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第4回:コンストレイントを使ったリグ設定(前編)   

第4回:コンストレイントを使ったリグ設定(前編)   

キャラクターの頭の向きの制御方法

2Dのイラストを3Dのように見せる方法はいろいろありますが、アニメーションさせる際はどれも大変手間がかかります。しかし[トランスフォーム・コンストレイント]を使えば、制御ボーンで自動的に動かすことが可能です。


今回はキャラクターが横に振り向く際の動きを、制御ボーンだけで実現する方法を解説していきます。まずは頭のテクスチャを全てメッシュ化します。頭部[HEAD.png]、顔[head_face.png]、耳[head_earInner.png][head_earOuter.png]、髪の毛[head_hairCenter.png][head_hairInner.png][head_hairOuter.png]、後頭部[headBack.png]をメッシュ化しています。ポニーテール[head_hairTail.png]はまだメッシュ化していません【上図】。


頭の向きを制御するしくみからつくっていきます。本来、頭を横に向けようとすると、全パーツのメッシュを手で動かす必要があり、大変面倒です。そこで[トランスフォーム・コンストレイント]を使い、ボーンをひとつ動かすだけで自動的に頭が横に振り向くように設定していきます。まずは頭部のボーンの直下、顔の左右の位置に、2つのボーンを作成します。なお、【上図内A】は[頭の向き制御用ボーン]、【上図内B】は[サブボーン]と呼びます。


[サブボーン]を選択し、[トランスフォーム・コンストレイント]を作成します。このとき、ターゲットは[頭の向き制御用ボーン](dir_head)とします【上図内A】。作成を終えたら、オプションの[一致]ボタンを押し、[ミックス]の値を-100に調整します。こうすることによって、[頭の向き制御用ボーン]を動かした際に[サブボーン]が反対の動きをするようになります【上図内B】。


顔、耳、髪の毛の各ボーン【上図内A】にも、[頭の向き制御用ボーン]をターゲットとしてコンストレイントを作成し、[一致]ボタンを押しておきます。[ミックス]の値はまだ変更しません。【上図】は頭の各ボーンにコンストレイントの設定を終えたところです。まとめてひとつのコンストレイントを設定するのではなく、【上図内B】のように各ボーンにコンストレイントを作成します。


[トランスフォーム・コンストレイント]の作成を終えたら、[頭の向き制御用ボーン]を実際に動かしながらメッシュの[ウェイト]を調整していきます。各テクスチャに[頭の向き制御用ボーン]の[ウェイト]の値を与えることにより、ボーンを動かした方向に顔が向くように設定できます。まずは頭部のメッシュに、[頭部のボーン](HEAD)、[頭の向き制御用ボーン](dir_head)、[サブボーン](dir_head_sub)の3つのボーンをバインドします【上図内A】。


その後[アニメ化モード]に移り、[頭の向き制御用ボーン]を左に移動させ、頭部のメッシュがキャラクターから見て右方を向いているような見た目になるまで、[ウェイト]を調整します。【上図内A】を見ると、頭部のメッシュの頂点(赤色のライン)が左に移動しており「右方を向いているような見た目」になっていることがわかります。


頭部の[ウェイト]の調整が終わったら、顔の調整に移ります。頭部のテクスチャ形状はウエイト値だけで制御しましたが、顔はある程度コンストレイントの値を使って動かします。奥行き表現にともなう画像の歪みが大きく、[ウェイト]の値も大きくなり、制御が難しいためです。まずは顔のボーンに設定したコンストレイントを選択し、オプションを表示します。次に[ミックス]の値を調整し、キャラクターの左目を動いてほしい位置まで移動させます【上図】。


このとき右目が飛び出してしまうのですが【上図左】、左目の位置は問題ないので、左右の目の間の距離が近づくように[ウェイト]を調整していきます。前述の頭部のメッシュ調整と同様に、顔のメッシュにも[顔のボーン]、[頭の向き制御用ボーン]、[サブボーン]の3つのボーンをバインドし、キャラクターから見て右方を向いているような見た目になるまで[ウェイト]を調整します【上図右】。


顔と同様の手順で、耳、髪の毛、後頭部のパーツを調整したら、頭が横に振り向く動きを実現できます。一見、これで完成に見えますが、実はまだ不十分です。これまでずっと[アニメ化モード]で調整してきたので、コンストレイントの値がリグとしてセットアップされていません。そのため、これまでの工程で調整した各コンストレイントの値を、[設定モード]のコンストレイントの値にコピーする必要があります。値のコピーを終えたら完成です![頭の向き制御用ボーン]を動かすだけで、顔の横回転を実現できることが確認できます。【上図】は頭のリグを組み終えたとこです。[頭の向き制御用ボーン](dir_head)を左に動かすだけで、キャラクターが自然に右方を向くことが確認できます。

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