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    こんにちは。Shotgun認定販売パートナーのボーンデジタルで、サポートを担当しているショットガン・トキトウです。3/9公開のスペシャルインタビュー「世界標準のプロジェクト管理ツールShotgun。国内導入スタジオ 25社の評価を一挙公開!」はご覧いただけましたか?第4回以降は、この記事でコメントを頂戴した会社におけるShotgun導入事例をいくつか紹介していきます。今回は、株式会社ラークスエンタテインメントから、奈良岡 智哉氏(CG部 部長/CGプロデューサー)と梅田拓也氏(CGI/テクニカルアーティスト)にご登場いただきます。アニメ版『モンスターストライク』(通称モンストアニメ)『暗殺教室』『ブブキ・ブランキ』などのアニメCGを手がけるラークスエンタテインメントが、どんな経緯を経てShotgun導入を決定したのか、現在どのように運用しているのか、今後どんな運用をしたいのか、徹底取材の成果をご報告します!

    ▲『モンストアニメ』のプロジェクト管理画面。Assets(左)は、映像制作に使う2D画像や3Dモデルなどのアセット管理に使用。Shots(右)は、映像を構成する最小単位であるショット(日本ではカットとよぶ場合もあり)の管理に使用。アセットと、それが使用されているショットを関連付けることができるため、散乱しがちな情報の一元管理に効果を発揮します (C)mixi, Inc. All rights reserved.


    ▲【左】『モンストアニメ』のOverview。最新のチェックバックデータや進捗状況がリアルタイムに共有されるので、クオリティラインの把握、間違いや誤解の早期発見につながります。FacebookなどのSNSに近い感覚で、コメントを書き込むこともできます/【右】Shotgunに格納された映像データはH.264(720p)形式に圧縮されますが、Shotgun付属のデジタルレビューツールであるRVを使用すれば高解像度データの再生が可能です (C)mixi, Inc. All rights reserved.

    プロジェクトに関わる全員が、俯瞰視点でプロジェクトの進捗を確認できる

    ショットガン・トキトウ(以降、トキトウ):Shotgunに関するご相談を最初に頂戴したのは、2015年の夏頃でしたね。ボーンデジタルが認定販売を開始した直後からのお付き合いで、10本未満のライセンスからスタートして、今では50本以上を導入いただくまでになりました。

    奈良岡 智哉氏(以降、奈良岡):Shotgun導入以前は、ExcelやGoogleスプレッドシートでプロジェクトを管理していました。けれど、効率面でもセキュリティ面でも満足はしておらず、常に代替手段を探していたのです。そんななかでShotgunの存在を知り、試験運用をしてみようという話がもち上がりました。

    梅田拓也氏(以降、梅田):我々が必要とする機能の大半が搭載されており、足りない部分はカスタマイズや運用方法の工夫で何とかなりそうだと思えたので、フル3DCGの短編作品のプロジェクト管理に導入しました。まずは規模の小さい案件で試験運用して、相性が良ければ徐々に使用範囲を拡張していけば良いだろうと考えたわけです。

    • 奈良岡 智哉氏
    • 奈良岡 智哉氏
      CG部 部長/CGプロデューサー。ラークスエンタテインメントの複数のプロジェクトにCGプロデューサーとして関わる。最近は、Shotgunで各プロジェクトのOverviewを眺めることが日課になっている。「隙間時間に流し読みするだけで、日々の進捗を大まかに把握できます。"話がかみ合ってないな" "壁にぶつかっているな"と感じたら、会いに行って直接話を聞いてみる。問題の早期発見・解決に有効なツールだと思います」。


    • 梅田拓也氏
    • 梅田拓也氏
      CGI/テクニカルアーティスト。ラークスエンタテインメントにて、Shotgun導入直後からカスタマイズや運用サポートに従事。「各プロジェクトの制作進行やアーティストも、徐々にShotgunに慣れてきました。最近では、簡単なカスタマイズは制作進行たちに任せられるようになったので、より俯瞰的な視点から、運用方法の改善や検証を行っています」。


    • ショットガン・トキトウ
    • ショットガン・トキトウ
      本名、時任友興(ときとう・ともおき)。1975年、宮崎県小林市生まれ。散弾銃"Shotgun"使いを父にもつ、株式会社ボーンデジタルのShotgun使い。リトルゲットーボーイのころから音楽とアートを愛し、気付けば30歳過ぎまでギタリストとして活動。都内CGプロダクションでコンポジター&ディレクターとして勤務した際にShotgunと出会う。2015年より現職。Shotgunに関する相談は、お問い合わせはフォームからお送りください!

    トキトウ:まずは小規模な1ラインで導入して、今は何ラインくらいまで増えているのでしょうか?

    奈良岡:大きいプロジェクトに関しては3ライン、小さいプロジェクトは4〜5ラインですね。全部のラインでShotgunを導入していますが、ものすごく使っているラインもあれば、あまり使っていないラインもあります。長い期間同じメンバーで制作してきた"ツーカーのチーム"ほど、既存のスタイルがしっかり浸透しているので導入が進まないですね。逆に、新設チーム、新人の多いチーム、社外とのやり取りが頻発するチームでは浸透が進んでいます。先に話した最初の1ラインの場合は新設チームで、担当のCGディレクターがShotgun導入に尽力してくれました。

    梅田:もともと新しいツールを試すのが好きな人で、"この機能は使える" "あれは便利だ"といった調子で、当社に合わせた運用方法の基盤を提案してくれたのです。連絡する相手、チェックバックする相手が隣や背後の席にいて、しかもツーカーで話が通じるなら、直接話した方が当事者たちにとっては効率的でしょう。ただし、その場にいない人はやり取りを把握できません。どこにも履歴が残されていなければ、当事者たちに確認し直す必要があります。

    奈良岡:従来のアニメ制作では、それが制作進行の仕事の大きな割合を占めていました。CGディレクターからのチェックバックは出されのか、そのチェックバックはどんな内容だったのか、そのチェックバックにアーティストは対応したのか、その対応結果をCGディレクターは確認したのか......、そういった進捗の把握に、結構な手間と時間をかけていたのです。

    トキトウ:もしShotgunを使っていれば、すべての履歴がすぐに確認できますね。

    ▲Shotsの階層を下りていけば、ショットごとのチェックバック履歴を確認できます。テキスト・画像・映像を問わずデータを一元管理できるため、確認もれの心配もありません (C)mixi, Inc. All rights reserved.

    奈良岡おっしゃる通り、いつでも、どこからでも、最新の進捗や過去の履歴を確認できます。社内の自分のコンピュータはもちろん、ラップトップやスマートフォンからでも見えるので、制作進行の工数はかなり削減できました。アーティストやCGディレクターも、日々の進捗報告や確認から、チェックバックの制作までShotgunのなかで完結できるので、仕事の効率化につながっています。

    とりわけ、本社とベトナム支社間のやり取りで高い効果を発揮していますね。ベトナム支社はCGのアセット、デジタル作画(動画)、仕上げ(彩色)、美術(背景)などを担当しており、ほぼデジタル化されているのでShotgunとの相性が良いのです。先日ベトナム支社に行ったら、アーティストたちがShotgunのOverviewを楽しそうに見ていました。自分たちのつくったものが映像のなかにどう組み込まれていくのか、Shotgunを見ればリアルタイムに進捗を追いかけられますからね。

    梅田:現在は、管理者(梅田氏ほか)、CGプロデューサー(奈良岡氏ほか)、制作進行、CGディレクター、アーティストの5職種で、微妙に操作権限の範囲は変えています。一方で閲覧権限にちがいはつけていないので、誰もがすべての情報にアクセスできる状態です。

    トキトウ:閲覧制限がかかっていなければ、プロジェクトに関わる全員が、俯瞰視点でプロジェクトの進捗を確認できる。Shotgunは今までになかった広い視野を、誰にでも分け隔てなくもたらせるわけですね。

    さかのぼって経緯を確認できるので、目を離していても後で何とかなる

    奈良岡:Shotgunの導入以前、ベトナム支社へのチェックバックデータは制作進行がFTPで送っていたのです。ただし、CGディレクターやアーティストたちから五月雨に送られてくるデータを、受けとるたびにベトナム支社に転送していたのでは、ほかの仕事が回りません。だから、例えば1日に1回、半日に1回といったペースで、溜まったデータをまとめて送っていました。しかしShotgunの導入以降、この状況は一転したのです。

    今は制作進行を介さず、本社とベトナム支社の担当者どうしが直接Shotgun経由でデータをやり取りしています。しかも、データをベトナムの翻訳担当者が受け取り、チェックバック内の日本語を現地の言葉に翻訳し、現地のアーティストに渡す過程まで、リアルタイムに追跡できるのです。問題に気づいた後で、さかのぼって経緯を確認することもできるので、ちょっと語弊のある言い方になりますが、目を離していても後で何とかなる点も嬉しいです。


    ▲Shotgunのクラウドストレージに格納されたチェックバックを見るときには、Overlay Playerというツール(上の画面)を使います。このツールは、チェックバックを効率化してくれる頼もしい存在で、ペイントオーバーによる描き込みはもちろん、コメント・参考サイトのリンク・参考データなどの添付も可能です (C)mixi, Inc. All rights reserved.

    トキトウ:効率化が飛躍的に進んだうえ、安心して眠れるようになったわけですね!

    奈良岡それはもう、グッスリです。

    梅田:若手から、30代、40代の中堅、ベテランにいたるまで、制作進行たちの評判は非常に良いですね。この数ヶ月で、すっかりShotgunを使いこなすようになりました。

    トキトウ:でも、そうやって効率化を突き詰めていくと、制作進行の仕事がなくなってしまわないか心配になりますね。

    奈良岡:それはないと断言できます。データや資料を運ぶだけが制作進行の仕事ではありません。制作が滞りなく、間違いなく進むように気を配り、作品の品質を高めるために尽力することが、本来の役割なのです。例えば、CGディレクターのチェックバック内容に矛盾があれば指摘する、足りない設定や資料を見つけてくるといったことに時間を割けるようになれば、制作の品質を左右する根幹部分への貢献度が増します。制作進行としての成長も早まるでしょうし、プロデューサーなどへキャリアを進める人も増えるでしょう。

    梅田:中小規模のCGプロダクションでは、CGディレクターが制作進行の仕事を兼務している場合も多いです。そのために管理がおろそかになったり、進捗が遅れたりといった問題に悩んでいる方々は少なくありません。Shotgunを導入すれば制作進行の負担軽減につながるので、本来の制作やディレクションに集中する時間を増やせるでしょう。私のようなテクニカルの専任スタッフがいなくても、基本機能の使用と、そのカスタマイズだけなら支障はありません。そして、基本機能だけでかなりのことができます。

    奈良岡:今後は、社外の方々、例えば作品の監督にもライセンスを発行し、監督チェックもShotgun内で行えないかと検討しています。さらに、国内外の絵コンテ・レイアウト・原画・動画・美術などの進捗をShotgunで一元管理できないかと考えています。アニメ制作のデジタル化は今後も進展するでしょうから、決して夢物語ではないと思うのです。絵コンテ撮のムービーをShotgunで共有し、各担当者がレイアウト・原画・動画・美術・CGといった素材をアップロードしていけば、素材を二重発注したとか、最後の撮影工程で尺が足りないことに気づいたといった、不幸な事故を未然に防げるようになるでしょう。

    トキトウ:北米のフルCG映画のプロジェクト管理ツールとして開発されたShotgunが、日本のアニメ制作でも大いに活用されていることに改めて驚きを感じました。日本のアニメ制作がさらに安心・堅実なものとなるよう、引き続き全力でサポートさせていただきます!!

    次回の更新でも、国内プロダクションの導入事例をご紹介します。お楽しみに!

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    Interview&illustration_ショットガン・トキトウ(ボーンデジタル)
    TEXT_尾形美幸(ボーンデジタル)
    Photo_弘田 充