>   >  ゼロから特訓!ビジュアルデベロップメント:No.19:自然光を使い分け、ライティングをデザインする
No.19:自然光を使い分け、ライティングをデザインする

No.19:自然光を使い分け、ライティングをデザインする

Lesson40:異なる自然光を描き分ける

異なる自然光を描き分け、そのシーンで伝えたい感情に合わせて適切なライティングデザインを選択できるようになってください。まずは場所を設定し、その場所の天気の良い日の朝、昼、夕方のライテイングをデザインしてみましょう。

▲浜辺に座る男性を、まずはラインだけで描きました


▲前述のラインに、朝の光に照らされた明るいライティングを施しました。男性の正面から光が当たっており、明暗のコントラストは高くありません。 朝の光が入ることでシーンが明るくなり、ポジティブな印象になります。また1日の始まりを連想させるため、そのようなストーリーライン(ストーリーのながれ)と組み合わせて使うと効果的です


▲前述のラインに、ほぼ真上からの真昼の光に照らされた明るいライティングを施しました。キャストシャドウは短く、明暗のコントラストは高いです。魅力的なライティングではないため、目的を明確にした上で使いましょう。また、天気のいい真昼の太陽光は、朝や夕方の太陽光よりも強いことを念頭に入れておきましょう


▲前述のラインに、男性の後ろから光(夕日)を当てました。全体的に暗めですが、光が当たるところは輝くように描きます。キャストシャドウは長く、明暗のコントラストは高いです。このようなライティングは、ロマンティックなストーリーで多く使われます

Lesson41:曇りの日のライティングを描く

続いて、曇りの日のライティングも描いてみましょう。曇りの日は強い光がないため、ぼんやりとした影になり、光と影のコントラスは低くなります。そのためローカルバリューを使って画面をデザインします。

▲前述のラインに、曇りの日のライティングを施しました。物事がかんばしくないことを「曇り」によって暗示する目的で使う場合もありますが、デザイン性の高い画面になるため、ほかの目的で使うこともあります

名画のショットを通して、曇りの日のライティングを学ぶ

以降では、曇りの日のライティングを効果的に使っている名画のショットを紹介します。

▲『The Conformist(邦題:暗殺の森)』(1970)(ベルナルド・ベルトルッチ(Bernardo Bertolucci)監督)の中のショットを筆者が引用目的で模写したものです。キャストシャドウのない白色の壁とは対照的に、右下の人物は暗い色で表現されており、デザイン性の高い画面になっています


▲ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ制作の『Zootopia(邦題:ズートピア)』(2016)の中のショットを筆者が引用目的で模写したものです。問題に直面し、キャラクターたちが輪になって会議をしています。ここでもキャストシャドウのない曇りの日のライティングが施されており、フラットな画面になっています




今回のレッスンは以上です。第20回も、ぜひお付き合いください。
(第20回の公開は、2018年9月を予定しております)

プロフィール

  • 伊藤頼子
    ビジュアルデベロップメントアーティスト

    三重県出身。短大の英文科を卒業後、サンフランシスコのAcademy of Art Universityに留学し、イラストレーションを専攻。卒業後は子供向け絵本のイラストレーション制作に携わる。ゲーム会社でのBackground Designer/Painterを経て、1997年からDreamWorks AnimationにてEnvironmental Design(環境デザイン)やBackground Paint(背景画)を担当。2002年以降はVisual Development Artistに転向し、『Madagascar』(2005)でAnnie Award(アニー賞)にノミネートされる。2013年以降はフリーランスとなり、映画やゲームをはじめ、様々な分野の映像制作に携わる。2013年からはAcademy of Art UniversityのVisual Development Departmentにて後進の育成にも従事。2017年以降は拠点をロサンゼルスに移し、現在はアートディレクター・ビジュアルデベロップメントアーティストとしてアニメーション長編映画を制作中。
    www.yorikoito.com
    www.artstation.com/yorikoito

本連載のバックナンバー

第1回∼第13回まではこちらで総覧いただけます。
No.14:画の中のスケールとディテール
No.15:ダイナミックな動きのある画を描く
No.16:イメージづくりに使うレイアウトコンポジション
No.17:ライティングデザイン
No.18:ライティングデザインによる感情表現

その他の連載