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第1回:ワールドクラスのフルCGアニメに挑む

第1回:ワールドクラスのフルCGアニメに挑む

世界標準のクオリティを出すべく、世界標準の制作体制を築き上げる

世界標準の制作体制という当初からの意思はあらゆるシーンで一貫している。企画段階では今回、邦画作品ではあまり描かれないコンセプトアートや美術ボードが数えきれないほど描かれた。そうすることで早い段階から最終ルックへの意思統一ができると共に、モデリングのみならず、ライティングやコンポジット作業の内容を明確にし、より効率的に制作が進められる。
「草案の頃から制作途中でも常にコンセプトアートや設定を描いていて、状況によってはCGチームを待たせてしまう場面もあり一見遠回りにも感じた精密なプリプロダクションだったのですが、作業者の方のイメージを企画段階から用意しておけたことで結果的に近道できたと思います」(上野氏)。

『キャプテンハーロック』場面写真

© LEIJI MATSUMOTO / CAPTAIN HARLOCK Film Partners

そして本制作では、レンダラに Arnold を採用したことが3DCG的には大きなトピックとなっている。
日本では未だほとんど導入実績のない新しいレイトレーサーであるが、欧米では Sony Pictures Imageworks を筆頭に、多くの実力のあるスタジオが使い始めている。制作当初はまだ日本に代理店もなく、ハリウッドでもまだ導入され始めたばかりであったことから、非常に挑戦的な選択だったと言えよう。
「他の数多くのレンダラとも比較検討したのですが、Arnoldを選んだことは結果的に大正解だったと思います。レイトレーシングGI(グローバル・イルミネーション) を使用したときの画づくりの完成度と開発のしやすさのおかげで、最終的なルックへ到達するスピードを確実に速めることができましたね」と竹内謙吾CGスーパーバイザーはふり返る。

『キャプテンハーロック』CGスーパーバイザー:竹内謙吾

竹内謙吾/Kengo Takeuchi(CG Supervisor)
福岡県出身。1997年株式会社スクウェア(現スクウェア・エニックス)入社。ゲームオープニング等の映像制作に携わる。2000年、USAホノルルスタジオに移籍しフルCG映画の制作に参加。2002年からフリーランスでテレビドラマや映画制作に携わった後、2007年株式会社セガに入社、現在に至る。

Arnold Showreel January 2013

Arnoldをはじめ非常に先進的なパイプラインとワークフローを構築することによって、世界に胸を張れる映像作品となった本作。次回から本作のパイプラインや各制作工程における中核スタッフたちのとりくみについて、さらに掘り下げて解説していきたい。

TEXT_谷口充大(テトラ
PHOTO_大沼洋平

『キャプテンハーロック』場面写真 『キャプテンハーロック』場面写真

© LEIJI MATSUMOTO / CAPTAIN HARLOCK Film Partners

『キャプテンハーロック』

映画『キャプテンハーロック』

2013年9月7日(土)全国ロードショー
原作総設定:松本零士
監督:荒牧伸志
脚本:福井晴敏、竹内清人
アニメーション制作:東映アニメーション、MARZA ANIMATION PLANET
harlock-movie.com
© LEIJI MATSUMOTO / CAPTAIN HARLOCK Film Partners

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