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No.19:自然光を使い分け、ライティングをデザインする

No.19:自然光を使い分け、ライティングをデザインする

こんにちは。ビジュアルデベロップメントアーティスト(Visual Development Artist)の伊藤頼子です。第18回ではキアロスクーロやキャストシャドウを使ったライティングデザインについて解説しました。今回は天気や時間帯による自然光のちがいと、その使い分けによって場面やそこに登場する人物の感情を表す(ストーリーテリングをする)方法を学びましょう。

TEXT&ARTWORK_伊藤頼子 / Yoriko Ito
EDIT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

異なる自然光の写真を撮影する

直射日光が当たった場合と、曇天の光が当たった場合の陰影のちがいについては連載 第2回で解説しました。今回はさらに掘り下げて、天気による自然光のちがいを解説します。また、朝、昼、夕方など、時間帯によるちがいにも言及します。

天気や時間帯による自然光のちがいを学ぶため、まずは実際の現象を観察し、写真を撮影してみましょう。明暗のコントラストが理解しやすいように、今回はあえて白黒写真を使って解説します。なお、以降で紹介する写真はロサンゼルスのバーバンクにて8月に撮影しました。この地の8月は昼の日差しが強く乾燥した気候です。土地の風土や気候によって明暗の度合いは多少変わります。

▲朝の風景写真です。空気中に含まれた水分によって朝もやができ、遠くの山には投影(キャストシャドウ/Cast Shadow)(※1)が生じているものの、その風景はぼやけています(※2)。光は柔らかく、ハイライト・中間調・シャドウが全体的にバランスよく分散しているため、光の当たっている部分とキャストシャドウとのコントラストは高くありません

※1 光に照らされた物体によって生じる、別の物体の上に落ちる影のことをキャストシャドウと呼びます。詳しくは連載 第2回をご覧ください。

※2 視点から対象までの距離が開くほど(視点と対象との間にある空気の量が増えるほど)、対象の明暗のコントラストが低くなり、ぼやけて(霞んで)見えるようになります。特に空気が湿気を含んでいる場合に、この現象は顕著になります。この現象を模倣した遠近法が空気遠近法です。


▲前述の風景を昼に撮影しました。光の当たっている部分とキャストシャドウとのコントラストが高いものの、山にはキャストシャドウがほとんど生じておらず、全体的に明るく中間調が少ないためフラットな印象の画面になっています


▲前述の風景を夕方に撮影しました。山には長いキャストシャドウができ、遠くの光は空気の影響を受けて柔らかくなります。全体的に影の部分が多くなり、明暗のコントラストは近くが高い一方で、遠くは低くなっています


▲別の風景を朝に撮影しました。建物の向かって左方向から柔らかい光が当たっています


▲前述の風景を昼に撮影しました。明暗のコントラストが高く、短いキャストシャドウが生じています


▲前述の風景を夕方に撮影しました。建物が影の中に入っているため、ローカルバリュー(物体自体がもつ明暗)のみで陰影が構成されています


以上のように、自然光は天気や時間帯によって光の状態が異なります。映画などのビジュアルデベロップメントでは、それを言葉で説明することなく、ビジュアルだけで見る人に伝えなくてはいけません。例えば直射日光が当たれば、濃いキャストシャドウができます。画面のデザインをよく考え、どこに影ができるか(影をつくるか)を整理しましょう。そして、日頃から光と影を観察することを心がけるといいでしょう。

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