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復刻・第28回:コーヒーを注ぐ

復刻・第28回:コーヒーを注ぐ

今回は身近な「コーヒー」をテーマに、コーヒーをカップに注ぐときの水面の揺らぎや湯気を再現します。一見シンプルな現象にみえますが、様々な要素が複雑に絡み合って発生していることがわかると思います。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 220(2016年12月号)からの転載となります

TEXT_近藤啓太(ジェットスタジオ
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)



動画制作の裏話はこちら

コーヒーの歴史と「豆」知識

今回のテーマは「コーヒーを注ぐ」です。液体を容器に注いだときに起きる水面の揺らぎを中心に、コーヒーを注いだときに起きる様々な現象を調べ、再現することに挑戦しました。いつものように次ページから本編となる制作手法を紹介するので、この場はコーヒーの歴史と豆だけに(?)豆知識をお話ししたいと思います。

コーヒーの歴史は10世紀までさかのぼり、アラビアの医師がコーヒー豆を煮出した汁を薬として患者に飲用させていたのがコーヒーのはじまりと言われています。それから300年ほど経ち、豆を焙煎した飲用方法が確立し中東のイスラム世界で一般にも広まります。そして17世紀初めにはヨーロッパへ、後期にはアメリカへと伝わっていきます。日本へのコーヒー初上陸も時を同じくし、長崎の出島でコーヒー豆を取り扱っていたオランダ商館で、ごく一部の関係者が楽しむ嗜好品として入ってきたのがはじまりだとか。ただし一般に広まるにはそこからさらに200年ほど歳月がかかるので、日本でコーヒーが当たり前のように飲まれはじめてまだ100年と少ししか経っていないことに驚きです。

飲んで良し、香りも良しで長らく好まれてきたコーヒーは様々な効用も期待され、リラックス効果に始まり消化補助、頭痛や認知症予防に果てはガン予防にまで作用することがわかってきました。そんな非の打ちどころがないスーパー飲料ですが、ひとつ困ることがあるとするならば利尿作用のおかげでお手洗いの回数が増えてしまうことでしょうか。これから少しだけ難しい話が続きますのでコーヒーでも飲みながらリラックスして楽しく読んでいただければ幸いです。

主要な制作アプリケーション
・Autodesk 3ds Max 2015
・Adobe After Effects CS 6.0
・FumeFX 3.5.3
・FROST 1.4.3

STEP 01:「コーヒーの水面」を考える~水面の動きを調べてみた~

複合的な要素が絡み合い水面の動きがつくられる

気体や液体のような「流体」と言われる物質は特定の形をもたず、周囲の環境や扱い方、粘度のような物質そのものの条件によって多種多様に形を変化させます。今回のテーマである「コーヒーを注ぐ」でもご多分に漏れず液体の様々な動きを見ることができましたので、STEP 01ではコーヒーの水面がどういった振る舞いをしているのかを調べてみました。複雑な動きが重なり合っていますので、大きく4つの特徴に分けて説明したいと思います。

1つめは「注いだ液体による凹み」です。カップに向けて注がれた液体は水面に衝突すると、その圧力により液体が押し下げられ注がれた部位に凹みが生じます。2つめは「波紋」です。1つめの凹みによって押し下げられた液体の周囲にある液体は反動によりもち上がり、そのまた周囲の液体はその反動で押し下げられ......をくり返して波紋となります(詳しくは連載第13回の「雨」で紹介しています)。3つめは注ぐ液体の衝突によって発生した泡が水面に湧き上がることで起きる「泡による水面の盛り上がり」。最後の4つめは今までの水面の動きによって起きる「無数の波」です。複合的な要素が絡み合いなかなか骨がありそうなテーマですが、ひとつひとつ要素を解きながら再現していきたいと思います。


STEP 02:「コーヒーの湯気」を考える ~筋感のある湯気をつくる~

湯気の筋感のある煙を発生源とFumeFXパラメータによって再現

STEP 02ではコーヒー上に立ち昇る湯気を制作します。湯気とは水蒸気が空気中で冷やされ、周囲の気体と結合した水滴の集合体のことを言います。この湯気はFumeFXを用いて再現したいと思います。


湯気は水蒸気が空気中で冷やされてできた微小な水滴の集合体で、気体である水蒸気とは異なり液体です

発生源となるコーヒーの水面から煙を出すために水面用のオブジェクトをソースに適用するのですが、このままシミュレーションを行うとオブジェクトの根元を含む全体から均等に煙が発生してしまい不自然なシルエットになってしまいます。


水面用オブジェクトを煙の発生源に適用しますが、そのままシミュレーションするとオブジェクトの全体から煙が発生してしまいます

そこでObject SrcのSmokeチャンネルにあるMap内[Intensity]を選択し、テクスチャマップの強度の差によって煙を出せるよう設定します。【3】のように煙の発生にムラが出るよう適用するマップを調整したら、FumeFX内で煙の立ち昇る速さやうねりによる質感のパラメータに数値を加え、湯気特有の筋感のある煙を目指します。


そこで、SmokeチャンネルのMapをIntensityに変更し、テクスチャマップによって強度をコントロールできるようにします

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STEP 03:「水と泡」を考える ~特徴を分解して動きを再現する~

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