>   >  新人講師がゼロから挑むUnityによる人材教育:No.08:遊んで楽しい、つくって楽しい、そして......
No.08:遊んで楽しい、つくって楽しい、そして......

No.08:遊んで楽しい、つくって楽しい、そして......

ゲーム専門学校の新人講師がUnityを勉強しながら、「ゲームのおもしろさとは何か」について授業を行う泥縄式レポートの第八弾。水先案内人になるのがユニティ・テクノロジーズ・ジャパン(以後、ユニティ)から提供中の無料教材「あそびのデザイン講座」だ。今回は時間制限とステージクリアを実装しつつ、自機と操作とゲーム世界の関係性について深掘りしていく。

TEXT_小野憲史 / Kenji Ono
EDIT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)

専門学校の泥縄先生として

ちょっと更新が空いてしまいましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。Unityを勉強しながら、Unityを教える、ゲームジャーナリスト兼、専門学校東京ネットウエイブ非常勤講師の小野憲史です。ただ、実際問題として、同じような「泥縄講師」は少なくないのではないでしょうか。プロシージャル技術でおなじみのHoudiniは好例で、ここ数年でゲーム業界でも急速にメジャーな存在になりました。そのためご自身でHoudiniを勉強されながら、学生に教えられている方もいらっしゃるかと存じます。

このようにゲームやCG業界では技術進化が非常に早く、次から次へとツールのトレンドが変化していきます。3DCGでいえば、10年前まではMayaか3ds MaxとPhotoshopくらいでこと足りていたものが、そこにZbrushが入ってきて、Substanceが入ってきて、そしてHoudiniが入ってきました。今後も3Dスキャンにフォトグラメトリーにボリュームモデリングと、次から次へと新しい技術が入ってきて、3DCGの概念すら変わっていきそうな勢いです。

しかし、どんなツールも基本がわかっていれば、応用がききます。そしてゲーム開発者になるということは、どんな職種であっても、自己学習と自己研鑽から無縁ではいられません。逆に基本がわかっていなければ、ツールに振り回されるだけになってしまいます。そこで座学と演習がセットで行われるといいのですが、なかなか専門学校だと難しいんですよね。専門学校で教えるのは学問ではなくスキルセット。つまり中身ではなく、ツールの使い方を教えるだけに留まりがちだからです。

▲授業風景


もっとも、だからこそ大学とちがって、比較的自由に(学校によって度合いは異なりますが)授業設計ができる良さもあります。ただし、それだけに講師によって授業内容に当たり外れがある点も否めません。何か良い教科書があり、学校や講師の事情にあわせて適切にカスタマイズして授業に活用できればいいのですが、ことゲームデザイン分野においては、まだまだ難しいのが現状です。そんな中でも本連載で活用している「あそびのデザイン講座」は、世界的に見ても貴重な存在ではないかと思います。

ただ、Unity演習を行わせながら、ゲームデザインの基本にまで言及するのは、なかなか難しいんですよね。どうしても、ただ演習を行わせて、「動いた、動かなかった」に留まりがち。というのも、自分を含めて多くの先生方は(特にゲームデザイン分野では)ゲーム開発経験に乏しいからです。名選手=名監督でないように、ゲームを「つくる力」と「教える力」は別モノですが、ある程度の開発経験がなければ、教えられることも表層部分に留まってしまうのではないかと思います。

あそびのデザイン講座とゲームジャム

そこで自分が提唱したいのが、ゲームジャムへの参加です。ゲームジャムは即席チームで一定のテーマに従い、数十時間でゲームをつくりあげるハッカソンイベントで、全国で様々なゲームジャムが開催されています。毎年1月にはギネスブックに認定された世界最大のゲームジャム「Global Game Jam(GGJ)」が開催され、2019年は1月25日~27日に予定されています。2018年12月9日・15日・16日には社会問題を解決するゲームを3日間でつくる「第7回 シリアスゲームジャム」も予定されています。

ゲームジャムの良いところは、短時間でゲーム一本分の開発経験が得られること。学校で学んだ知識が実際に試せるだけでなく、参加者の人間性まで伺い知ることができます。そのため近年では企業が人材採用に取り入れる例も増えているほど。そこでぜひ、先生方も学生と一緒に開発に参加していただきたいんですね。その上で、そこで得た経験を、ご自身の授業づくりに役立てていただければと思います。通常の授業では得られない、様々な気付きが得られるのではないでしょうか。

自分もGGJ 2012を皮切りに、様々なゲームジャムに参加したり、運営したりして、そのたびにゲームづくりのおもしろさと難しさを体感してきました。特に感じるのが、ゲーム体験を向上させる難しさです。画面上で何かキャラクターが表示されていて、操作もできる。でも、まったくおもしろくない。ここからどういうふうに改良すれば、おもしろいゲームになっていくのか。その手法がわからない。その一方でメンバーが疲れ切っていて、時間切れで終了......そういった風景をよく見てきました。

▲GGJ 2012で制作した「ワナゲー


原因は明らかで、ゲームデザイナーの力量不足なんですよね。ゲームを遊んで、おもしろいか、つまらないかがわかる。人によっては商業媒体でレビューも書ける。でも、それとゲームデザインの能力は別物です。だから「ゲームっぽいもの」で留まってしまう。「あそびのデザイン講座」で言えば、Unityのステージ上にアセットを並べただけの、デザインされていない状態で留まってしまうというわけです。これに気が付くだけでも、ゲームジャムに参加する意義は大きいと思います。

ただ、ゲームジャムに参加するのは、まだまだプログラマーが中心です。特にゲームデザイナー志望の学生だと、「参加しても、何ができるかわからない」「足手まといになるだけでは」と、尻込みする傾向にあります。確かにゲームはプログラマーがいなければ完成しません。そのためアーティストはまだしも、ゲームデザイナーにとって、関与できることが少ないのでは......。そんなふうに考えたくなる気持ちもわかります(もっともGGJでは、アナログゲームを制作しても良いのですが......)。

▲Global Game Jam 2018 ビサイド会場


そこでおすすめしたいのが、「あそびのデザイン講座」を通してUnityに触れ、レベルデザインに慣れた上で、ゲームジャムに参加してもらうことです。こうすれば序盤の企画会議に加えて、終盤のレベルデザインでも活躍できます。中盤は進捗管理やプレゼン(多くのゲームジャムでは企画発表や中間発表の時間が設けられています)を担当してもらいましょう。こんなふうに事前に説明してあげると、学生の不安を低減させられます。そのためにも、まずは先生方が参加されることです。

もちろん、ゲームジャムと実際のゲーム開発はちがいます。ゲームジャムでゲームづくりが上手くなっても、それで実際のゲーム開発が理解できるとは、自分も思っていません。しかし、これまでに説明してきたように、ゲームジャムには様々なメリットがあります。自分も「あそびのデザイン講座」の授業活用を通して、ゲームジャムで活躍できるゲームデザイナー志望の学生を増やしていくつもりです。すみません、書きながら今、考えました。まさに泥縄ですね。

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