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第38回:先駆放電

第38回:先駆放電

ジェットスタジオ「リファレンス動画の模写」をテーマに、3ds Maxとプラグインを活用したフォトリアルなエフェクト制作法について詳しく解説する本連載。Web版第3回となる今回は、雷の予兆ともいえる「先駆放電」を紹介します!

TEXT_近藤啓太(ジェットスタジオ
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada

雷を知るには「先駆放電」を知るべし

Web版第3回となるテーマは「先駆放電」です。なかなか聞き慣れない言葉ではありますが、雷発生の始めに起きる現象であり、この自然現象を知ることで雷が発生した瞬間に何が起きているのか、ジグザグと波打つ特徴的な形になる理由は何なのかなど、雷の深い理解を得ることができるようになります。

画的には少々地味ではありますが、雷はエフェクトアーティストにとって火、水と同じくらい制作機会の多い要素ですのでこの機会にさらに雷の知識を深めていきましょう。

今回、解説だけでは難しい部分が多いため、特別にシーンデータをご用意しました! こちらからダウンロードください。

主要な制作アプリケーション
・Autodesk 3ds max 2016
・Adobe After Effects CS 6.0

STEP1:「先駆放電の特徴」を考える ~先駆放電を調べてみた~

空気の抵抗によって雷独特の形状が生まれていた

先駆放電の前に「そもそも雷ってなんぞや?」という方は過去の雑誌連載、もしくは今月13日に発売された自著『イラストでわかる物理現象 CGエフェクトLab.』にて雷が発生するしくみについて紹介しておりますので、さらに詳しく知りたい方はそちらを見ていただければと思います。

雷はひと言で言うと摩擦によって起こる放電現象のことです。地上に放電したものを「落雷」。火山の噴火によって起きたものを「火山雷」など種類や発生状況は様々ですが、基本的には空気中に漂う塵や氷晶など小さな粒子がぶつかり合って生まれる静電気が限界値を超えて放出された電気のことを指します。

先駆放電に話を戻します。落雷発生の始めには雲内部から放電が起き、光の弱い筋状の電気が無数にながれていきます。雷を思い浮かべる際に木の根っこのように枝分かれした画を想像することもあると思いますが、この先駆放電がその一助となっているかもしれませんね。なぜこうした枝状の形になるかというと、空気中は抵抗値が高く電気が非常に通りにくいため雲内部で放電した雷は抵抗のより小さい箇所を進んでいきます。そのため下図のように枝分かれして光が進んでいるように見えているのです。雷が直線に落ちるのではなくジグザグに波打っているのも同様に、抵抗によってながれやすい箇所に進路変更をしているためです。


STEP2:「雷のプロセス」を考える ~先駆放電から帰還雷撃まで再現する~

パーティクルフローを用いて落雷の始まりから終わりまでを構築する

先駆放電とは落雷に至る最初のプロセスとして起こる現象のため、制作では落雷までのながれを想定して再現しなくてはいけません。<1>このながれを大まかに説明しますと、①雷雲内部で先駆放電が始まる、②地上へ向けて枝分かれを繰り返しながら移動していく、③枝分かれのうち地表に近づいた先駆放電はお迎え放電(ストリーマ)といわれる地表からの電気と結合する、④結合した雷の道筋は抵抗値の非常に低い放電路となるため一気に電流がながれ込み、熱膨張による雷鳴と強い閃光を特徴とした帰還雷撃(リターンストローク)が起きる(一般的な落雷部分はこれにあたる)。元の動画を見ると、③は④の帰還雷撃の強い閃光のため動画内でそのプロセスは見えないため省略してしまっても良さそうです。

ながれと省略部分を踏まえて制作方法を考えていきます。雷自体はシンプルな形状をしていますので手描きアニメーションでも成立してしまいそうですが、それだとちょっと面白くありませんので今回はパーティクルを使用して先駆放電から落雷までのながれをつくってみたいと思います。

<1>


<2>


最終的なパーティクルフローの構築は<2>です。この図を見てそっとページを閉じようと思った方はちょっとお待ちを。一見複雑そうに見えますが各イベントを役割ごとに区切ると主に4種類の働きのみで構成されていることがわかります。1つ目は雷パーティクルを発生させるスイッチとなるパーティクルを生成するための[Trigger_Particle]。2つ目は落雷になるための1本の太い雷になる[Main_Line]。3つ目は先駆放電となる[Lightning_Line_Tip]と[Lightning_Line]イベント×6。4つ目は2種類の雷イベントの軸となる放電路の動きを司り、さらに分岐を促すための[Spawn_Event]イベントとなります。

<3>


<3>[Trigger_Particle]ですが、このイベントは次イベントである[Spawn_Event]を発動させるためのパーティクルを発生させます。イベント内の[Birth]オペレータで発生する雷の数を設定することができるため、図のように簡単に雷の数を増やすことが容易となっています。

<4>


<4>次に[Spawn_Event]です。このイベントでは先ほど説明したように落雷となる放電路の動きを司るため、最終的な落雷のシルエットが決まる重要なイベントとなっています。このイベントでは図のように[Spawn]テストを複数使い[Main_Line]と[Lightning_Tip]に繋げていきます。[Main_Line]は[Spawn_Event]の道筋にパーティクルを発生させるためのイベントです。このパーティクルが落雷になります。

<5>


<5>[Lightning_Line_Tip]と[Lightning_Line]は消失する枝分かれの先駆放電となり、[...Line_Tip]は放電の動きと先端の光の強い部位に。[...Line]は[Main_Line]と同様に[...Line_Tip]の道筋にパーティクルを配置するためのイベントになります。さらに先駆放電の枝分かれを表現するために[...Line_Tip]イベント内に[Age_Test]テストを適用し図のように新たな先駆放電となる[Spawn]イベントに繋げて...を繰り返していきます。終盤には[Split Amount]テストも仲介させて枝分かれする数にバラつきを加えるようにしています。これで先駆放電から帰還雷撃までのプロセスを一手に表現することができました。レンダリング結果が<6>です。

<6>


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STEP3:「追加用の先駆放電」を考える ~周囲に広がる先駆放電を再現する~

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