STEP 03:「噴火の再現」を考える ~要素を分けて再現する~
2種類の素材を組み合わせてマグマの噴出を再現する
ここではメインとなる火山の噴火を再現します。今回、マグマの噴出を3DCG上で再現するために2つの素材を組み合わせることにしました。1つめは噴出の際に溶岩の芯となる素材。2つめは溶岩が拡散して飛び散る素材です。1つめの溶岩の芯とは、火口に溜まったマグマが吹き上がる際に見える最も密度が高い部分を指します。この芯をベースにもう1つの素材である溶岩の拡散も再現していきたいと思います。
噴火の再現は、溶岩の芯になる素材と拡散する溶岩の素材の2つを組み合わせて表現します
それでは最初に溶岩の芯の制作に入ります。芯の素材はFumeFXで制作します。シミュレーションはオブジェクトベースで行うため、芯の形状にモデリングしたオブジェクトをリファレンス動画を参考にそれぞれ配置し、スケールアニメーションによって芯の縮小を調整していきます。オブジェクトの配置とアニメーションが終わったらさっそくシミュレーションを行います。シミュレーションは煙のみで行い、不要な回転やうねりを司るパラメータを全て反応しないように設定しておきます。
芯の素材はFumeFXで制作します。芯のオブジェクトを用意して適宜配置し、スケールアニメーションを付けます。また、不要なパラメータは全て反応しないように設定しておきます
こうしてできた芯のシミュレーション結果が下の画像になります。なんだか少し頼りない画に見えますが、これを2つめの素材と重ねることで大きな威力を発揮します。
それでは次に2つめの素材である溶岩の拡散を制作していきましょう。この素材はパーティクルを用いて再現します。先ほど作った芯のオブジェクトをパーティクルの発生源として再利用し、後に噴火の芯と馴染みやすいように各パーティクルの発生タイミングをオブジェクトの動きと合わせていきます。その際、パーティクルのシルエットが山なりになるようSpeed BySurfaceオペレータを使用します。
拡散する溶岩の素材にはパーティクルを使用します。先ほど作成した芯の素材を発生源とし、SpeedBy Surfaceオペレータにより自然な拡散になるよう調整していきます
さて、溶岩の芯と同じ数のパーティクルイベントが準備できたら、次にパーティクルとして飛ばすためのオブジェクトを用意します。飛び散った溶岩は水飛沫と同じように、捉えどころのない有機的な形状をしています。そのような場合はBlob Meshを使用して複数のオブジェクトを繋げることで形を崩したオブジェクトを作成することができます。後はマテリアルの設定を加えて質感や色合いをリファレンス動画に合わせ、溶岩の拡散を再現していきます。こうしてできた2種類の素材をコンポジットソフト上で組み合わせ、溶岩の噴出を再現します。
2つの素材を組み合わせた最終結果が下の画像です。芯が消えていく推移と溶岩の飛散タイミングを合わせるのが難しいですが、上手くいったときはしっかり互いが馴染んでくれるのでこれも1つの方法としてはありかなと思っています。
STEP 04:「張り付く溶岩」を考える ~壁にぶつかる溶岩を再現する~
張り付く溶岩はDeflectorの摩擦で再現
最後のSTEPでは噴火の際、山に張り付き滑り落ちる溶岩を再現します。溶岩はその名の通り岩や砂が熱によって溶けた状態のものを言います。水よりも非常に粘度が高く、壁など障害物に当たるとくっついたりゆっくり零れ落ちる等の振る舞いを見せます。この振る舞いをシンプルに再現するには[UDeflector]を用いるのが良さそうです。
UDeflectorを適用すると、対象オブジェクトを衝突判定用のオブジェクトとして使用することができます
このツールで指定したオブジェクトは衝突判定用オブジェクトとして使用することができます。今回はこの機能を利用して、背景の火山モデルをパーティクルの衝突オブジェクトとして扱うようにしておきます。次に同機能パラメータ内の[Bounce]を0に、[Friction]を90%などパーティクルの衝突後に強い摩擦がかかるようにセッティングしておきます。準備が完了したら火山に張り付いてほしいパーティクルをピックアップし、イベント内に[Collision]オペレータを組み込めば山に接触した際、ゆっくりと滑り落ちるような動きをさせることができます。
背景モデルにUDeflectorを適用し、[Bounce]を0、[Friction]を90%に設定します
Frictionを高い値に設定すると衝突後に強い摩擦がかかるため、溶岩のパーティクルは衝突後、背景モデルに沿ってゆっくりと落ちていきます
完成
「火山の噴火」いかがだったでしょうか。噴火のリファレンスをいろいろ見ていると、そのダイナミックさや恐ろしさを感じると共に、「地球が生きている」ことをしっかり再認識させられますね。
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近藤啓太(ジェットスタジオ)
エフェクトを中心に映像制作をしております
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JET STUDIO
ゲーム、映画、遊技機映像など幅広く制作を行う、3ds MaxをメインツールとするCGプロダクション。ベトナムにも支社を構え、大規模な制作体制を採っている
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