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第5回:国内導入事例を徹底取材 Case2:エヌ・デザイン〜インハウスツールからShotgunへの移行〜

第5回:国内導入事例を徹底取材 Case2:エヌ・デザイン〜インハウスツールからShotgunへの移行〜

こんにちは。Shotgun認定販売パートナーのボーンデジタルでサポートを担当しているショットガン・トキトウです。前回はアニメCGを手がける株式会社ラークスエンタテインメントにおける、Shotgun導入事例をご紹介しました。続く第5回は、映画・TV・ゲーム・遊技機用液晶映像などのVFX、フルCG映像を手がける株式会社エヌ・デザインにご登場いただきます。同社の取締役で、ディレクターとしてCG制作を指揮する阪上和也氏に加え、多様なプロジェクトでプロダクションマネージャー(PM)を務める川瀬基之氏、落合紗菜氏、加藤志帆氏にもお話を伺いました。2009年頃から2015年前半にいたるまで、インハウスツールでプロジェクトを管理してきたエヌ・デザインが、どのような経緯でShotgunへの移行を決断したのか、移行したことで何が変わったのか、たっぷりと語っていただきました!

情報の一元管理、管理工数の削減を目指し、Shotgunを導入

ショットガン・トキトウ(以降、トキトウ):エヌ・デザインは5年以上前からインハウスツールを使ってきたにも関わらず、ボーンデジタルがShotgunの認定販売を開始した直後から、積極的にShotgunへの移行を進めてこられました。今では30本以上のライセンスをお持ちです。なぜ移行を決断なさったのか、改めてお聞かせいただけますか?

阪上和也氏(以降、阪上):当社では、映画『20世紀少年』シリーズ(2008〜2009)や『GOEMON』(2009)のVFXを担当した時代に、最初のインハウスツールである"カットリスト"を開発したのです。その後、"カットリスト"は3回のバージョンアップを重ね、2015年の前半頃まで使われてきました。

川瀬基之氏(以降、川瀬):"カットリスト"の最新バージョンはWebブラウザ上で動作し、各ショットの進捗管理、アーティストたちのスケジュール管理などの機能を搭載していました。たび重なる改良を経て、段階的に使い勝手の良いツールへと進化してきたものの、他ツールとの併用が不可欠だったのに加え、やりとりの履歴が残らない場合も多々ありました。

落合紗菜氏(以降、落合):例えば、チェックバック時のペイントオーバーにはPhotoshopを使う、社内サーバへのアップロード後の報告にはMessengerを使う、協力会社との情報共有にはExcelを使うといった具合だったので、当事者ですら履歴をさかのぼるのに苦労することもあったのです。

加藤志帆氏(以降、加藤):使用ツールを減らせれば、必然的に情報の一元管理が容易になりますし、管理にかかる工数も減らせます。とはいえ、"カットリスト"の機能強化は一朝一夕にできることではありませんでした。

川瀬:海外スタジオでのShotgunの実績は何年も前から耳に入っていたものの、国内での使用事例は少なく、参考になりそうな情報は限られていました。しかし昨年以降、国内での導入が加速しそうな気運を感じたので、"試験導入してみませんか?"と当社の役員たちに申し入れたのです。

  • 阪上和也氏
  • 阪上和也氏
    取締役/ディレクター。エヌ・デザインのディレクターとして、数多くのVFX、フルCG案件を手がけてきた。「Shotgunを導入したことで、ショットのレビューが効率化され、確認漏れもなくなりました。ShotgunのOverviewを使えば、ラップトップやスマートフォンからでも進捗を確認できます。おかげで、以前は1日1回、社内サーバにアクセスして行なっていたレビューを、いつでも、どこからでもできるようになりました」。


  • 川瀬基之氏
  • 川瀬基之氏
    エディター/プロダクションマネージャー(PM)。エヌ・デザインが最初にShotgunを導入したVFX案件でPMを務め、以後、同社におけるShotgun導入の牽引役となっている。「私自身、まだまだShotgunの全貌を理解しきれておらず、手探りの連続です。一方で、社内には私以上に手探りしているスタッフも多くいて、今は個別に相談を受けています。今後導入を予定しているスタジオは、早い段階で、Shotgunの大枠をスタッフ全員に把握してもらうためのハンズオンセミナーを企画すると良いのではないでしょうか」。


  • 落合紗菜氏
  • 落合紗菜氏
    プロダクションマネージャー(PM)。2015年後半以降、Shotgunを使いプロジェクトを管理している。「1人のアーティストが複数のプロジェクトに関わっていたとしても、Shotgunなら仕事の空き具合や進捗状況を一覧表示できます。そのアーティストが、どの程度仕事を抱えているのか、いつなら余裕があるのか、ガントチャートでわかりやすく表示されるので、管理が楽になりました」。


  • 加藤志帆氏
  • 加藤志帆氏
    プロダクションマネージャー(PM)。前述の落合氏と同じく、Shotgunを使いプロジェクトを管理している。「Shotgunの場合、ディレクター、アーティスト、PMなどが同じタイミングで同じページを閲覧できるうえ、ページ内のデータ更新も可能です。誰かの更新が終わるまで待機する必要がなく、同時アクセスによる更新の不具合もありません。これまで以上に、仕事が効率化できていると感じます」。


  • ショットガン・トキトウ
  • ショットガン・トキトウ
    本名、時任友興(ときとう・ともおき)。1975年、宮崎県小林市生まれ。散弾銃"Shotgun"使いを父にもつ、株式会社ボーンデジタルのShotgun使い。リトルゲットーボーイのころから音楽とアートを愛し、気付けば30歳過ぎまでギタリストとして活動。都内CGプロダクションでコンポジター&ディレクターとして勤務した際にShotgunと出会う。2015年より現職。Shotgunに関する相談は、お問い合わせはフォームからお送りください!

トキトウ:試験導入を開始したのは2015年の初夏でしたね。我々が認定販売を開始した直後のタイミングだったので、よく覚えています。

川瀬:まずは社内のエンジニアと私の2名でShotgunの初期設定を行い、8名のアーティストが担当する小規模なVFX案件へ試験導入しました。マニュアルを読んだり、社外のセミナーに参加したりしつつ、Shotgunでできることを1つ1つ把握していったのです。並行して落合や加藤には早い段階でライセンスを発行し、"自分たちのプロジェクト管理に導入するなら、どんな機能がほしいか?" "どんな疑問や懸念があるか?"といった意見を出してもらいました。

落合:当社のプロジェクトはVFXとフルCGの2つに大別でき、発生するタスクや共有すべき情報が大きくちがいます。どちらにも対応できなければ導入は難しいと思ったので、その点は慎重に確認しましたね。

加藤:VFXの場合、カメラトラッキング、マットペイント、キーイング、ロトスコープなど、実写素材にまつわるタスクが数多く発生します。加えて、実写素材撮影時の情報、例えばレンズのミリ数、地面からカメラまでの高さ、被写体とカメラの距離などの情報を共有する必要もあります。これらのタスクや情報を一元管理できるようにした結果、VFX案件におけるShotgunのフィールドはかなりの数になりました。一方で、フルCGの場合は非常にシンプルなタスクなので、フィールドの数も少ないです。

阪上:検証の結果、VFXにもフルCGにも対応できることがわかったので、段階的に他プロジェクトの管理にも導入することになりました。

▲今回ご紹介するShotgunのスクリーンショットは、エヌ・デザインの設定を参照しながらトキトウが作成したものです。エヌ・デザインで進行中のプロジェクトに関する機密保持契約を守るため、前述の措置をとらせていただきました。上は、エヌ・デザインのVFX案件における、Shots設定の典型例です。Default表示を選択すると、ショットに関するコメント(Cut Desc)、CGに関するコメント(CG Desc)、各タスクの状況(Status)、各タスクの担当者(Assigned To)などを総覧できます

▲前述のShots設定の典型例にてSimple_view表示を選択すると、上のように各タスクの状況(Status)だけが表示されます

▲前図の赤枠内を拡大したものです。VFX案件の場合、カメラトラッキング(Tracking)、マットペイント(Matte)、キーイング(Key)、ロトスコープ(Roto)など、実写素材にまつわるタスクが数多く発生するため、フルCG案件よりもPipeline Stepの数が多くなります

▲前述のShots設定の典型例にてCamera_data_view表示を選択すると、上のように実写素材撮影時の情報が抽出されます

▲前図の赤枠内を拡大したものです。レンズのミリ数(Lens)、地面からカメラまでの高さ(Height)、被写体とカメラの距離(Distance)などが入力されています

"導入したことで手数が減った"というのが現場の実感

トキトウ:今では社内の全プロジェクトでShotgunを導入しているそうですが、他に併用しているツールはありますか?

川瀬:現段階では社外からShotgunを閲覧できる設定にしていないので、協力会社との情報共有には引き続きExcelを使っています。Shotgunの必要データをCSV形式でエクスポートして共有することが多いですね。とはいえ、それ以外のツールはShotgunに移行できたので、管理にかかる手数は確実に減っています。

落合:例えばShotgunの導入以前、アーティストは仕上げたショットを社内サーバ内の"by day"フォルダと、"by shot"フォルダの2箇所に格納していたのです。"by day"は各アーティストの進捗管理、"by shot"は各ショットの進捗管理に使っていました。前者だけでは各ショットの最新データがどれなのかわかりにくく、後者だけでは各アーティストの最新の仕事がどれなのかわかりにくくなるため、必ず2箇所に同じデータを格納する必要があったのです。

加藤:仮にアーティストAがショットBを仕上げたとします。そうすると、アーティストAは"by day" "by shot"の2箇所にショットBのデータを格納し、格納したことをMessengerでディレクターに連絡していました。さらに、自分の進捗を"カットリスト"に入力する必要もあったのです。しかしShotgunを導入したことで、"by day"へのデータ格納、Messengerでの連絡、"カットリスト"への入力が1回のドラッグ操作だけで完結するようになりました。

阪上:Shotgun内の規定エリアにショットデータをドラッグすると、自動的にデータが圧縮され、Shotgunのクラウドストレージに格納されます。さらに格納したことを伝えるメッセージがディレクターやPMに自動送信され、ShotgunのOverviewやShotsの進捗情報も自動更新されます。おかげで、従来なら3分かかっていた作業が30秒で完了するようになりました。実際にどの程度のコスト削減が実現しているのか、具体的な数字を導き出せるまでには今暫くの時間を必要としますが、"導入したことで手数が減った"というのが現場の実感です。

トキトウ:それは良かった!Shotgunは、ディレクターによるチェックバックの機能も搭載しているうえ、ペイントオーバーであろうとコメントであろうと、全ての履歴を格納できます。情報の一元管理にも効果を発揮しているのではないでしょうか。

加藤:その通りです。最近は、各ショットの関連データやリファレンスへのリンク、補足情報などもShotgunへ入力するようになりました。ショット制作に必要な情報はすべてShotgunに書いてあるという状況が当たり前になれば、ディレクターやアーティストがPMに問い合わせをする回数も減ってくると思います。

▲Sequencesでは、シークエンス単位でアセット、ショット、リファレンス、カメラ情報を管理しています。このページを使えば、そのシークエンスで必要になるキャラクター、構成ショットなどを総覧できます

▲前図の赤枠内のReferenceを拡大したものです。シークエンス制作時に必要となる参考情報や素材が一目瞭然です。参考資料、エフェクト素材、テクスチャ素材などの格納場所へのリンクも設定できるため、情報の一元管理が可能となります

▲ショットの進捗状況を棒グラフで可視化したものです。上段の緑色のグラフは、作業待ちのショット、作業中のショット、作業が完了したショットを表しています。中央の青色のグラフは、アーティストごとのタスク残量を表しています。下段の赤色のグラフは、Pipeline Stepごとのタスク残量を表しています

▲前図の赤枠内は、"Artist6"のタスク残量を表しています。この枠内をクリックすると、上のようにタスクの具体的な内容が表示されます。この機能を使えば、ディレクターやPMはプロジェクトの状況を正確に把握できます

川瀬:ショットの進捗管理、アーティストのタスクやスケジュール管理、関連情報の管理、チェックバックのやりとりにいたるまで、多方面に活用できる汎用性の高さがShotgunの魅力ですね。国内の導入会社も徐々に増えてきたので、より一層の情報交換の活発化と、それによる業界全体の底上げを期待しています。

トキトウ:はい。ご期待には全力で!今後も様々な情報交換の場を提供してまいります!!

次回の更新でも、国内プロダクションの導入事例をご紹介します。お楽しみに!



Interview&illustration_ショットガン・トキトウ(ボーンデジタル)
TEXT_尾形美幸(ボーンデジタル)
Photo_弘田 充

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