デジタルハリウッド大学を今年3月に卒業した金森 慧氏が卒業制作として制作したフルCGアニメーション作品『Origami』が、米国アカデミーが主催する「第51回学生アカデミー賞」(the 51st Student Academy Awards® competition)のアニメーション部門において、銀賞を受賞した。本イベントは10月14日(月)(※現地時間)にロンドンで開催された。本アワードにおいて、日本の作品が受賞するのは初となる。
8月15日(木)にアカデミーの公式サイトでファイナリストの各部門7作品が最終審査に進むことが発表され、9月17日(火)に同サイト上で金・銀・銅、いずれかを受賞する各部門の3作品が発表となった。
上記発表の時点で日本の教育機関としてデジタルハリウッド大学が初受賞することが史上初の快挙であることが判明。(※)
そして、10月14日(月)ロンドンで開催された授賞式において、見事『Origami』が銀賞を獲得した。また、受賞作品はすべて第97回アカデミー賞の短編映画部門の選考対象となる。
『Origami』作品紹介
まるで大地から生命が息吹くように、正方形の紙がさまざまな折紙の生き物に折られていく様子を描くフルCGアニメーション作品。
折紙は「切る」という破壊的な工程がなく、「折る」という「変形」だけを使って表現する。正方形からあらゆる形状に変形し、広げれば元の正方形に戻るという折紙の特徴を、土から生まれ土に還る「生命」と重ねている。
金森氏は小学1年で折紙を始め、高校の時に折紙とCGの数学的な造形感覚の共通性に惹かれたことがきっかけで、CGと映像の道に進むことを決め、デジタルハリウッド大学に入学した。この作品は大学の卒業制作で、自身の創作活動の原点とも言える折紙をテーマに選び、2023年5月から技術的な検証を始め、10月から本格的な制作に入った。
これまでのアニメーション作品における折紙の表現は技術的に困難とされ、実際に紙では作れない形状を使用したり、折る前と後の形状をすり替えて折っているかのように見せたり、誤魔化して描写されることがほとんどだった。本作品では、金森自身の折紙の知識を生かし、CGソフトで折紙をするためのワークフローを自ら考案。紙の厚みや内側の構造に至るまで忠実に再現することを実現した。作品に映るものすべてが実際の正方形の紙から折ることができ、金森がオリジナルでデザインしたメインキャラクターに加え、鶴や蛙などの日本の伝承折紙が数多く登場する。
本物の日本の折紙文化の表現にこだわった本作は、2023年度のデジタルハリウッドの卒業制作の最優秀賞に選ばれ、アジア最大級の国際短編映画祭Short Shorts Film Festival & Asia 2024や20th Annual HollyShorts Film Festivalなどのアカデミー賞公認国際短編映画祭で上映された。世界最大のCGの祭典として知られるSIGGRAPHのElectronic Theater 2024にも日本の学生作品として16年ぶりに入選するなど、国際的な評価を得ている。
金森 慧氏 受賞コメント
「折紙」という日本文化をテーマにした作品が、世界のアカデミーの舞台で評価いただけたことを大変嬉しく思います。折紙は私の創作活動の原点であり、この作品はこれまでの集大成のようなものでした。これまでの学生生活を支えてくださった家族や友人、自由学園の皆様、デジタルハリウッドの皆様、応援してくださったすべての方に心より御礼申し上げます。この受賞が、日々作品制作に励む学生たちにとって少しでも勇気となれば嬉しいです。
作者紹介
金森 慧氏(Kei Kanamori)
CGアーティスト
デジタルハリウッド大学(2024年3月卒業)
<SNS>
・X:x.com/kei_kanamori
・Instagram:www.instagram.com/keikanamori_
・YouTube: www.youtube.com/@kei_kanamori
2001年11月生まれ、東京・東久留米市出身。自由学園高等科、デジタルハリウッド大学卒業。
小学校から高校まで自由学園の自然豊かな環境で学ぶ。小学1年から折り紙を趣味として始め、中学校から学校活動の一環として書道に取り組む。幼少期から洋画に親しみ、映画のCG制作に興味を抱く。折り紙とCGの数学的な造形感覚に共通点を見出し、高校2年の頃に独学でCGを始め、その後デジタルハリウッド大学に進学。在学中に制作したCG作品が、SNSや国内外のコンテストで高く評価された。
VFXショート動画「後方2回宙返り1回ひねり」はInstagramで150万回再生、「Unstable Jenga」はTwitterで900万回再生を記録。チーム制作のショートフィルム「Tomatoes」では監督を務め、第29回学生CGコンテストで優秀賞を受賞。アジア最大級の国際短編映画祭Short Shorts Film Festival & Asia 2024(以下SSFF)やSIGGRAPH Asia 2024 Computer Animation Festivalに入選した。書道をテーマにした映像作品「舞」は、世界的CGコンテストRookie Awards 2023で優秀賞を受賞し、海外の日本人アーティストたちが審査員を務めるCGコンテスト「三次元無双」では、「舞」と「Tomatoes」が映像部門で1位と3位を獲得した。
卒業制作では自身の原点に立ち返り、折り紙と自然をテーマにしたショートフィルム「Origami」を制作。デジタルハリウッドの卒業制作の最優秀賞に選ばれ、SSFFや20th Annual HollyShorts Film Festivalなどのアカデミー賞公認の国際短編映画祭で上映。世界最大のCGの祭典SIGGRAPH Electronic Theater 2024では日本の学生作品として16年ぶりに入選し、直近では第51回学生アカデミー賞を受賞、日本の作品が受賞するのは今回が初となる。
卒業後は海外での活躍を目指し渡航準備を進めつつ、Rock In Japan Fes 2024のタイトル映像を担当するなど、国内でフリーのCG映像作家としても活動している。
学生アカデミー賞について(Student Academy Awards® competition)
Student Academy Awards学生アカデミー賞は、米国アカデミー(映画芸術科学アカデミー)が主催する学生版のオスカーで、1972年の設立以来、新進気鋭のグローバルな才能に活躍の場を提供することを目的としている。
過去の受賞者にはロバート・ゼメキス(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)、ピート・ドクター(『モンスターズ・インク』、『インサイド・ヘッド』)、スパイク・リー(『ブラック・クランズマン』)などの錚々たる監督たちが名を連ねる。
51回目となる今年は、世界738の学校から過去最多の2,683作品が応募され、ナラティブ、ドキュメンタリー、エクスペリメンタル、アニメーションの4部門で計12作品が受賞作品としてアカデミー会員の審査によって選ばれた。
例年はあらかじめ公表されるが、今年は各部門の金、銀、銅賞が授賞式の場で発表。受賞作品はすべて、第97回アカデミー賞の短編映画部門の選考対象となる。過去の学生アカデミー賞の受賞は、67回のアカデミー賞ノミネート、15回の受賞へと繋がっている。
授賞式は、創設以来カリフォルニアにあるアカデミーのSamuel Goldwyn Theaterで開催されてきたが、アカデミーが世界の映画コミュニティのリーダーとしてよりグローバルになる中、今年はロレックスとの提携によりロンドンのODEON Luxe Leicester Squareで10月14日19時(BST)より開催。また、ロンドンで開催されるBFIロンドン映画祭とのパートナーシップにより、受賞者は業界とのつながりを広げる機会を得ることができる。
三次元無双で注目!Kei Kanamori氏に聞く、書道と流体シミュレーションを融合した「舞」の制作プロセス
6月30日にHigaCGチャンネルでおなじみ、CGモデラーの前東勇次氏より発表された、若手CGアーティスト向けの3DCGコンテスト「三次元無双」。同コンテストの応募作品の中でひときわ注目を集めたのが、Kei Kanamori氏が制作したCGムービー作品「舞」だ。本作品について金森 慧氏にインタビューした記事。
https://cgworld.jp/flashnews/kei-kanamori-2310.html