1998年6月29日(月)に創刊したCGWORLDこと、「CGWORLD + digital video」。おかげさまで、3月10日(火)にて通巻200号を達成することができた次第。そんなメモリアル号の表紙をかざったのが、本誌編集部と深い関わりのあった伝説的なヴァーチャルアイドル「テライユキ」。原作者である、くつぎけんいち氏に監修をしていただきつつ、彼女を2015年に復活させたトランジスタ・スタジオの中核スタッフたちに話を聞いた。後篇では、いよいよ具体的な画づくりに迫る。

▶「前篇」はこちら:【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(前篇)

<1>見た目としてはシンプルに、されどハイディテールに

「安心してください、忘れていませんよ。」と、本年の「ユーキャン新語・流行語大賞」トップテン入りを果たした名フレーズにあやかるという、数年後に読み返したときに気恥ずかしさでいたたまれなくなる荒行をわが身に課すことで、まずは前篇の公開から9ヶ月以上も間が空いてしまったことを深くお詫び申し上げさせていただく(ひとえに小生の非力さに起因するものになります)。
さて、そんな200号の表紙グラフィック『TERAI YUKI』(英語表記本来の名・姓の順ではなく「テライユキ」と、あえて日本語通りの姓・名の順にしている、と念のため)の制作だが、「前篇」では、実写スチールの撮影と、構図の決定までを紹介した。

くつぎけんいち氏が生み出したオリジナルの『テライユキ』は、1998年に自主制作のCGキャラクターとして発表された。公式設定では2000年生まれの17歳ということで、商業デビューとなった『週刊ヤングジャンプ』のセンターグラビアに起用された際も「2017年のヤングジャンプのグラビアページ」というコンセプトで制作されていた。つまり、「テライユキ=近未来的なヴァーチャルアイドル」というイメージが強いキャラクターでもある。

【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(後篇)

image courtesy of Ken-ichi Kutsugi

Poser用フィギュアのプロモーション的な意味合いで、2005年にくつぎ氏が制作したグラフィック。くつぎ氏が個人で制作したテライユキとしては、これが最後の作品である(2015年12月現在)


「語弊があるかもしれませんが、当時の3DCG的な未来感こそがテライユキらしさかもしれません。だからこそ、まったく別のアプローチで表現しようと当初から決めていました」とは、トランジスタ・スタジオの森江康太ディレクター。
「がっつりつくり込むのかなと思っていたところに、森江から『スタイリッシュなモノクロのファッションフォト』というアイデアを聞かされて、自分としてもその意外性が面白いと思いました」と、本プロジェクトでは制作進行的な役割を担ったという秋元純一氏も続ける。

2000年前後のテライユキをはじめとするヴァーチャルアイドル(美少女CGキャラクター)が盛り上がりをみせていた頃に比べれば、3DCGは大きく進化している。その意味では、今回の復活プロジェクトもフォトリアリスティックを全面に押し出したアプローチも十分に考えられたわけだが、モノクロのファッションフォトというコンセプトを打ち出したところは、様式美あふれるミュージックビデオやVI表現を得意とする同社ならではと言えよう。

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  • 『TERAI YUKI』中核スタッフ
    <前列>左から順に、森江康太氏、金山隼人氏、大野陽祐氏、伊藤浩之氏/<後列>左から順に、柴野剛宏氏、佐川智司氏、佐藤 賢氏、岡田寛成氏、秋元純一氏。以上、トランジスタ・スタジオ(写真撮影:大沼洋平)


<2>キャラクターモデルの制作

前篇でも述べたとおり、『TERAI YUKI』プロジェクトの制作期間は、実質2週間弱という非常にタイトなスケジュールであった(このことは何度でも強調したい←反省しろ)。2月10日(火)に東京駅近郊でスチール撮影が行われたが、その1週間ほど前からキャラクターモデルの制作がスタート。
「個人的に制作していた女性キャラクターがいたので、作業途中だったそのモデルをTERAI YUKIの素体へと転用することにしました。ですが、メッシュはイチから貼り直しています。実はオリジナルの設定では、テライユキは2000年生まれなので、2015年だとくつぎ先生が発表されていた当時の年齢(17歳)よりも若いんですよね」と、キャラクター制作を担当した金山隼人氏はふり返る。
「タイムパラドックスが生じるのですが、ここは現実の時間経過に沿うことにしました。そこで、金山には25歳ぐらいという設定で作業を進めてもらいました。身長は公式の166cmよりも若干高めに仕上げました」(森江氏)。高身長という仕様は、モデル体型を意識してのものだと推察した。

【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(後篇)

制作途中のモデル(2015年2月9日(月)時点)。「オリジナルのテライユキをいかにしてリアル化させるのか。けっこう悩んだのですが、森 絵梨佳さんのたれ目な感じなどが自分の中で解決の糸口となりました」(森江氏)

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(左)完成した全身モデル。「手のひらや頭部のサイズは平均的な女性のサイズを参考にする一方で、胸まわりは平均よりもボリューミーにしました。まったく見えませんけど(笑)」(金山氏)/(右)シミュレーションをかける前の衣服やアクセサリ、Shave and a Haircut(後述)による髪の毛を入れ込んだ状態のモデル

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手を握った際にできる指の皺などは、ポージングがFIXしてから手のジオメトリにサブディビジョンサーフェスをかけて軽くスカルプトしている。(左列)スカルプト前/(右列)スカルプト後

テクスチャリングも金山氏がリード。「最終的にモノクロ化させますが、作業自体は通常通りカラーで描きました。モノクロになったときの見え方を想像しながらの作業となったので、頭の中で補間させるのに若干戸惑いましたね。実はフォトリアルな表現を仕事で手がけるのはほぼ初めてだったのですが、テクスチャを写真の通りに精巧に描いただけではリアリティが得られないのだと痛感しました。マテリアルの調整など、色々と勉強になりました」。

【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(後篇)

顔用の各種テクスチャ。「ZBrushのPolypaintで描いています。ちなみにdeepSSSカラーは、diffuseカラーなどをMaya内でカラコレしたものを用いているので、これ単体のテクスチャは存在しません」(金山氏)

【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(後篇)

手の各種テクスチャ。こちらも顔用テクスチャと同様に、Polypaintで描かれた

【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(後篇)

作業を効率化させるべく、Polypaint用のベーステクスチャは「3D.SK」で購入したものを利用。しかし、指同士で隠れてしまっている部分も多かったことから、不足の部分は金山氏自身の手を撮影したものを用いたという(蛇足だが、綺麗な手で驚いた)

▶次ページ:<3>衣装の制作

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<3>衣装の制作

キャラクターモデルがある程度出来上がってきたら、衣服やアクセサリなどの制作がスタート。こちらの作業は、岡田寛成氏が担当した。「実在するファッションブランドさんに衣装協力していただいているので、忠実に再現することを心がけました。とにかく時間がなかったので、スチール撮影の翌日から着手しましたね」。
ちなみに衣装については、スタイリストの石田有佑氏が、最終的に選ばれたパンツのほかにもスカートやショートパンツなども用意していたという。「どれも魅力的だったので、撮影現場でも少し悩んでしまいました。ですが、3月10日(火)に発売される雑誌の表紙ということで季節感からパンツに決めました」(森江氏)。

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シャツ(上段)とパンツ(下段)のシミュレーション設定前のモデルとメッシュ表示。シミュレーションをかける際にリアルなしわを生成できるよう、あえてメッシュを斜め方向に作成している

アクセサリも丁寧にモデリングされた。「右手に装着したブレスレットについては、念のためHouidniでシミュレーションできるようにセットアップまで済ませておきました。幸いMayaによる手付けだけで対応できたので出番はありませんでしたけど(笑)」(秋元氏)。
また、靴については「スタイリストさんがサンダルを用意してくださっていたのですが、こちらも季節感を考慮してモデルさんの私物で撮影しました。というのも最終的に作業負荷の軽減するべく、足下を切った構図に決めたので」(森江氏)。

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ジャケットのシミュレーション設定前のモデルとメッシュ表示。こちらも同様にメッシュを斜めに作成してある。なお袖の部分はシミュレーション設定後に付け加えている

【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(後篇)

ジャケット、パンツ、シャツ、それぞれを個別にClothシミュレーション(画像はジャケットの例)。「Aスタンスから決めポーズへとアニメーションさせたのですが、ちょうど30フレーム目でした」(森江氏)。Clothシミュレーションによって生成されたシワをベースにすべく、そのメッシュをWrapオブジェクトとしてモデリングの際に利用し、シワを追加している。「シワが入ることで一気に存在感が高まって、みんなのテンションも上がったことを覚えています」(伊藤浩之氏)

【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(後篇)

【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(後篇)

Clothシミュレーション後のモデル(上段)とメッシュ表示(下段)。メッシュをあえて斜め方向に入れるという工夫の成果が窺えるが、さらにMayaのスカルプト機能で意図しないシワの形状が整えられた

▶次ページ:<4>難航を極めた髪の毛の表現

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<4>難航を極めた髪の毛の表現

セットアップには、ボディとフェイシャルのどちらもAdvanced Skeltonが用いられた。「CGWORLDの表紙グラフィックなので、可能なかぎり3DCGで表現することを徹底しました。2Dレタッチは最終的なシワの微調整に止めています」(森江氏)。こうしたトランジスタ・スタジオのこだわりの証として、後日、ターンテーブルのメイキング動画も作成された(後述)。

【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(後篇)

ボディおよびフェイシャルのリギングにはAdvanced Skeletonを採用。上図は、ボディリグ。衣服はシミュレーションを元に形状を作成しているため、セットアップは行なっていない。Advanced Skeltonは、森江氏の連載「アニメーションスタイル」でも頻繁に登場するフリーのMayaプラグインであるが、骨の位置だけ指定すれば自動でリグを作成してくれるのでアーティスト・フレンドリーだという

【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(後篇)

フェイシャルリグ。ベーシックなリギングは森江氏自らが担当し、最終的に田島誠人氏が仕上げたという。右側にあるカーブのコントローラだけでなく、顔の表面にあるジオメトリのコントローラで表情を細かく調整することが可能。今回のTERAI YUKIのように、女性の表情をリアリスティックに表現する上で非常に効果的だったそうだ

3DCGワークのなかで、最も手こずったのが髪の毛の表現だったという。
「当初はV-RayのHair and Fur機能で表現しようと思ったのですが、人間の髪の毛は約10万本と言われています。V-Rayでも1本1本の髪の毛をレンダリングすることが物理的には可能ですが、10万本(10万ノード)のレンダリングを実行しようとすると、Maya上でのオペレーション自体が重すぎて破綻してしまったため、途中からShave and a Haircutに切り替えました」(森江氏)。

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  • 頭部の制作過程を図示したもの。(左上)<Process 1>この段階では、眉毛と睫毛がポリゴンで作成されているが、最終的にはShave and a Haircutで生成したものへとリプレイスされる/(右上)<Process 2>ポージング後にも頭のバランスや耳の形状などの修正が行われたが(後述)、ブレンドシェイプで対応/(左下)<Process 3>Shave and a Haircut で生成された髪の毛および睫毛、そしてV-Ray Fur による産毛が追加された完成形


しかし、Shave and a Haircutに切り替えた後もV-Rayでレンダリングが実行できないという深刻な事態に見舞われてしまった。
「最終的に、その原因はライセンスサーバの設定にあったのですが、Shave and a Haircutが利用できない=プロジェクトの失敗なので、かなり焦りました(苦笑)。そんな途方に暮れているときに、たまたま目にしたCGWORLDにTELYUKAさんによる『COURIR』の作例(本誌199号「第2特集:3DCGポートレート」内)が載っていたのです。そちらでもShave and a Haircutを利用されていたことを知り、藁にもすがる思いでメールしました。TELYUKAさんには面識がなかったにも関わらず、親切に教えてくださって本当に感謝しています。やはり、聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥ですね」(森江氏)。

今年3月6日(金)のCGWORLDニコニコ生放送内でも披露された、Shave and a Haircutのデモ動画。ご存知の読者も多いとは思うが、Shave and a Haircutは、映画『キング・コング』(2005)をはじめハリウッドでも豊富な導入実績を有するツールであり、ガイド(ターゲット)の間を500〜1000本単位で自動補間する等の高いコストパフォーマンスも大きな魅力だという

<5>シーンリニアワークフロー(ライティング&レンダリング)

先述したとおり、今回の『TERAI YUKI』プロジェクトでは、できるだけ3DCGで表現することが目指された。そこで、フォトリアリスティックな表現を効率的に制作するべくシーンリニアワークフローが導入された。そのパイプライン構築を担当したのが、伊藤浩之氏(フリーランス)だ。
「実は、自分が参加することになった直接のきっかけはV-Ray Hairの研究だったりします。ところが、先ほどお話ししたように最終的にShave and a Haircutに切り替えられてしまいました(笑)。だけど、面白いプロジェクトだと思ったので、ひき続きシーンリニアワークフローのパイプライン構築やライティングまわりで参加させていただきました。スチール撮影の現場では、スタイリストさんの『生きジワは残して、死にジワはなくして』という御意見に、『え、このシワは生きてるの? 死んでるの??』と混乱したりもしましたが(笑)、そうした日頃のCG制作では得られないやり取りが新鮮で楽しかったですね」。

【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(後篇)

本作向けに作成されたHDRI。「リファレンスとなる写真を撮影した場所でHDRIも作成しました(前篇を参照)。余計な映り込みはレタッチで消しています」(伊藤氏)

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ライティングは、HDRを設定した「V-Ray Dome Light」1灯と、光源を強調するための「V-Ray Rect Light」1灯の計2灯を使用。GIを利用したレンダリングのため、ライトの数は最小限に抑えられた

【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(後篇)

レンダリングは、V-RayのGIを使用。「髪の毛などの細い部分にノイズが出ないようにImage samplerのsubdivs値を高めに設定してある。その一方では、静止画のため、Irradiance mapのsubdivsおよびinterp. sampleはノイズが出ない範囲で低めの値に止めている

【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(後篇)

主なレンダーパス。左上から時計回りに、beauty、Ao、depth、マスク1〜3。そのほかにも落ち影の素材等が追加で出力された

▶次ページ:<6>コンポジットワークと最終調整

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<6>コンポジットワークと最終調整

いよいよ、最終段階である。コンポジットワークにはNUKEを使用、この工程をリードしたのが柴野剛宏氏だ。「スチール撮影時の状況を考慮しながら、3D環境をセットアップしていきました。その意味では、コンポジットの実作業よりもライティングやレンダリング調整の方に時間を費やしたと思います」。

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NUKEのコンポファイル。Mayaからレンダリングイメージをタイルレンダリングで出力し、NUKE上で統合している。ビューティーパスを実写の写真に馴染ませる上では、その他のパスを利用して細かな調整が施された

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  • テイク1に対する森江ディレクターの修正指示。いかにTERAI YUKIを魅力的に表現するのか、そして効率的にCGっぽさをなくせるのかが焦点になったという。「指示内容に応じて、各担当者が修正作業を行いました」(柴野氏)


【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(後篇)

色校の段階では、原作者くつぎけんいち氏にも監修していただいた。(左)色校バージョン/(右)くつぎ氏の修正案。こちらの修正案の下、トランジスタ・スタジオ側でアイキャッチの追加や、髪の流れの調整などが行われた。なお、この修正作業も3DCG上での調整とのことで、上述したとおり2Dレタッチは衣服のシワ表現に止められた(改めて強いこだわりが伝わってくる)

【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(後篇)

完成したグラフィックのカラーバリエーション例。実際に表紙に採用されたのは、モノクロ(右上)のものだが、シーンリニアワークフローの強みを活かしたカラーバージョンも実は模索されていた。「自分たちとしてはアニメ的な表現だけでなく、フォトリアルな表現にもどんどんチャレンジしたいと思っているんです。ですので、技術面ではOpenColorIO(OCIO)にも取り組んでみたいですね。そうした意味でも、このプロジェクトはとても有意義でした」(森江氏)

『TERAI YUKI』ターンテーブル。360度に対応できるよう、モデルと髪の毛の双方に調整が施された。なおレンダリングコストとの兼ね合いから、若干クオリティを下げていることをご了承願いたい

いかがだっただろうか? 森江氏や秋元氏の優れた才能は、本誌の連載をはじめ、以前から様々なかたちで実感してきた。だからこそ、今回の『TERAI YUKI』の制作をトランジスタ・スタジオに依頼したわけだが、本プロジェクトを通じて同社の強さの源は、所属するアーティスト個々人の技能の結集であることが存分に伝わってきた。「うちでは、通常の商業制作と並行して、テーマは自由でかまわないので必ず自主制作に取り組むようにと指導しています。そうした取り組みから得たものを、本作で役立てることができたのかもしれません」と、森江氏は総括してくれた。

"TERAI YUKI" Staff Credit

original character design by くつぎけんいち

<Transistor Studio>
Director:森江康太/秋元純一
Modeling:金山隼人/岡田寛成/佐川智司/佐藤 賢
Setup:田島誠人
Composite:柴野剛宏
Lighting:伊藤浩之
System:平井豊和
Assistant Director:大野陽祐

<スチール撮影>
Photographer:山本 大
Stylist:石田有佑
Hair & Makeup:森江可奈子
Model:えぐちあやか(テライユキ)
衣装協力:エドウィナ・ホールセイン

TEXT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)



  • 【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(後篇)
  • 月刊「CGWORLD + digital video」vol.200(2015年4月号)
    第1特集:アニメCG2015
    第2特集:加速するデジタル造形