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第6回:複雑なアニメーションの簡単なつくり方

第6回:複雑なアニメーションの簡単なつくり方

ダイナミックな攻撃アニメーションと軌跡エフェクト

1箇所に留まった、移動のない単純なアクションであれば楽に作成できますが、移動をともなうアニメーションの作成は大変です。こういう場合は[root]ボーンを一時的に移動させながらアニメーションを付けると、ある程度簡単に動きを作成できます。動きのつくり方を文章で説明するのは難しいので、以降では工程ごとに動画も使いながら解説していきます。


どんな動きをつくるときでも、全体の動きの雰囲気を把握しておくことが大切です。まずはデーモンの[root]ボーンのX軸だけを動かして、どの位のタイミングで、どの位置にいてほしいかを決めます【上図内A】。このとき[ゴースト化]の[キーフレーム]のチェックボックスを選択しておくと【上図内B】、前後の動きやタイミングを把握しながら調整できるので便利です。【上図】では、横の移動距離だけに注目し、[トランスレート]にキーを打っています。


横の動きを付け終えたら、今度はジャンプするタイミングで腰のボーンを移動させ、縦の動きも付けます。このとき、腰のボーンのX軸は動かさず、Y軸だけで高さを調整することが大切です【上図】。両方の下肢に[IKコンストレイント]を設定しているため、腰のボーンを上下させるだけで、ある程度ジャンプと着地を表現できます。


▲この段階では全体の雰囲気を把握することが大切なので、動きの正確さは求めません。[root]ボーンのX軸の動きと、腰のボーンのY軸の動きだけを付け、タイミングを掴むことに集中します


次に、ジャンプと、着地の際の反動を付けます。ここで重要なのは、体全体の弾みを付けつつ、デーモンの重さや、力の強さを表現することです。ジャンプの前の予備動作や、着地した後の体重の逃がし方も含め、納得できるまでつくり込みます。 この時点から、腰のボーンのX軸にも動きを付け、全体のバランスの調整も始めています【上図】。


▲前方に移動して、ジャンプして、攻撃して、着地するまでのアニメーション全体のタイミングは、この時点で決定させています


いよいよ体の細かい動きを付けていきます。基本的には腰→下肢→体幹(胸部)→頭部→上肢の順番で、ボーンひとつずつに動きを付けます。必ず見せたい「決めポーズ」などがある場合は、そのフレームでポーズをつくり、必要なボーン全てにキーを打ちます。この時点では体の動きだけを見たいので、羽は非表示にして作業しています【上図】。


▲歩き方、ジャンプする際の動作、腕の打ち下ろし方など、ゴリラの動きをイメージしながら作成しています


最後に羽と尻尾の動きを付けて終了です。羽ばたくタイミングや尻尾の揺れ方などは、物理法則を意識しながら設定することが重要です。羽は1枚のテクスチャでつくられていますが、全体の左右反転と、[IKコンストレイント]を設定したボーンの左右反転を組み合わせることで、表側と裏側が重なって見えるような表現が可能です【上図内A】。


▲羽と尻尾は事前にきちんとリグを組んでおいたので、複雑な動きに見える反面、アニメーション作成時の手間はそれほどかかっていません


アニメーションとしてはこのままでも十分ですが、攻撃の軌跡エフェクトを付けることで、ひとつ上の表現を目指します。本来ならば、手描きの連番素材を用意し、それを配置するのがセオリーですが、ある程度の表現は素材を追加することなく作成できます。 まずはエフェクトを付けたい部分のテクスチャを複製します。今回は左腕を振り下ろす際の軌跡エフェクトをつくりたいので、左腕のテクスチャを複製します。複製したテクスチャは、わかりやすいように横へ移動させます。[ツリー]ビューから左腕の[スロット]を選択し【上図内A】、[複製]ボタン【上図内B】を押して[スロット]を複製します。複製した[スロット]を[root]ボーンの直下に移動させます【上図内C】。


  • 次に、エフェクト素材として使いやすいようにメッシュを調整していきます。複製したテクスチャのメッシュを一度リフレッシュし、新規にメッシュ編集作業をします。 通常、メッシュを切る際には形に沿うように頂点を配置しますが、エフェクトに使う場合は、メッシュがブロック状になるように頂点を配置すると便利です。今回は正方形を2列に並べるようにメッシュを編集しましたが、より複雑な形にしたい場合は3列~4列で配置するといいでしょう。【左図】では最初に四隅の頂点をとり、[生成]ボタンを連打することで、各頂点をいい感じに整列させています。


メッシュの編集を終えたら、[アニメ化モード]に移り、実際にエフェクトの形に変形させます。基本的に、始点【上図内A】→1番大きく変形する点【上図内B】→消える直前【上図内C】の3点を順番に作成すれば問題ありません。細かく形を調整し過ぎると、違和感のある変形になってしまい、制御が大変になるので、なるべくシンプルになるよう心がけます。 最後に[スロット]で色を調整したら完成です。


▲拳と同じタイミングでエフェクトを伸ばしてもいいですが、少しだけエフェクトが先行するように配置しておくと、形はズレますが、動かしたときの威力や速度感が増し、より迫力のある表現となります


今回は綺麗に羽が開閉するリグと、それを使ったダイナミックな攻撃アニメーションのつくり方、簡易的な軌跡エフェクトのつくり方を解説しました。羽のあるキャラクターをつくる機会はよくあるので、覚えておいて損はない手法だと思います。アニメーションのつくり方に関しては、今回は動きを付けるときの考え方を中心に解説してみました。これらの解説が何かしらのお役に立てれば嬉しく思います!



第7回の公開は、2020年2月を予定しております。

プロフィール

  • 柴田章成

    HERMIT WORKS所属のデザイナー・アニメーター・テクニカルディレクター。3度の飯よりリグが好き。
    Twitter:@AkinariShibata

  • HERMIT WORKS

    主にアートディレクターで構成されたデザイナー集団。ハイクオリティなデータ制作でゲーム開発をサポートしています。本記事やSpine、そのほかのツールに関するお問い合わせは、下記メールアドレスまでお送りください。
    shibata.hermitworks@gmail.com
    hermitworks.jp