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No.03:Unityアセットストアに初挑戦

No.03:Unityアセットストアに初挑戦

プレイヤーキャラクターと世界は不可分の存在

さて、実際に学生にやらせてみると、Step 4で人型のキャラクターを配置できただけで、かなり喜んで操作をしていました。単純にステージ上をキャラクターが動き回るだけで、結構楽しかったりするんですよね。ただし、それだけではすぐに飽きてしまいます。そのためプレイヤーの興味が持続するように、様々な仕掛けが求められることに。ここでレベルデザインが必要になるというわけです。

それでは、どのようなレベルデザインが求められるのでしょうか? ここで学生に「プレイヤーキャラクターがボールから人に変わると、求められるステージはどのように変わるでしょうか?」と質問しました。ボールは地面の傾きによって転がります。そのためステージを傾けることで、ボールを間接的に操作でき、より複雑な動きをさせられます。このように、ボールと傾く床の相性は良さそうです。

これに対して人型のキャラクターは、ボールとちがって身長があります。リギングをしっかり設定すれば、床を傾けても、簡単に転倒しないだけのバランスも保てます。障害物に力を加えて動かすことも、ボールより容易にできるでしょう。そのため床が単純に傾くよりも、オブジェクト間を走り抜けたり、上によじ登ったり、動かせるオブジェクトを置いたりと、より複雑なステージの方が相性が良さそうです。

このように、優れたゲームでは、「操作できるもの」と「操作できないもの」が互いに結びついています(もう少し視野を広げると、魚は水中でしか生息できないように、あらゆる生物は環境と密接に結び付いていることがわかります。ただし、ゲームではこの関係性を逆手に取ることもあります)。このちがいを体感してほしかったのも、今回あえて人型のキャラクターを使用した理由の一つでした。

どうやったら「2回」遊んでもらえるか

その上で今回学生に課した課題は「最低2回遊んでもらえるようなステージをデザインすること」。ゲームには再挑戦性という特徴があります。「もう1回遊んでみたくなる」構造をデザインすることに、ゲームデザイナーは心血を注いでいるのです(そもそも1回遊ぶだけでいいなら、ステージをデザインする必要性はありません)。もっとも、今回学生が使える「手駒」はほんのわずかです。スコアもタイムも敵キャラクターもありません。これでプレイヤーに再プレイの欲求を喚起させるには、ちょっとした工夫が必要です。

ちなみに、こちらで用意していた答えは「落とし穴をつくること」。ゴールの手前に別の床を設定しておき、コリジョンの設定をオフにしておきます(Box Colliderのチェックを外します)。これだけで、プレイヤーキャラクターがその上に進むと、床からすり抜けて落下するというわけです。そこからぴゅーっと落下して、でもスタート地点に戻らずに、別の床に着地。そこから進むと、真のゴールにたどり着ける・・・。こんな風に「穴から落ちて、やりなおしかと思ったら、ちがった」という意外性を提示できれば、おもしろがって、もう1回やってくれるのではないか......というねらいがありました。

▲筆者が作成した作例


これに対して学生の一人が出した答えは、ステージを左右に分割して、それぞれ2つの小回廊をつくること。なるほど、これなら(片方の小回廊がおもしろければ)もう片方の小回廊も通ってみたくなるでしょう。学生に意図を聞いたところ「最低2回遊ばせれば良いということだったので......」とのことでした。なかなかの力業ではありますが、条件はキチンと満たしています。このように、お題に沿って知恵を絞りながらレベルデザインを行なっていくことで、次第にゲームの構造分析ができるようになっていくと考えます。

もっとも、残念ながら今回は時間が不足していたようで(これだけの内容でも2コマ、180分では不足でした)、他におもしろいアイデアを披露してくれた学生はいませんでした。ただし、そこそこ手応えを感じましたので、2018年度は内容をブラッシュアップして、再度やってみたいと思います。

2018年度に向けての課題

また、今回は最終授業ということで、1年間のふり返りを兼ねて最後に授業アンケートを実施してみました。それによると過去4回のUnity演習は、学生にとっても新鮮だったようです。やはり「自分のアイデアをすぐに形にして、画面上で実行できる」点が良かったのでしょう。また「Unityについてよく耳にするが、これまで使ったことがなかったので、授業で触れられて良かった」というコメントもありました。

ただし、何もないところからアイデアを生み出すことは(天才でない限り)できません。そのためにはアイデアを創り出すガイドラインが必要になります。つまりゲームデザインに関する座学と演習をセットで行うことが重要だというわけです。この点に「あそびのデザイン講座」の優位性があるように感じられました。なんといっても、ゲームデザインの勘所をUnityを使って体験できるわけですから。

実際、1年間授業を通して行なってみて、学校の授業で教えられる内容は非常に限られていると実感しました。そのため今回の授業内容をベースに、学生が自分で深掘りしてくれることを期待しています。いわば授業は「学生の知的好奇心に火を付けるきっかけ」に過ぎないのでしょう。過去4回のUnity演習が少しでも、その役に立てば幸いです。就職してからも、ずっと勉強は続くのですから。

このように1年間続けてきた「ゲームメディア概論」ですが、2018年度からは新1年生のみの授業となります(新2年生では自分の手を離れて、ゲームデザイナー志望の学生に対しても、本格的にUnityを用いた演習が始まるようです)。そこで2018年度は仕切り直してカリキュラムを再構成すると共に、「あそびのデザイン講座」を始めから順に展開していこうと考えています。学生のモチベーションが最も高いと思われる、前期の最初の授業から導入するのも、おもしろいかもしれません。更新は5月以降になるかと思いますが、お楽しみに。



今回は以上です。次回もぜひお付き合いください。
(第4回の公開は、2018年5月以降を予定しております)

プロフィール

  • 小野憲史
    ゲームジャーナリスト

    1971年生まれ。関西大学社会学部を卒業後、「ゲーム批評」編集長などを経て2000年よりフリーのゲームジャーナリストとして活動。CGWORLD、まんたんウェブ、Alienware zoneなどWeb媒体を中心に記事を寄稿し、海外取材や講演などもこなす。他にNPO法人IGDA日本名誉理事・事務局長、ゲームライターコミュニティ世話人など、コミュニティ活動にも精力的に取り組んでいる。2017年5月より東京ネットウエイブ非常勤講師に就任。

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