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第7回:Visual Computing / グラフィクスとCAD 合同シンポジウム2017「協創で築く豊かな画像文化−Enriched Imaging Culture by Co-innovation」レポート

第7回:Visual Computing / グラフィクスとCAD 合同シンポジウム2017「協創で築く豊かな画像文化−Enriched Imaging Culture by Co-innovation」レポート

2017年6月23日・24日の二日間にわたり、一橋大学一橋講堂(東京都千代田区)にて、「Visual Computing / グラフィクスとCAD 合同シンポジウム 2017」が開催された。3つの学会(画像電子学会 Visual Computing研究会情報処理学会 コンピュータグラフィックスとビジュアル情報学研究会映像情報メディア学会 映像表現&コンピュターグラフィックス研究委員会)により主催される同シンポジウム(特別後援にCG-ARTSがある)は、日本最高レベルのCGおよび画像処理の研究者による学術発表の場であり、SIGGRAPHなどの国際カンファレンスへの登竜門として位置づけられている。本稿は、2日間に渡るシンポジウムのレポートである。



  • ロビーでの企業展示(FOVE)
    www.getfove.com



  • ポスターセッションの様子

シンポジウムの開催場所には500座席を数える大講堂がある。シンポジウムの1日目はこの大講堂で開催された。大講堂のロビーではアイトラッキングVRヘッドセットのFOVEや、ゲームエンジン・ミドルウェアの開発、販売を行なっているシリコンスタジオ、顔写真1枚から3Dアバターを作成し、臨場感に富んだコミュニケーションを実現するVRアプリ「EmbodyMe」など数々のグラフィックス関連企業の展示が行われていた。また同ロビーには、研究発表を掲示して発表するポスターセッションの場が設けられており、各自が自分の研究内容を発表しながら、多くの人とコミュニケーションが取れるようになっていた。さらに、インターンシップコーナーも設置されており、優秀な学生を採用すべく多くの企業が参加していた。

大講堂での主となる発表は、プログラム委員会によって採択された論文の口頭発表である。口頭発表は、テーマごとに3つの論文が一括りとなった7つのセッション(3Dモデル生成・検索、画像特徴解析、コンテンツ関連技術、形状処理・反射計測、映像生成・評価、データドリブン映像生成、形状モデリング技術)に分かれており、2日間で合計21もの発表が行われた。

モデリング作業の簡易化に関する研究

口頭発表およびポスターセッションでは、CGや映像制作の現場でも実際に課題となるテーマに対し、コスト削減・クオリティ向上に繋がる応用研究が多くみられた。芝浦工業大学工学部ならびに立命館大学情報理工学部の井尻 敬氏らによる、「X線CTと写真を用いたテクスチャ付き三次元モデルの生成法」は、虫や花などの自然物のテクスチャつき3Dモデル構築を実現する研究だ。CTスキャンしたテクスチャ無しの3Dモデルに対し、デジタルカメラで複数視点から撮影した画像をDiffuseMapとして3Dモデルにマッピングしていく。このマッピングは、対象物の輪郭情報を利用したカメラ位置推定を用いることによって実現されており、これにより高精細なテクスチャつき3Dモデルを自動的に生成することができる。

テクスチャつき3Dモデルの出力結果
出典:「X線CTと写真を用いたテクスチャ付き三次元モデルの生成法 Visual Computing / グラフィクスと CAD合同シンポジウム 2017講演論文集」(井尻 敬、藤堂英樹、小檜山賢二、平林 晃、土橋宜典)より

同じくモデリング手法の研究である筑波大学大学院システム情報工学研究科 田中慎一氏らによるポスター発表「簡略化モデルによる折紙形状構築手法」は、折紙CGの外観のみを、容易に本物らしくつくり上げる研究である。この研究は折紙の内部構造(折り方)を無視し、外観を素早く構築することに主眼を置いている。実物の折紙の写真を参照しながらアプリケーションでXY平面のメッシュをつくり、折り方のアノテーションを指定するだけで外観が整った折紙の3Dモデルができ上がる。このようにソリューション、アプリケーションとしてすでに実用可能な研究が多くみられた。次に、その中でも、映像制作の編集機能として期待できる研究を紹介しよう。

折紙CGの作成アプリケーションのインタフェース
出典:「簡略化モデルによる折紙形状構築手法 Visual Computing / グラフィクスと CAD合同シンポジウム 2017 ポスター発表論文集」(田中慎一、遠藤結城、金森由博、三谷 純)より

一人称視点映像に必須なシームレスなシーン遷移手法

映像技法のひとつにカメラをある程度の時間回し続ける"長回し"という技法がある。分単位にもなる印象的なショットは緊迫感・臨場感を視聴者に与え、多くの映像作品で取り入れられている。アクションゲーム『GRAVITY DAZE 2』のプロモーションPV #重力猫『GRAVITY CAT / 重力的眩暈子猫編』(2017)のVFXを織り交ぜた3分を超える一人称視点の長回しは記憶に新しい。一方、長回しは制作難易度の高さから、その制作手法もトピックとなっており、例えば映画『トゥモローワールド』(2006)では登場人物のフレームアウトのタイミングで2つのショットを接続し、VFXで接続箇所をバレ消しすることで継ぎ目をシームレスに接続している。このようにポストエフェクトでの長回し制作も盛んに行われているが、監督・プロダクション独自の工夫とハイレベルなポスプロで成り立っているのが現実だ。そのためエンドユーザーが編集ソフトのエフェクト感覚で長回しをつくることは難しい。

#重力猫『GRAVITY CAT / 重力的眩暈子猫編』
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駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部の研究者 平井辰典氏による「シーン間の接続コストに基づくシームレスな動画シーンの遷移手法」は、ポスプロでの長回し制作が飛躍的に容易になることを予感させる研究だ。この研究は2つの異なるショットをまるでひと続きのショットのようにシームレスに繋ぎ合わせることができる。これは接続したいフレーム中の境界面のエネルギーの最小を解く「グラフカット法」を応用することで実現している。接続したい2つのショットの中で最も自然に接続できるフレームを探索し、その2つのフレームを接続する。接続の見た目は、モーフィングなど画像を歪ませたりはせずに、2つの微妙に異なるフレームが一枚絵になるように、最適な領域でそれぞれトリミングされ、合体している形だ。これが数フレームでトランジションしていく。

2つのショットの接続方法の概念図
出典:「シーン間の接続コストに基づくシームレスな動画シーンの遷移手法 Visual Computing / グラフィクスと CAD合同シンポジウム 2017講演論文集」(平井辰典)より

下の画像は2つのショットが接続され一枚絵になっているフレームである。カメラワークが多少異なっていても同じ場所から撮った映像ならば、自然な見た目に見える。もちろん、最終出力の完成度には、接続したい2ショットの撮り方・選定が最重要ではあるが、自動的に2ショットの最適な接続オフセット・接続領域面が算出されることが魅力的である。後は接続領域面に対しディストーション系のポストエフェクトをかければ自然なワンカットに見えるだろう。長回しが多用される360°映像のポスプロ支援など、応用先もこれからさらに広がっていくだろう。

2つのショットが接続されたフレーム
出典:「シーン間の接続コストに基づくシームレスな動画シーンの遷移手法 Visual Computing / グラフィクスと CAD合同シンポジウム 2017講演論文集」(平井辰典)より

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