おまけ:MELの便利なコマンド「angle」
今回、数学の「グラフィカルな部分」の紹介ということで、回転角度の算出を三角関数と内積を使って計算しました。しかし、実は「angle」という便利なコマンドがMELにはあります。
float $rotateAngle = rad_to_deg(angle($defaultAimVector,$aimVector));
回転角度の取得は、この1行で計算が可能でした。
細かく見ていくと......
angle($defaultAimVector,$aimVector)
この部分で、すでに回転角度が算出できています。ただし、返ってくるのが「度」単位ではなく「ラジアン」なので、rad_to_degコマンドを通して「度」単位に変換させています。このように、MELには数学の演算コマンドが豊富に用意されているのです。
Maya公式ヘルプページからMELコマンドリファレンスを確認できますが、「数学」カテゴリのコマンド群にぜひ一度目を通すことをオススメします。
意外と新しい発見があるかもしれませんよ!
いかがでしょうか! これまで「数学」と聞くと、小難しい数式や意味不明なグラフを思い浮かべることが多かったのではないでしょうか。しかし、このように数値や数式の意味を別の側面で考えてみることで、意外にもグラフィカルな側面が強く見えてきたかと思います。
特に、ベクトルは「向き」と「長さ」をもつという特性から、その演算自体がグラフィカルな発想だなと思います。「数式」をイメージして問題を解くというより、「立体イメージを固めて解決していく」というアプローチに近いと私は感じています。
数学に対してグラフィックの側面からアプローチしてみると、「内積」、「外積」、「三関数」は小難しい数式や公式というイメージというよりも、パズルを解くためのピースを探し出してはめていく「便利ツール」のように見ることができるかもしれません。そう考えてみると「小難しい数学」のハードルが下がり、グラフィックアーティストでも触れそうな気がして来たりして......。
え? そうでもない? あぁ......そう、ですか......。
さて次回は話題を変えて、Photoshopに関するToolサポートのお話です。スタジオ COYOTE 3DCG STUDIO内で提供したPhotoshop用エクステンションToolの事例を基に、様々なTipsを紹介できればと思っております。
ではまた次回、
サヨナラ! サヨナラ! サヨナラ!!
Profile.
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山本智人/Tomohito Yamamoto(COYOTE 3DCG STUDIO)
ゲーム開発会社にてグラフィックアーティストとして、モデリング・モーション・エフェクト・UIなどオールラウンドのグラフィック制作を経験後、テクニカルアーティストに転身。現在は株式会社クリーク・アンド・リバー社 COYOTE 3DCG STUDIOにて、社内外問わずアーティストのDCCツールサポートや制作パイプラインの提案・作成・運用を行う。特にアニメーション制御やモーション制作周りのテクニカルサポート・リガーとして様々なプロジェクトに従事