今回は火山の噴火時に立ち昇る噴煙をテーマにします。「火山の噴火」そのものは過去にも取り上げましたが、今回はマグマや溶岩ではなく、煙のみに着目して制作をしていきます。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 224(2017年4月号)からの転載となります

TEXT_近藤啓太(ジェットスタジオ
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)



動画制作の裏話はこちら

噴火のしくみとその種類

今回のテーマは「噴煙」です。本連載では第16回(2015年12月号 vol.208)で「火山の噴火」をテーマに取り上げましたが、今回は噴火の際に発生する煙に注目して制作していきたいと思います。噴火とは地球のマントル付近にあるマグマがプレートの移動等によって地表にあふれ出す自然現象のことを言います。その際、噴出するマグマと共に大量に発生するのが今回のテーマである噴煙です。しかし噴煙とひとくちに言っても、発生部分や条件によって薄くて白い煙から濃くて黒い煙までその見た目や動きは多種多様。今回その中でも筆者がモクモクとした密度の高い噴煙をつくってみたかったということもあり、この機会を利用して再現に挑戦しました。

さて、先ほど書いたように噴煙と言っても様々な質感や動きの噴煙がありますが、要因としてはその機構が大きく関わっています。噴火の種類は大きく分けて3種類。山の内部で水蒸気が溜まり圧力が限界を超えて爆発する「水蒸気噴火」、マグマが直接地下水に接触した衝撃で一気に水蒸気が膨れ上がりマグマと共に地表に噴出する「マグマ水蒸気噴火」、マグマが火口まで一気に上昇し上空に吹き上がる「マグマ噴火」が代表的な火山噴火のしくみとなります。こうした数ある噴火機構によって噴煙や噴石の量、大きさ、色等に変化が生まれ、噴火の数だけ様々な噴煙を見ることができます。各STEPでは噴煙の制作だけではなく、噴石や火山雷の制作にも触れて噴煙の再現に必要な要素を紹介していきます。まだまだ謎が多く根本的な発生原因が解明されておらず、その規模やビジュアルから人を惹きつけてやまない火山の噴火。機会がありましたら過去テーマと併せて読んでいただくとより火山の秘密に近づけるかもしれません。

主要な制作アプリケーション
・Autodesk 3ds Max 2015
・Adobe After Effects CS 6.0
・FumeFX 3.5.5

STEP 01:「噴煙の性質と特徴」を考える~噴煙を調べてみた~

煙だけに留まらず火山雷という放電現象も

噴煙とは噴火の際に熱や火山ガスによって上空に巻き上げられた煙のことを指します。主な成分は岩石の破片、火山ガラスといったいわゆる火山灰によって構成されています。温度については火口付近では約600度~1,000度と非常に高く、一見規模や密度が高いだけの煙のように見えますが、成分も温度も通常私たちの生活の中で見る煙とはまったくちがう性質のものだということがわかるかと思います。こうした特徴だけに留まらず、その大規模ゆえに煙の中では火山雷といわれる放電現象も発生しており、自然の恐ろしさ、美しさを知るにはもってこいの自然現象と言えるでしょう。


STEP 02:「噴石と筋煙」を考える ~飛び散る石と煙を再現する~

火口付近から飛び出す噴石と石に絡む筋煙を制作する

噴火では大量の火山ガスが一気に噴き出すため、その力によって山が削られ、火口付近には大量の岩石が降り注ぐことになります。STEP 02ではこの噴石を再現していきます。


噴石は、噴火の勢いで削られた山肌が岩石となって地表に降り注ぐものです

はじめに噴石となる岩のオブジェクトを用意し、火口付近に発生源を配置したらPFSourceを用いて噴石となるオブジェクトを飛ばします。


岩石のオブジェクトを作成し、パーティクルフローを構築します

噴石の量や動きが決まったら、次は石にまとわりつく煙を制作します。噴石は噴煙が発生している火口付近から飛び出してくるため、煙が石に引っ張られ筋煙をところどころで確認することができます。こちらはFumeFXを使用し、石を煙のエミッタにして噴石から筋状の煙が発生するように設定します。


石にまとわりつく筋煙は、【2】で制作した岩石オブジェクトをFumeFXでMesherに変換し発生源とします

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STEP 03:「噴煙の動きと質感」を考える ~煙の特徴を捉えて再現する~

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STEP 03:「噴煙の動きと質感」を考える ~煙の特徴を捉えて再現する~

黒い煙と白い煙の特徴を考え動きと質感を調整していく

STEP 03では噴煙を制作します。噴煙を再現するためには大きく2つの煙の要素を組み合わせていきます。1つめは「モクモクと上がる黒い煙」、2つめは「山肌に沿って流れる煙」です。1つめのモクモクと上がる黒い煙は火口から噴出するガスや上昇気流の勢いで上空数十キロまで高く昇ります。見た目は火山灰や岩石の破片が多く含まれるため色が暗く、さらに煙下部からの押し上げによって煙上部はカリフラワー状の凸凹とした質感がはっきりと見て取れます。2つめの山肌に沿って流れる煙は1つめの黒い煙とは異なり白色に近く、質感もどちらかというとサラサラとした印象をもちます。マグマや山体に含まれる岩石や鉱物にも左右されますが、火山ガスの中に含まれる水蒸気が空気中で冷やされ細かい水滴となったため、前述したような白いサラサラとした煙になったと考えられます。


噴煙は、モクモクと高く上がる黒い煙と、山肌に沿って流れる白い煙の2つの煙から構成されます

以上を踏まえてさっそく制作に入ります。まずは1つめの黒い煙から。煙のシミュレーションにはいつものようにFumeFXを使用します。煙の発生源となる火口付近に煙のエミッタとなるオブジェクトを配置します。オブジェクトには[Noise]モディファイヤなどを利用して凹凸が出るように形状を崩しておきます。こうすることで煙をシミュレーションした際に自然なシルエットの煙がつくられやすくなります。


まず黒い煙は、平面オブジェクトにNoiseモディファイヤを適用したものを発生源とします

FumeFX内パラメータでは煙が多く出るようにObject Src内[Smoke]の[amount]値を多くし、火口部からの煙の突き上げを強くするため[Velocity]の[Object's]や[Extra]の数値を高く調整します。さらにディテールアップのために[Sim]タブの[Vorticity]パラメータにアニメーションキーを付けることで、最大値である1.0を超えた数値を入力します。そのほか、Turbulenceの数値調整をしたら後はひたすらシミュレーションをくり返して質感と煙の動きの良いバランスを目指します。


黒い煙の質感や量などを、パラメータで調整します

黒い煙ができたら2つめの白い煙の制作に入ります。まずは煙の発生源ですが、黒い煙と同様にオブジェクトをベースにシミュレーションを行います。山肌に沿って流れる煙を想定し、あらかじめエミッタのオブジェクトは山に沿うようなかたちで配置します。質感は水蒸気が多い分フワッとした印象があるため、黒い煙よりもTurbulence NoiseのScaleを小さくして細かい顆粒ができるように調整します。最後に山を衝突オブジェクトとして適用したら、こちらもひたすら良い画ができるまでシミュレーションのトライ&エラーをくり返します。2つの煙の動きと質感のバランスが上手く取れない場合はRetimerを用いてスピードの調整を行うのも良いかもしれません。最終的に黒い煙と白い煙を合わせてレンダリングした画像が【5】です。


白い煙は、山の稜線に沿って発生源となるオブジェクトを配置することで表現します


黒い煙と白い煙を合わせたレンダリング結果

STEP 04:「火山雷」を考える ~火山雷と照り返しを再現する~

雷用テクスチャと照り返し素材を制作する

最後のSTEPでは火山雷を制作します。参考にした動画が日中のもののためあまり目立ちませんが、要素を見逃さずできる限り再現していきます。STEP 01でも紹介したように、噴煙内では火山灰を構成している微小な石や灰が無数に飛び交っています。こうした火山灰同士が衝突した際に摩擦が起き、電気が煙内部で溜まり、雷となって大気中に放電されています。リファレンス動画でも火山雷が確認できますので雷の素材と噴煙への照り返しを用意していきます。


火山雷は、火山灰の衝突により火口付近に多く発生する放電現象です

まずは雷ですが、発生時間が1f~2fと非常に短いため通常の動画撮影ではほとんど動きの変化が見られません。そこで今回はシンプルにペイントソフトで描いた雷をテクスチャにして3Dソフト上でレンダリングすることにします。


発生時間が非常に短いため、今回は手描きのテクスチャによって表現します

次に照り返しは雷を配置した場所にオムニライトを配置し、雷が発生している瞬間だけライトが反応するよう[Multiplier]にキーアニメーションを付けておきます。そうして完成した雷と照り返しの素材が【4】です。


雷の配置場所にオムニライトを配置し、Multiplierにキーを打つことで雷が発生している間だけ光るように照り返しを設定します


完成した雷の素材と照り返し素材

完成

「噴煙」はいかがだったでしょうか。煙の規模に注目しがちですが、画では小さく見える噴石も実は大きなものでは直径5mの岩石が落ちてくることもあるそうです。筆者も登山経験がありますが、今登っている山が噴火したらと思うと生きた心地がしません。自然のダイナミックさとそれ以上に惹きつけてやまない魅力を感じつつまたどこかでお会いしましょう。


煙のディテールとスケール感のバランスが非常に繊細。噴煙が夢に出るほどシミュレーションをくり返したのは良い思い出です



Profile.

  • 近藤啓太(ジェットスタジオ)
    エフェクトを中心に映像制作をしております


  • JET STUDIO
    ゲーム、映画、遊技機映像など幅広く制作を行う、3ds MaxをメインツールとするCGプロダクション。ベトナムにも支社を構え、大規模な制作体制を採っている
    www.jetstudio.co.jp


  • イラストでわかる物理現象 CGエフェクトLab.
  • イラストでわかる物理現象 CGエフェクトLab.


    定価:3,000円+税
    サイズ:B5変型/フルカラー
    総ページ数:288
    ISBN:978-4-86246-395-1