<3>VR/ARアプリケーション
Jackln Head(SIGGRAPH Asia 2015レポートを参照)とScope+の双方には、実社会でのアプリケーション展開の可能性が存在する。Jackin Headシステムのオフライン・バージョンは、すでに試行され広告やコマーシャル目的のために、多くの資金が動いている。研究者たちは、それがある特定のスポーツやエクストリームスポーツで使用されることを強く望んでいる。2020年の夏に東京オリンピックの開催が予定されており、日本の研究者たちはまたとない優位なポジションにある。近い将来、スポーツや展示イベントで、人々が360度スタビタイズ映像を体験できる日がやってくるにちがいない。
JackIn Head: 1st person omnidirectional video for Immersive Experiences
また、現在、Jackln Headのオンライン・バージョンは、30fps以上のスタビライズされた一人称視点をもたらす。今後の研究はシステムをポータブル化し、より高解像度にすることを目指している。潜在的なアプリケーションは無数にあるだろう。このシステムは、例えば、災害地域において、遠隔にいる専門家が現場にいる人をアシストするのに非常に有効である。また、遠隔での職業トレーニングでは、従来型のディスプレイに頼った二次元のコミュニケーションから離れて、指導者と学習者がまるで隣同士で働くことを可能にするだろう。
一方のScope+は、近い将来、国立台湾大学の眼科学の専門医学実習生のプログラムに組み込まれることに期待したい。若手に限らず眼科医にとって、技術の進化を促すと同時に、実際の手術でのミスを回避する重要な鍵となるはずだ。医療の領域外でも、いくつかの細部を改良することで、バイオロジカルサイエンスへも適応できる可能性もある。例えば、現代の教育カリキュラムに応えるかたちで、ブレッドボードを買っては捨てることを繰り返すことなく、何度も電子回路を試作することができるだろう。
JackIn Head とScope+は、VR・ARの実践的なアプリケーションでの真のポテンシャルを強く示している。解像度やフレームレートに関してはまだ限界があるものの、こうしたチャレンジは、技術の進歩と製品として普及により達成されるはずだ。
ここまで詳細に見てきたこの2つのシステムは、「百聞は一見にしかず」であるだけでなく、「一見が同時に実践」であることを見事に証明しているのだ。
TEXT_ジャナック・ビマーニ(株式会社ロゴスコープ リサーチャー/プロデューサー)
翻訳・編集:橋本まゆ
Written by Janak Bhimani, Ph.D., Researcher/Producer, Logoscope Ltd.
Translated by Mayu Hashimoto
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ロゴスコープ/Logoscope
株式会社ロゴスコープは、Digital Cinema映像制作における撮影・編集・VFX・上映に関するワークフロー構築およびコンサルティングを行なっている。とりわけACES規格に準拠したシーンリニアワークフロー、高リアリティを可能にする BT.2020 規格を土台とした認知に基づくワークフロー構築を進めている。最近は、360 度映像とVFXによる"Virtual Reality Cinema"のワークフローに力を入れている。また設立以来、博物館における収蔵品のデジタル化・デジタル情報の可視化にも取り組んでいる。
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