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No.15(最終回):ゲーム教育の教材をUnityでつくる

No.15(最終回):ゲーム教育の教材をUnityでつくる

ゲーム専門学校の新人講師がUnityを勉強しながら、「ゲームのおもしろさとは何か」について授業を行う泥縄式レポートの最終回。水先案内人になるのがユニティ・テクノロジーズ・ジャパン(以後、ユニティ)から提供中の無料教材「あそびのデザイン講座」だ。最終回となる第15回は後期授業のまとめを行うと共に、ゲーム教育におけるUnityの活用法について考察する。

TEXT_小野憲史 / Kenji Ono
EDIT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)

後期授業が終了し課題を評価

皆さんこんにちは。ゲームジャーナリスト兼、専門学校東京クールジャパン(旧東京ネットウエイブ)非常勤講師の小野憲史です。先生方におかれましては2019年度の授業がすべて終了し、2020年度にむけて準備を進められている最中でしょうか。

それにしても、ここ数年のゲーム教育を巡る状況の変化には驚かされます。CGWORLD.jpでもレポートしましたが、東京藝術大学の大学院にゲームコースが2019年に設立されたり、東京国際工科専門職大学が2020年に開学したりと、大学におけるゲーム教育が加速しています。こうした中、ゲーム専門学校の側でも良い刺激を受けつつ、互いに切磋琢磨していければと思います。

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ちなみに前回の授業レポートでも触れたとおり、年明けの自分の授業では総合演習と称して、これまで学んだ内容を活かして、自由にゲームをつくってもらいました。使用する開発環境はUnityでもScratchでも何でもアリです。その結果、全29名の学生のうち、14名の学生が課題を提出しました。内訳はScratch7名、Unity Playground4名、Unity3名でした。

▲授業風景


前回紹介したとおり、後期の授業テーマは「既存のゲームメカニクスを自分なりに組み合わせて、新しいゲーム体験をつくる」ことでした。その上で、ゲームメカニクスに即したレベルデザインができれば、言うことはありません。ただし、学生の理解度にはちがいがありますので、これまでの演習で学んだ内容の改変でもよしとしました。その上で提出作品を4種類に分けると、次のようになりました。

新しいゲーム体験をつくり出している:2人
新しいゲーム体験をつくり出そうとしているが、今一歩に留まった:3人
成果物がこれまでの演習内容の改変に留まっている:6人
成果物が演習内容に達していない・起動しない:3人

中でもScratchとUnity PlayGroundを使用した学生で、それぞれユニークなものが見られましたので、簡単に紹介しましょう。

まずScratchでは「マウスポインタで猫を誘導して、上下左右から迫ってくる矢印から逃げる」ゲームが印象的でした。シンプルな内容ですが、難易度の調整が巧みで、思わず何度も遊んでしまう内容に仕上がっています。障害物を矢印としたセンス(授業で学んだシグニファイアに関する概念が活かされています)も秀逸です。BGMと効果音がきちんとつけられている点も重要なポイントです。

▲学生課題 その1『nekonekoneko!!』
scratch.mit.edu/projects/362188222


▲シグニファイアについて解説した授業用スライド


これに対してUnity PlayGroundでは「キャラクターをジャンプさせて洞窟を登り、先にゴールに到達する」対戦ゲームが見られました。スタート地点は左右に分かれていますが、ゴールは共通という点がポイントで、これによりゴール手前で両方のキャラクター同士がぶつかり合い、邪魔しあう状況が想定されています。もっとも操作性をはじめ、ゲームの完成度は今ひとつで、まだまだ磨く余地がありそうです。

▲学生課題 その2


▲メカニクスとレベルデザインについて解説した授業用スライド


いずれにせよ、ゲーム開発の敷居がどんどん下がっていく中で、企画書や仕様書を書くだけでなく、プロトタイプまでつくれる企画職の重要性が高まっています。技術的な素養のある企画職が求められているのです(裏を返すと企画的な素養のあるプログラマーも、また求められていると言えます)。

もっとも、これはアイデアの重要性を軽視するものではありません。アイデアの有効性を検証するための手法が、どんどん身近なものになっているのです。だからこそ企画職志望の学生には、今後も技術的な素養を高めつつ、「遊べる企画書」づくりを目指してもらえればと思います。

ただし、前期で行なったレベルデザインの演習では、ほぼ全員が課題を提出できていました。一方で後期の提出者は約半数に留まりました。それだけ後期の内容は学生にとって歯ごたえがあったことになります(レベルデザインではバグが発生することはないので、当然といえば当然なのですが......)。この点をどのように解決していくかが、今後の課題になりそうです。

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