記事の目次

    こんにちは、パーチ の長尾です。15年ほど前からカラマネ(カラーマネジメントシステム)に取り組んでいた経験を生かし、3DCG 制作でも効率化を図ろうと決めたのが7年ほど前(2004年頃)だったと思います。しかし、いざ始めてみると従来のやり方では解決できない問題がいくつも出てきました。その解決策の全てをこの連載で伝えていくわけですが、今回は"最大の問題"、そうです 3DCG ソフトウェア上でのカラマネ について解説しますね。「最大の問題」と書きましたが、どうぞご安心を。いつも通り、「一番大事なポイントを絞り込んで、難しいことをわかりやすく」 してあるので、最後までおつきあいください。

     

    内蔵キャリブレーションセンサー(調整の自動化)

    さて今回は、

    1:"現実世界"と"3DCG のバーチャル世界"の間で色情報をやりとりする考え方

    2:Autodesk 3ds Max のカラマネ設定

    ......以上2点についてお伝えしましょう。これに追加して、前回伝えきれなかった「最新カラマネモニタの便利な機能」に関する解説から始めたいと思います。

    カラーマネジメントに対応するモニタの代表は EIZO ColorEdgeシリーズ ですが、最近発売された機種には 内蔵キャリブレーションセンサー が搭載されました。前回(第4回:カラーマネジメントに適したモニタの秘密) お話ししたように、カラマネには 「測色機を使ったキャリブレーション」 が必要になります。そのため測色機を別途用意しますが、それが本体に内蔵されると、測定の簡易化と自動化が可能になるのです。
    また スケジュール機能 を利用すれば、夜間に自動でキャリブレーションするといったことができるので、管理者の負担は格段に減るでしょう。私も定期的(月に1回程度)に全てのモニタを調整していますが、少し間が開いてしまったり、忙しい時は面倒だったりするので、この作業から解放されるのはありがたいですね。この 内蔵キャリブレーションセンサー について、実際の動作が判る動画があるので確認してみてください。


    ColorEdge CG275Wの内蔵キャリブレーションセンサーの動作を解説したムービー
     

    "現実世界"と"3DCG のバーチャル世界"の間で色情報をやりとりする

    まず、通常のデジタルデータの色に関する取り扱いがどのように行われているのか、そのポイントを見ていきましょう。大きく3つに分けて考えると分かりやすいと思います。

    STEP 1.現実世界から情報を得る"デジタイズ"
    →具体的には、デジカメによる撮影や、スキャナによるスキャンで、デジタルデータ化します。普段意識することはありませんがこの時、自動的に 逆ガンマ色補正(カラーキャリブレーション) がかかります。話を分かりやすくするために、ここでは「逆ガンマ」だけを考えればOKです。

    STEP 2.コンピュータ内での作業
    →この時にはガンマ等は変更されません。

    STEP 3.モニタ出力時
    →この時に、ガンマ がかかります

    この3つの工程の前後には 現実世界 があって、私たちの目は現実世界における光の物理的現象を見ています。撮影やスキャンする物を私たちの目が見て、モニタが表示する画像を私たちの目が見ているわけですね。

    現実世界から情報を得るデジタイズ(デジタルデータ化)のながれ

    現実世界から情報を得るデジタイズ(デジタルデータ化)のながれ
     

    では、コンピュータ内での作業 に 3DCG ソフトを組み入れてみましょう。するとおかしな事が起こります。CG ソフトでは 「現実世界のシミュレート」 が行われているわけですから、ガンマは存在しません。あくまで現実世界の物理現象を再現しているだけです。レンダリング画像は、ちょうどデジカメと同様に現実世界( CG のバーチャル世界)の一部を切り出しているのと同じ行為です。なので 逆ガンマ をかける必要があります。そうしないとモニタ出力時にガンマがかかり、色が変わってしまいます。それとテクスチャ画像の入力にも注意が必要です。既に逆ガンマがかかっている画像を読み込んでいるので、色が変わってしまいます。入力時にはモニタと同じように ガンマ をかけて元に戻してあげる必要がありますね。
    再確認してみましょう。3DCG ソフトの工程現実世界 と置き換えてみてください。すると、テクスチャ画像などの入力は モニタ出力時 と同じ、レンダリング画像の書き出しは デジタイズ と同じ、だということが分かります。つまり下図のように 「色に関するデータの取り扱いの2重化」 が起こっているのです! これで、入出力時にガンマをかける理由が分かるようになりました。

    3DCG ソフトを介したデジタイズのながれ

    3DCG ソフトを介したデジタイズのながれ。CG ソフトは現実世界をシミュレートしているため、色に関するデータは入力時と出力時の2度にわたり(逆)ガンマ補正がかけられる
     

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    Autodesk 3ds Max のカラマネ設定

    では早くからガンマ設定機能が搭載されていた、Autodesk 3ds Max(以下、3ds Max ) の設定から見ていきましょう。3ds Max は色を決定する3要素のうち「ガンマ」のみ設定が可能です(色の3要素については 「第2回:カラーマネジメントの色基準〜カラープロファイル」 で解説しましたね)。まずは 3ds Max を起ち上げ、[メニューバー→レンダリング→ガンマ/LUT 設定] を開いてください。そして、下図のように4カ所の設定を行います。

    Autodesk 3ds Max ファイルメニュー

    3ds Max を起動させ、メニューバー[メニューバー→レンダリング→ガンマ/LUT 設定]を実行

    Autodesk 3ds Max:[ガンマとLUT]UI

    基本設定[ガンマとLUT]パラメータにて、下記4項目を設定;
    <1> ガンマ設定機能が ON になります
    <2> カラーセレクタとマテリアルエディタの色にもガンマがかかります
    <3> ほとんどの機器は 2.2 なのでこのままで OK。ただし、別のワークフローで異なるガンマ値(1.8 など)を利用している場合はそちらに合わせます
    <4> テクスチャを入力する際や、レンダリングファイルを書き出す際に利用する値です。ほぼ全ての入出力機器が2.2なのでこのままで OK です
     

    色はモニタの調整と一致する

    3ds Max ではガンマしか設定できないため、残り2つの要素、「RGB 値」「ホワイトポイント・ブラックポイント」 が未設定です。このままでは正確な色管理ができませんね。ですが、3ds Max には他に設定するメニューがありませんので、別の方法で解決するしかありません。ここがカラマネ理解の大事なポイントの1つです。Adobe Photoshop などのカラーマネジメント機能を搭載したソフトの場合は、設定したカラープロファイル等の色をシミュレートしています。一方、カラマネ非対応のソフトは何もシミュレートをしていません。つまり、"RGBの値をそのまま出力している" というわけです。では、実際にはどんな色に見えているかというと、シミュレーション等の変更がなくそのまま出てくるわけですから モニタの特性通りに発色 することになります。「第3回」記事で皆さんの仕事にあったカラープロファイルを選んでください、とお願いしましたが、そこで決定したプロファイルになるようにモニタを調整してください。そして 3ds Max のガンマ設定を行えば、そのプロファイルで色を確認するカラマネ環境のできあがりです!

    カラマネ対応/非対応ソフトウェアにおける色調整の概念図

    3ds 3ds Max をはじめとするカラマネ機能非対応のソフトウェアでは、モニタ側で最終的な色調整を行う

    HDR画像の入力

    次に、HDR/High Dynamic Range 画像 の扱いについて考えてみましょう。ガンマ設定のところ([ガンマと LUT ])で、ビットマップファイルの設定を行いました。ほとんどの入力機器は 2.2 の逆ガンマをかけていますが、HDR 画像はガンマをかけて制作されていません。そのため、HDR 画像を取り込む際には "ガンマ1.0" で取り込んでください。環境をスキャンしてライティング素材とするためのものですから、ガンマは不要なんですね。

    Autodesk 3ds Max:[ガンマ→イメージ固有のガンマを使用]

    [ガンマ→イメージ固有のガンマを使用]を選ぶと自動でガンマ 1.0 になる。または、[ガンマ→無効にする]を選んだ上でガンマ値を 1.0 に指定しても同様の結果が得られる

    カラーセレクタのRGB値にもガンマが適用される

    ガンマ設定を行なったことで、カラーセレクタの RGB 値設定に変化が起こります。例えば、0.5 はちょうど中間のグレーでしたが、ガンマ設定後は 0.22 になります。従来の値や、他のアプリケーションからの値を利用する際には、Excel 等の表計算ソフトで関数を利用するといいかもしれません。その場合、「POWER」 がガンマ値計算に適した関数です。なお、[カラーセレクタに影響]のチェックを外すと、カラーセレクタで選んだ色と、作業画面やレンダリング結果が異なってしまうので外さないようにしましょう。

    Autodesk 3ds Max:ガンマを設定する前と後では、同じ色のRGB値が変わってくる

    ガンマを設定する前と後では、同じ色のRGB値が変わってくる。また、[カラーとLUT]設定にある[カラーセレクタに影響]のチェックを外すと、カラーセレクタで選んだ色と、作業画面やレンダリング結果が異なってしまうので注意
     

    いかがでしたか? 次回は、Autodesk Maya や、Adobe Photoshop など、カラマネ対応ソフトウェアの場合について解説したいと思います。3ds Max との違いや、レンダリング画像を Photoshop で開いた際の設定方法など、次工程のポイントが理解できるのでご期待ください。

    TEXT_長尾健作(パーチ)

    ▼Profile


    長尾健作(ながおけんさく)
    広告写真制作会社(株)アマナにて、3DCG制作などの事業立ち上げを行なった後、(株)パーチ を設立。広告業界・製造メーカーに向けて、3DCGによる新しい広告制作手法の導入/制作サポートを手がける。各種セミナーでは、制作業務の効率化・コスト削減を実現するためのノウハウを提供。

    パーチのカラーマネージメントの導入をサポートするWebページ
    perch-colormanagement.jp/

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    この連載は、EIZO株式会社の協賛でお送りしています。

    ・EIZOがお届けする「カラーマネージメントに関する基礎知識」
    www.eizo.co.jp/eizolibrary/index4.html