレーション映像を作るのであれば、非常に心強いマシンだといえます。Precision 7710はほとんどの構成を柔軟にカスタマイズでき、キーボードを英語配列にしたり、ディスプレイを4Kに変えることだって可能です。コストパフォーマンスをにらみながら、用途と予算に応じた買い物ができるのは嬉しいですね。

オフィス

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リアルタイム&インタラクティブ案件との相性は抜群


CGW:良いことずくめのマシンのように聞こえますが、あえて不満をあげるとしたら何がありますか?

秋元:重いです(苦笑)。

CGW:最小重量でも3.42kgありますからね......。

秋元:電源アダプターも大きいので、持ち運ぶには少し気合が必要です。カフェに持ちこんで気軽に作業するといった用途には不向きでしょう。けれど、会社で数台所有していれば、色々な用途に使えると思います。例えば講演会場にもちこめば、Houdiniを使ったシミュレーションを、リアルタイムにデモンストレーションしてみせることができます。クライアントのオフィスにもちこんで、その場でパラメーターなどを調整してみせて、意志確認をすることも可能です。CMなどのスピードを要する案件では、特に効果を発揮するでしょう。

CGW:スタジオの外に制作環境を持ち出せるようになることで、仕事の柔軟性や効率が高まるというわけですね。

秋元:家庭の事情でどうしても家にいなければならない場合に貸し出す、野外ロケの現場で仮コンポジットをしてみる等々、色々な使い方が考えられます。フリーランスの場合は、これをメインマシンにしても良いでしょう。ディスプレイを閉じた状態で画面出力すれば、圧倒的に薄型のワークステーションとして使えます(最大5台のフルHDディスプレイ、または2台の4Kディスプレイに出力可能)。場所を取らないうえ、自宅とクライアント先を柔軟に行き来できるので、仕事の幅が広がりますよ。

加えて、最近はUnreal Engineなどを使ったリアルタイムの案件が増えているので、今回のようなGPUに重きを置いた構成のマシンは、さらに需要が高まるでしょう。リアルタイムレンダリングの使用が日常的になれば、レンダリングサーバーをもたないフリーランスであっても、フォトリアルなCM案件などを受注しやすくなります。コンサート、イベント、医療現場など、インタラクティブ性が要求されるシチュエーションとの相性も抜群なので、さらに積極的な展開が可能です。そういう少し未来のCG制作の現場において、Precision7710のようなモバイルワークステーションは、かなりのアドバンテージを有すると思います。

以降で、秋元氏によるPrecision 7710徹底検証の詳細を紹介する。

徹底検証1:
インテル Xeon E3-1535MとNvidia Quadro M4000Mの強力タッグがもたらす高速処理

TEXT_秋元純一(トランジスタ・スタジオ)

先に紹介したように、著者が普段使用しているマシンのGPUはNvidia Quadro 4000だ。一方、Precision 7710はNvidia Quadro M4000Mを搭載しており、その性能は申し分ない。むしろモバイル用のGPUにも関わらず、その性能は非モバイル用GPUの上をいく。実際にHoudini上でジオメトリを大量にコピーしてみたところ、なんの問題もなく表示できた。約5,000万ポリゴンのジオメトリを表示しても、重くなった印象はほとんどない。

著者が普段行う作業のなかでも、特に負荷の高い物理シミュレーションやレンダリングをPrecision 7710と自分のマシンで実行し、両機の比較検証を行った。以降で、その結果を紹介する。

Rigid Body Dynamicsシミュレーション
(27,000 Boxes in Packed Object)


Pyroシミュレーション
(Resolution:300*360*300/32,400,000Voxels)



FLIP Fluidシミュレーション
(27,000 Boxes in Packed Object)




GIシーンレンダリング(Houdini 15.0.313)
(Mantra PBR)



GIシーンレンダリング(Maya 2015)
(V-Ray 3.0.01)



レンダリング(After Effects)
(4K Turbulence Noise)


最も驚愕したのは、OpenCL使用時のPyroシミュレーションの結果だ。両機のGPUの力の差を見せつけられた瞬間であった。著者のマシンはOpenCLを多用するセッティングになっていないとはいえ、同じシミュレーション設定で実行した結果が、VRAMエラーによる途中棄権というのは情けない......。Precision 7710の実力は、もはやモバイルワークステーションの領域を超えている。

CPUメインで実行されるHoudiniのMantra(デフォルトのレンダラ)や、MayaのV-Rayによるレンダリングは、著者のマシンでもほぼ遜色のない結果が出た。著者のマシンのCPU(インテル Core i7-3930K)の方がクロック数が高く、コア数も多いとはいえ、なかなかに良い勝負をしている。僅差だがPrecision 7710の方が速い場合もあり、CPU(インテル Xeon E3-1535M)の圧倒的な安定感とセッティングのシビアさが両機の差を埋めているのだと納得するほかない。また、Precision 7710搭載のSSDや、両機のメモリの差も影響していると思われる。

この検証により、Precision 7710はCGならではの高負荷な処理に充分耐えられるという、紛れもない事実が明らかになった。これまで、著者が作業で使うマシンの選択肢に"ノートパソコン"は含まれていなかったのだが、その考えは簡単に覆されてしまった。

徹底検証2:
感動すら覚える、非常にスムーズな使用感

次に、『CGWORLD』の連載「Houdini Cook Book」などで著者が多用する作業フローを、Precision 7710で実行してみた。まずはHoudiniでCGを制作し、続いてAfter Effectsでコンポジットを行うという流れだ。

▲【左】HoudiniによるCG制作/【右】After Effectsによるコンポジット

毎月の連載で筆者が一番頭を悩ませるのは、原稿執筆でもなく、CGを組み上げる作業でもなく、何をつくるかを考えることだ。毎回、考えをまとめるまでに多くの時間を使ってしまうため、作業に割ける時間は限られているのが実情だ。つまり、限界までスピーディーに効率良くCG制作を進めたいというのが本音だ。

今回の検証では、Houdini上で大量のカーブを自動生成する仕組みをつくった。この作業にはシミュレーションが必須だったのに加え、そのキャッシュの出力も必要だった。やや複雑なフローではあったが、なんの問題も違和感も起こらず、作業は非常にスムーズに進行した。強いていうなら、今回検証用に使ったマシンのキーボードは日本語配列だったため、英語配列を愛用している筆者はやや戸惑ったが、実際の発注時には英語配列のキーボードにカスタマイズできるという。CGのソフトウェアは海外製が多く、UNIXを起源とするものも多数あるため、英語配列を愛用する人は筆者以外にも数多くいる。デルの細やかな気遣いは非常にありがたいと感じる。

HoudiniでのCG制作を終え、After Effectsでのコンポジットに移ると、さらなる感動が待っていた。SSDの恩恵である。今回のようなフルHDのシーケンスをInput/Outputする際に生じる待機時間は、急いでいる時ほどストレスになる。しかし本機にはSSDが搭載されていたため、シーケンスのInput/Outputが非常にスムーズで、ストレスはかなり軽減された。欲をいえば、より大きな画面でコンポジットしたいところだったが、HDMIやmini Display Portなどから画面出力すれば回避可能な問題である。

筆者による検証報告は以上である。
今回の検証を通して、モバイルワークステーションの目覚ましい進化を肌身で感じることができたのは収穫だった。Precision 7710は、未来のCG制作環境を一足先に体感できる、非常に魅力的なマシンだといえよう。

REVIEW_秋元純一(トランジスタ・スタジオ)
INTERVIEW&EDIT_尾形美幸(CGWORLD)
PHOTO_蟹 由香

●お問い合わせ
デル株式会社
TEL:044-542-4047
URL:Dell.jp/Precision