<2>クライマックスシーンを"創作"し、大反響に
――お2人から見て、現在公開中の3作品それぞれの魅力や、ムービーになったことによってより深く描かれたキャラクターの部分について教えていただけますか?藤田:まず、『まとい』の方から話すと、これまで『#コンパス』で見せていなかった世界観を最も出した作品になっています。「おじいちゃんとの別れ」というキーワードからここまでつくっていただきました。カードに登場する屋形船もすごく効果的に入れていただいて、『#コンパス』の世界を使いつつ、まだゲームでは見せられていなかったものを描き出していただいたという感じです。
藤田:ルックもそれに合わせた少し柔らかい線にしていただき、屋台が並ぶ風景では色鉛筆タッチの温かみを入れていただいたり、花火をかき混ぜるときの色の粒がぐるぐる回るところとか、何気ない演技や描写ひとつひとつ丁寧にやっていただいています。
林:『まとい』では僕と藤田がこっそり声優デビューしているんですよ(笑)。弟子役で「親方、ヘイ」といったセリフとか、花火が上がって歓声を上げているところです。そこは4人同時に録ったのですが、アドリブで言ってくださいと言われたので、全員一斉に「おお~」と声を揃えてしまうという、素人らしさあふれる語彙力を展開してしまいました(笑)。
――続いて、第2作『Voidoll irregular(以下、Voidoll)』はいかがでしょうか?藤田:『Voidoll』の方は、『まとい』とは逆に、すでに『#コンパス』にある世界観を膨らませていただいたというかたちです。というか、僕らが曖昧に設定していた『#コンパス』のシステムをビジュアライズしていただいたという(笑)。あとはやはり空間の使い方や戦闘のカット割りがとても格好良くて、何回でも観たくなりますね。構成としても4分の中で起承転結がキチンとされているのでそこも見どころのひとつだと言えます。
林:『#コンパス』のバトルの外側の電子世界を描いているので、ゲームに通ずるところがありますね。普段スマホでバトルをしているときも、その先にはこういった世界があるのかなと想像しながらプレイしてもらえるといいですね。
――では最後に、一番の話題作『魔法少女リリカ☆ルルカ(以下、リリカルルカ)』についてお願いします。最初に見たときはいきなりのクライマックスで何かのまちがいかと思いました(笑)。林:これは『#コンパス』の「マルコス'55」というキャラクターが『魔法少女リリカ☆ルルカ』の主人公である「リリカ」を大好きだという設定で、作中に「リリカ覚醒回は最高だったよな」というセリフがあるんです。それを本当につくろうと(笑)。
藤田:最初はエンディングのダンスだけつくろうとしていたのですが、それだけだとあまりにプロモーションビデオになりすぎるかなと思って。
林:そこで最終回の1話前のラストシーンをつくって、そこからエンディングのダンスになだれ込もうというアイデアがあり、先ほどのマルコスのセリフから組み上げていったというわけです。
――それまで存在していなかった架空のアニメの最後の部分だけでこれだけ視聴者の感情を掴むというのは、非常に演出力を求められるつくりだと思います。藤田:リリカもルルカも一瞬の表情や0.5秒くらいのカットも本当に細かく良い表情をつけていただきました。実尺は3分半なのに長く感じるのは、それだけしっかりと密度がある内容だからだと思います。制作は『Voidoll』と同じ渡辺誠之監督(トムス・ジーニーズ)なんですよ。
藤田:『リリカルルカ』は『Voidoll』のときとルックを変えていただいているんです。『Voidoll』の方はデジタル空間なので質感があるメタリックで実写っぽい感じに。こちらはアニメ寄りで髪も手描きっぽい感じに寄せてくれています。同じスタジオにもかかわらず、世界観に合わせて毎回丁寧に変えてくれています。
林:リリカのダンスはモーションキャプチャで撮ったのですが、普段から『#コンパス』のイベントに出てくれている仮面ライヤー217さんという方がもともとリリカを大好きだったので、彼女にモーションをお願いしました。大好きな人につくってもらうとより良くなるということは『#コンパス』では良くあることなんです。その"大好き感"を見てもらいたいですね。あと、リリカの方がちょっとだけ下手に、でも頑張って踊っているんですよ。そんな2人のちがいを観ていただければと思います。
――ムービーによってさらに作品の世界観やヒーローのキャラクター像が広がりましたね。林:今後もアニメをあと7本制作して、「そこからゲームにフィードバックされるものも出てくるかもしれないね」という話はしているのですが、それを決め込んでつくるとスタジオさんも窮屈ですし、ねらいすぎで面白くないので、「生まれたらいいね」くらいの感覚ではいます。
――今後の制作が決まっているスタジオさんを教えていただけますか?
藤田:トムス・ジーニーズさんでもう1本、『メガロボクス』の森山 洋監督が2本、残りはCGの制作会社さんで最終調整の段階です。
林:一応、最初に『まとい』を発表した2018年8月から、1ヶ月に1本ずつと言っていたので。毎月ではないかもしれないけど、平均して1ヶ月に1本出ていた計算になるように帳尻を合わせられれば(笑)。
――この記事で短篇をきっかけに『#コンパス』を知った方にその面白さをご紹介いただけますか?藤田:アニメの方はゲーム本編を補完するエピソードなのですが、アニメも単独で楽しめるようにつくっていますので、アニメを見て好きになって下さった方はぜひゲームも遊んでいただければと思います。
林:世界観が多様なので、それぞれのお客さんに合うキャラクターを見つけていただければと思います。対戦ゲームというところで、ドキドキするかもしれませんが、対戦をやったことがない人にも遊びやすくつくっているので、最初は気軽に遊んでいただければと思います。むしろそういう人にこそやっていただきたいゲームだと思います。